シャルパンティエ「イタリアの風景」
ここ数日、当地関東地方では雨まじりの日が続く。まだ梅雨入りの発表がないのは、いくつか条件を満たさないからだろうか。温暖化が早い梅雨入りの原因ともされるが、だとするとそもそも「平年」という統計基準が現実に合わなくなるほど近年の温暖化スピードが速いということだろう。まあ天に逆らっても仕方ない。…というわけで、今夜は梅雨空とはもっとも縁遠そうな曲をと思い、こんな盤を取り出した。

ピエール・デルヴォー(仏1917-1992)とパリのオペラ・コミック国立歌劇場管弦楽団によるフランス物管弦楽曲集。シャルパンティエの組曲「イタリアの印象」とマスネ「絵のような風景(組曲第4番)」の2曲が収められている。1963~64年録音。
クラシックを聴き始めて半世紀。手持ちの盤も三千から四千枚ほどになるが、実のところフランス音楽にはほとんど馴染みがない。開国以来の日本クラシック音楽の系譜に従っているのかどうか自分では分からないが、やはり独墺系ばかり聴いてきた。この盤も十数年前の出張時に例によって大阪梅田の中古レコード店でみつけ、たまにはフランス物も聴かんとアカンなあと思ってピックアップしたものだ。
ギュスターヴ・シャルパンティエ(1860-1956)の組曲「イタリアの印象」はもともと交響詩「ナポリ」という曲を書き、サン・サーンスに絶賛されて気をよくし、その交響詩「ナポリ」を終曲に据えた組曲を書いたとのこと。今では彼の代表作の一つだ。構成は以下の通り。
第1曲 セレナード/第2曲 泉のほとりで/第3曲 ロバに乗って
第4曲 山の頂きにて/第5曲 ナポリ
第1曲「セレナーデ」冒頭、チェロパートが68小節に渡り延々と美しい旋律を歌う。これは中々印象的で、窓辺で恋人に恋心を切々と歌う男の歌そのものだ。第3曲「ロバにのって」でも曲半ばで印象的なチェロの旋律が光る。イタリアの風景という題名からするともっとにぎやかで陽気な曲想をイメージするが、総じて穏やかで抑制が効いていて美しい。
ジュール・マスネ(1842-1912)の組曲「絵のような風景」も同様に、描写的であるもののすべてが中庸で、題名の通り静かに絵に描かれたような風景を遠めで見ている感がある。どの曲も美しい旋律にあふれ、終曲「ジプシーの祭」では華やかに歌い踊るが、土俗的な印象はなく洗練されている。フランス音楽あるいはフランス演奏家の資質は、ラテン民族の感性がベースにありながら、明らかにイタリヤやスペインとは異なることを実感する。
この盤の音源でシャルパンティエの組曲「イタリアの風景」。チェロパートのみによる68小節の長い旋律で始まる。全5曲が3つの分割されたプレイリストになっていて順次再生される。
マスネの組曲第4番「絵のような印象」 スコア付き音源
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