サックス・バトル



あれよあれよと日が過ぎて三月もまもなく終わり。そういえば…ふと気付いたら、今月はまだジャズの盤を記事にしていなかった。折から年度末業務も完了して気分も少々上向き。今夜はちょっと気合を入れてに鳴らそうかとアンプの灯を入れ、こんな盤を取り出した。


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アルトサックスのキャノンボール・アダレイをフューチャーした「キャノンボール・アダレイ・クインテット・イン・シカゴ」。メンバーはキャノンボール・アダレイ(as)、ジョン・コルトレーン(ts)、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds)。1959年録音。この時期のステレオ録音によくある左右振り分け録音で、左チャンネルにキャノンボール・アダレイ、右チャンネルにコルトレーンとウィントン・ケリーのピアノが配置されている(一部の曲では異なる)。収録曲は以下の通り。

1.ライムハウス・ブルース
2.アラバマに星墜ちて
3.ワバッシュ
4.グランド・セントラル
5.ユーアー・ア・ウィーヴァー・オブ・ドリームス
6.ザ・スリーパー

まずこのジャケットが印象的だ。コミカルでもあり、ファンキーでもあり、ホッとするデザインでもある。かつての日本のジャズ喫茶のような、眉間にシワを寄せて腕組みをして聴き入るような深刻さはイメージしない。メンバーは当時のモダンジャズの最高峰、マイルスデイビスクァルテットのサイドメンにキャノンボール・アダレイが加わる。最高の布陣といっていいだろう。第1曲「ライムハウス・ブルース」に針を落とすと、途端に気分はノリノリのシカゴのジャズクラブに飛んでいく。

テーマをワンコーラス吹いたあと、すぐにバトルの開始だ。左チャンネルからキャノンボール・アダレイが、右チャンネルからジョン・コルトレーンが、それこそ飛び出さんばかりの勢いでサックスのブローを繰り出してくる。アダレイがアップテンポを更に煽るように高速スケールでアドリブラインを吹くと、コルトレーンは例のシーツ・オブ・サウンドそのものの緊張感に満ちた圧倒的な音数のフレーズでこれでもかと迫ってくる。このサックスバトルは最高の聴き物だ。バックを固めるウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンパース(b)、ジミー・コブ(ds)も万全で、正にジャズを聴く醍醐味ここに極まれりの感がある。2曲目の「アラバマに星落ちて」、3曲目の「ワバッシュ」と軽快なスウィングでリラックスしたセッションが続く。


「ライムハウス・ブルース」 双頭サックスのバトル!


「アラバマに星堕ちて」 キャノンボール・アダレイの美しいバラードプレイ。



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バッハBWV1013



三月最後の日曜。先回の記事に書いた通り、パピーとグッドバイし、やや放心状態。夕方になって少し気分を変えようと楽器を取り出し、こんな楽譜を広げた。


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少し前からさらっている曲、バッハの無伴奏フルートのための組曲BWV1013の第1曲「アルマンド」。手元には大昔に買った新バッハ全集によるベーレンライター版(ハンス・ペーター・シュミッツ編)と、十数年前に出た佐々木忠編のギター版の楽譜がある。佐々木編もオリジナルと同じイ短調で、参考にしたのはハンス・ペーター・シュミッツ編とのことで実質同一。ギター版ではお約束通り、フレーズ頭の音が低音弦に移される等の変更が行われている。

ギター弾きにはお馴染みで見慣れたイ短調、耳に入ってくるフレーズもギターが得意とするアルペジオ音形、そんなことから初めてこの曲の楽譜を見たときは、ちょっとさらえば楽々弾けるだろうと思った。しかし実際に楽譜を広げて弾いみると、これが意外に手こずる。多くの器楽作品が作られたバッハのケーテン時代にこの曲も作られたようだが、少なくても第1曲「アルマンド」に関しては、弦楽器か鍵盤楽器のために書かれたのではないかと言われている。実際、この曲をフルートで吹く場合は、まず息継ぎをどこで取るかが大きな課題らしい。確かに楽譜を見る限り音符は隙間なく埋まっていて、フレーズの切れ目を見つけてブレスにするしかないようだ。ギターで弾く場合はもちろんブレスの問題はないので、もっぱら旋律と和声の展開を勘案してフレージングすることになる。先に記したように最初に聴いたときのイメージより実際に弾いてみるとややこしいのは、アルペジオ風に聴こえるフレーズが実際にはそう広くない音域の中で、和音の基音や構成音、旋律やフレーズをまたぐ倚音などが絶えず変化していることが要因のようだ。ギターは音域の広い跳躍は比較的弾きやすいが、狭い音域の中で絶えず動く音形は弾きにくい(…と、下手くそなぼくが感じるというだけのことだが)。

しかしこの曲の魅力は中々で、何とかギターで弾いてみたいと思い、ぼちぼちさらっているというわけだ。ほとんど単音によるスケールで構成されていることから、ギターの音色を生かし、フレーズの始まりと終わりを丁寧に、全体として組曲全体のプレリュードのように弾けたら最高だ。道は遠そうだが頑張って練習しよう!


ギターによるBWV1013アルマンド。以前も貼ったホルヘ・カバレロによる演奏。美しい音色を繰り出す楽器はメトロポリタン美術館所蔵の1940年製ハウザー1世。


アナ・ヴィドヴィッチが組曲全体を弾いている。録音状態がやや残念だ。


アーチリュートによるBWV1013



<参照楽譜>
オリジナルの調性にこだわらないなら、以下のホ短調版も面白い。
ホ短調に移したギター用編曲@IMSLP
https://imslp.simssa.ca/files/imglnks/usimg/2/24/IMSLP261220-PMLP13663-allemande_bwv1013_guitar_alink.pdf


ニ短調に移したヴァイオリン用@IMSLP
http://conquest.imslp.info/files/imglnks/usimg/1/1d/IMSLP390409-PMLP13663-d-moll_-_Violin_-_Violin.pdf


オリジナルのイ短調
https://imslp.eu/files/imglnks/euimg/5/58/IMSLP497729-PMLP13663-bachNBAVI,3partitaa-mollfuerflautotraversosoloBWV1013.pdf



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4頭目の盲導犬パピー



実は昨年から盲導犬育成ボランティアとしてパピーを預かっていた。その盲導犬パピーが今週末に協会へ戻る。生後2ヶ月、体重5キロで我が家にやって来たのが昨年5月。それから10カ月が経ち、27キロの立派な成犬になった。お別れの時だ。

昨年5月、我が家に来たばかりの頃
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盲導犬育成のボランティアを初めて体験したのが2015年。それからあまり間を開けずに続け、今回が4頭目で黒ラブの男の子。このブログには成長記録などほとんど書いていないが、以前からアクセスしてくれている輩の中には、1頭目(イエローラブ・女の子)、2頭目(イエローラブ・男の子)、3頭目(黒ラブ・女の子)の紹介記事がうっすら記憶にあるかもしれない。ぼくは熱心な愛犬家でもないので、日頃の世話はもっぱら妻が担当している。


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生後2ヶ月でやって来て、まずは排泄のトレーニング。盲導犬として好きな時に勝手に排泄することは出来ない。人間の声掛けに促されて排泄するよう習慣付ける。次いで基本的なコマンド(sit,down,wait)の修得。盲導犬としての仕事のほとんどは待つこと。人のコマンドに対応出来るようにする。生後3カ月を過ぎた頃から外散歩。よく見かける散歩のように犬の気ままで右左、そちこちで臭い取りの道草…という散歩はいけない。常に人(リーダー)の左横について歩く。リーダーの歩く止まるに合わせるようにする。もちろん散歩に出る前に排泄は済ませる(排泄をしたら散歩に行ける!と習慣付ける)。そうすれば散歩途中で粗相することはない。食事は決まった時間に決まった量だけ。人間の食事の際、犬に何かを与えてはいけない。人間の食事は自分とは関係ないことと認識させないと、盲導犬としてレストランに入ることも出来なくなるからだ。「うちの子はご飯になると吠えて教えてくれるのよ」と近所の奥様が言っていたが、それは単なる要求吠えだ。盲導犬として仕事をするには要求吠えはあってはいけない。小さいうちは何かと吠えたりクンクン言ったり、一緒に遊んで!ご飯頂戴!と要求するものだが、そうした犬からの吠えや声には、静かにしなさい!といった応答はしない。吠えたら黙って部屋から出て行ってしまうくらいの対応をする。そのうち吠えても無駄と知り吠えなくなる。

…と書くと随分窮屈そうに見えるだろうが、習慣性の強い犬はこうしたことをよく修得する。素人のボランティアであっても初期のトレーニングは十分可能だ。もちろん窮屈な思いばかりをさせているわけではなく、一緒にボール投げで遊ぶこともある。がしかし、過度に興奮させないということは常に念頭におく。これまで経験した4頭とも、生後半年までにほぼこうした習慣付けが出来上がり、一緒に食事に入ってもいたずらに騒ぐようなことはなかった。もっとも犬種としてラブラドールレトリバーの特性も大いにあるだろう。また、こうした習慣付けは、愛玩用として犬と暮らす場合にも有効だと思う。

近影
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そんなこんなで過ごした4頭目黒ラブF君との10カ月も終わる。コロナ禍もあってあまりあちこちへ連れていけなった(ごめんね)。これから協会に戻って訓練が始まる。常に人の気配があったこれまでの環境から、協会での犬舎暮らしは寂しいだろうけど、どうか程々に頑張って! いずれどこかで君が生き生きと仕事をしている姿を思い浮かべながら…グッドバイ!


■盲導犬に出会ったら…愛ある無視を!■
・声をかけたり、じっと前から見たり、口笛をならしたりしない。
・食べ物を見せたり、あげたりしない。
・盲導犬をなでたり、ハーネスを触ったりしない。
・自分のペットと挨拶させようと近づけたりしない。

■犬の十戒■
<1>私の一生はだいたい10年から15年です。あなたと離れるのが一番つらいことです。どうか、私と暮らす前にそのことを覚えておいて欲しいのです。
<2>あなたが私に何を求めているのか、私がそれを理解するまで待って欲しいのです。
<3>私を信頼して欲しい、それが私にとってあなたと共に生活できる幸せなのですから。
<4>私を長い間叱ったり、罰として閉じ込めたりしないで下さい。あなたには他にやる事があって、楽しみがあって、友達もいるかもしれない。でも、私にはあなたしかいないのです。
<5>時々話しかけて欲しい。言葉は分からなくても、あなたの声は十分私に届いています。
<6>あなたがどのように私を扱ったか、私はそれを決して忘れません。
<7>私を殴ったり、いじめたりする前に覚えておいて欲しいのです。私は鋭い歯であなたを傷つけることができるにもかかわらず、あなたを傷つけないと決めているのです。
<8>私が言うことを聞かないだとか、頑固だとか、怠けているからといって叱る前に、私が何かで苦しんでいないか気づいて下さい。もしかしたら、食事に問題があるかもしれないし、長い間日に照らされているかもしれない。それとも、もう体が老いて、弱ってきているのかもしれません。
<9>私が年を取っても、私の世話はして下さい。あなたもまた同じように年を取るのですから。
<10>最後のその時まで一緒に側にいて欲しいのです。このようなことは言わないで下さい、「もう見てはいられない。」、「居た堪れない。」などと。あなたが側にいてくれるから最後の日も安らかに逝けるのですから。忘れないで下さい、私は生涯あなたを一番愛しているのです。


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カラヤン&VPO ブラームス交響曲第1番ハ短調



先日来の事のついでと言ってはナンだが、カラヤン&VPOのデッカ録音を聴く。今夜取り出したのはこの盤だ。


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カラヤン&ウィーンフィルによるブラームス交響曲第1番ハ短調。1959年録音。手持ちの盤は先日来の盤同様、70年代半ばにキングから出ていた廉価盤。こちらは知人がもう聴かないからと譲ってくれた数十枚のLP盤の中に混じっていた。このカラヤン廉価盤シリーズが最初に出たのは1973年秋の来日に合せたタイミングだったが、折から日本国内は第一次オイルショックの真っ最中。ぼくら世代のおかん達はトイレットペーパー確保に奔走したあの時代だ。物価高騰とインフレも過去にないもので、この時期まで1000円盤と称していた廉価盤も1200円、1300円と値上がり。このカラヤン&VPOのシリーズもジャケット裏に1973年とあるのものは1000円、1977年とあるものは1300円と、時代を反映している。

演奏は先日来聴いている一連のデッカ録音同様、ウィーンフィルの美感がよく出た演奏だ。しかし惑星やウィンナワルツ集と比べると、さすがにドイツ保守本流のブラームス。カラヤンのコントロールが効き、ウィーンフィルも整然として、他の録音でみられた荒削りぶりはやや影をひそめている。テンポはやや遅めで、変化も控え目。全体に無理に大声を立てたり、力づくなところがなく、弦楽器群を中心に美しく歌わせている。特に第2楽章はそうしたスタイルがよくマッチしてことの他美しい。最後のヴァイオリンソロはボスコフスキーが弾いている。
全体として熱っぽさよりは余裕の美音による悠然としたスケール感が印象的な演奏だ。デッカ録音の性格で中高音にややキラキラ感があるのだが、ことブラームスに限っては独グラモフォンの低重心で渋めの音色が似合うかもしれない。


この盤の音源。全4楽章。


この録音と同じ年、カラヤンとウィーンフィルが来日。ブラームスの1番も取り上げた。ミレニアムブームにわいた2000年、NHK教育TVで故・黒田恭一氏がナビゲーターをつとめ「20世紀の名演奏」と称した番組がシリーズで放送され大きな話題となった。カラヤン&VPO来日の演奏もNHKのライブラリーに残されていて、映像とのシンクロ編集を施して放映された。映像はモノクロだが第1番に関しては音は立派なステレオ録音だった。以下はその音源。


同 第4楽章後半の指揮姿


運命のリハーサルに始まり、夫人とのひとこま、ブラームス第1、第4、未完成など。



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群馬交響楽団第566定期演奏会



先週末土曜日は、ほぼ一年ぶりに群馬交響楽団(群響:グンキョウ)の演奏会へ足を運んだ。


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一昨年2019年秋に新しい本拠地となったホールが完成。いよいよ2020年度は新ホールでの演奏が本格化するのを楽しみにしていたのだが、その矢先のコロナ禍。多くの音楽団体同様、群馬交響楽団も活動休止が続くことになった。創立75周年を記念しての海外演奏旅行の予定も頓挫。どうなるものかと案じていたが、昨年秋から変則的ながら定期演奏会を再開。今年になってようやく正常化してきた。今回は2020年度シーズン最後の定期として以下のプログラムで開催された。

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シューマン/《マンフレッド》序曲 作品115(マーラー編曲版)
マーラー/交響曲第6番イ短調「悲劇的」
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大井剛史指揮・群馬交響楽団
2021年3月20日(土)18:45~ 高崎芸術劇場
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大曲マーラーの第6交響曲をメインに据えたシーズン最後を飾るに相応しいプログラム。マーラーの前にシューマンのマンフレッド序曲、それもマーラー編曲版の日本初演という中々凝った演出で思わずニヤリとする。指揮者の大井剛史氏の指揮に接するのは今回が初めて。2014年から東京佼成ウインドオーケストラの正指揮者を務めるほか、幅広いジャンルで活躍している由。保守本流とも言うべき独墺ロマン派系譜の名曲をどう料理するのか楽しみにしながら会場に向かった。

万全のコロナ感染対策が施された会場運営のもと観客数制限も無くなり、会場はほぼ9割の入り。相変わらず地元ファンに根強く支えられていることを実感する。例によって音楽評論家:渡辺和彦氏のプレトークがあったのち、定刻18時45分に団員が登場。客電も落ちてチューニングが始まった。

「マンフレッド序曲」はシューマンの交響曲以外の管弦楽曲の中ではもっともポピュラーな曲。手持ちの盤でもまたコンサートでも何度か聴いていて馴染みのある曲だ。そしてそのマーラー編曲版や如何に。プレトークでの案内を聞いて心の準備をしておいたが、冒頭のシンバルの一撃にやはり驚いた。マーラーは後期ロマン派視点からいくつかの改編を試みたのだろうが、冒頭にシャーンというシンバルを入れる必要性がどんな考えから出てくるのか、ぼくのような現代の凡人には分からない。その後はこれといった違和感はなく曲が進む。大井氏の解釈は中々ドラマティック。速めのテンポながら大きなディナーミクのうねりが盛り込まれ、音楽は非常にダイナミックに動く。対向配置の弦楽群の呼応するパッセージも明確な対比がつけられ音楽が意欲的に前に進み、素晴らしい効果を上げていた。

休憩をはさんでメインプログラムのマーラー第6交響曲。群響はこの曲を2003年に高関健氏と、また2014年には沼尻竜典氏とそれぞれ演奏している。ぼくは2003年のとき聴いた記憶がある。地方オケでマーラーが取り上げられることは今や珍しくないが、第6番がこれ程の頻度で聴けるのは中々貴重かもしれない。
80分を超える大曲第6番。ここでも大井氏の指揮ぶりは一貫している。長丁場のこの曲に仕組まれた音楽的要素を細大漏らさずピックアップし、速めのテンポの中にそれを埋め込んでいく。全身のアクション、各パートへの指示…一瞬たりとも緊張が途切れることなく、聴いているこちら側も楽章の合間にふーっと大きく息を付きたくなるほどだ。この曲で問題となる第2楽章と第3楽章の扱いは第2楽章アンダンテ、第3楽章スケルツォとし、近年の標準とも言える順番。拍子こそ違うもののスケルツォが第1楽章冒頭と似た音響で始まることもあって、この順序の方が落ち着いて聴けるように思う。 実は新しい群響の本拠地であるホールが出来てから過去2回は3階席で聴いたのだが、他の席の音響も確認したいと思い、この日は1階中央やや右寄りの席を取った。3階席でも同様だったが、耳元に届く音響は総じて良好。もう少し残響があっていいかなと感じるが、過多になって細部が曖昧になるよりはいいのではないかと思う。そんなホールの音響も手伝って、大井氏の指示する各パートの出入り、主役・脇役の描き分けなどが明快に聴く側に伝わってくる。時々ベルアップして熱演する管楽器群、八面六臂の打楽器群の活躍、終楽章終盤でのハンマー打撃も決まり、大団円の幕となった。

シーズン大トリを飾る大曲、大井氏の意を尽くした解釈、そして群響の熱演に大満足。コロナ禍の今後の影響未だ不透明ながら、来月からの2021年シーズンを楽しみに待ちたいと思いつつ、一年ぶりの演奏会の余韻が感じながら会場をあとにした。


アバド&ルツェルン祝祭管による2006年のライヴ。ルツェルン祝祭管はザビーネ・マイヤー(CL)、ナターリヤ・グートマン(Vc)他豪華メンバー。第4楽章、例のハンマー一撃は1時間5分50秒過ぎと1時間10分30秒過ぎ。中間楽章は2003年にマーラー協会が宣言した通り、第2楽章アンダンテ、第3楽章スケルツォの順。



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カラヤン&VPO「ウィンナワルツ集」



先日来聴き出したカラヤン&ウィーンフィルのデッカ録音から、きょうはこの組み合わせならではの一枚を取り出した。


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カラヤン&ウィーンフィルによるウィンナワルツ集中。50年代終わりから60年代初頭の英デッカ録音中の一枚。手持ちの盤は先日の「惑星」同様、70年代中庸にキングから出ていた廉価盤シリーズのもの。リサイクルショップのジャンク箱にて100円で捕獲したものながら、盤質きわめて良好の拾い物。収録曲は以下の通り。

A面
・J.シュトラウス2世:喜歌劇『こうもり』序曲
・ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『うわごと』
・J.シュトラウス2世:『アンネン・ポルカ』
B面
・J.シュトラウス2世:喜歌劇『ジプシー男爵』より序曲
・J.シュトラウス2世:『狩のポルカ』
・J.シュトラウス2世:『ウィーンの森の物語』

ウィーンフィルの「惑星」というと、少なくても60年代初頭には意外性MAXの選曲だったろうが、ウィンナワルツ集となれば、これはもう直球ど真ん中のストライクとでもいうべき盤だ。そしてその期待通り演奏も素晴らしい。今ほどグローバルになっていない時代、ウィーンフィルには(ベルリンフィルも)まだ女性団員は皆無、コンサートマスターはボスコフスキー…つまりはひと昔、ふた昔前のウィーンフィルの音色と歌い口が楽しめる一枚だ。

ここでもカラヤンは手兵ベルリンフィルとの録音と異なり、ウィーンフィルの自主的な演奏スタイルや音色感に多くを任せている感があり、ほとんどスタジオライヴを思わせるノリの良さがある。といっても、それは同じ60年代のボスコフスキー盤などで聴けるウィーン訛り、ローカルな味わいではない。音楽の枠組みはずっとシンフォニックで華麗な響きに満ちているし、例えば「こうもり序曲」のコーダのように圧倒的なスピード感でモダンなスタイルを感じさせる箇所も多い。そしてこの盤も当時のデッカ録音の優秀さが光る。艶やかかに歌いぬくヴァイオリン群、コントラバスの深い響き、やや遠めながらチャーミングな木管群の音色(特にオーボエ!)など、ジャンクボックスから拾ってきた半世紀前の廉価盤であることを忘れる。


この盤の音源。・J.シュトラウス2世喜歌劇「こうもり」序曲


同 J.シュトラウス2世「ウィーンの森の物語」



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カラヤン&VPOの「惑星」



先回の記事に英デッカ録音のカラヤン&VPO盤を聴いたことで思い出し、今夜はしばらく聴いていなかったこの盤を取り出した。


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お馴染み、グスターヴ・ホルスト作曲の組曲「惑星」。カラヤン指揮ウィーンフィルによる1961年録音。この時期に英デッカに録音されたカラヤン&ウィーンフィルによる一連の録音中の一枚。手持ちの盤はぼくら世代にはお馴染み、1973年のカラヤン&ベルリンフィル来日に合せてキングから発売された廉価盤シリーズのもの。このときの来日公演が行われた1973年秋、ぼくは浪人生という身分で指をくわえてそのニュースを聞いていた記憶がある。

このカラヤン&ウィーンフィル盤以前から、ストコフスキー盤、サージェント盤、ボールト盤など、「惑星」の録音はあるにはあった。しかし、この曲の持つゴージャスなオーケストレーションや曲想のポピュラリティーを広く知らしめたのは、間違いなくこの盤が最初だった。ウィーンフィルの輝かしい音色、金管群の咆哮と炸裂する打楽器群、そしてそれらを見事にとらえた英デッカの録音…そうした要素が集合してこの名盤は生まれた。

60年代初頭のカラヤン&ウィーンフィルによる録音は、いずれも同時期のベルリンフィルとの独グラモフォン録音とはまったく異なるトーンバランスだ。カラヤンの特質としてよく言われる、華麗なオーケストラサウンドという言葉は、手兵ベルリンフィルよりもウィーンフィルとのデッカ録音の方がより相応しく感じる。この盤の演奏でも、艶やかな弦楽群、輝かしい金管群、思い切りのいい打楽器群等、半世紀以上前の録音であることが信じられないほどリアルだ。加えて、ベルリンフィルでは自らのコントロール化におき、録音セッションでもテイクを重ねて完璧を期そうとするカラヤンが、このウィーンフィルとの録音では、ほとんどワンテイクではないかと思わせるような流れの良さと勢いを感じる。ところどころアンサンブルや音程のの乱れ、楽譜上のミステイク等あるのは事実だが、そうした些細なことに拘泥せずにライヴを繰り広げる趣きがある。

冒頭の<火星>での力感あふれる推進力、<木星>での演出の巧みさなどは言うまでもないが、<金星>や<海王星>での官能的な美しさも比類がない。神秘的な<土星>ではコントラバスの深い低音が見事に音楽を支える。英デッカの録音は中高音域のメリハリばかりでないことの証左だ。<天王星>での分厚い金管群とダイナミックな打楽器群も圧巻。70年代以降、メータ、ショルティ、バーンスタン、プレヴィンらが競うようにこの曲をリリース、さらに冨田勲のシンセサイザー版、近年の木星歌唱版まで含めても、このカラヤン&ウィーンフィル盤の価値はいささかも変わらない。


この盤の音源。


同曲のベルリンフィルとの演奏。1981年録音 独グラモフォン
ウィーンフィルとの英デッカ盤とはトーンバランスがまったく異なる。


2015年のPROMSでのライヴ。フィンランド生まれのスザンナ・マルッキ指揮BBC交響楽団。



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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