群馬交響楽団第568回定期演奏会
きのう土曜日、朝から鬱々として曇天。指の調子が良かったので昼前はギターの練習をひとしきり。さて午後は…と時計を眺めてふと思い出し、隣り町で予定されている群馬交響楽団(群響:グンキョウ)の演奏会へ足を運ぶ。

コロナ禍の影響もあったのか、この4月から定期演奏会の開演時間が以前の19時から16時に変更になった。16時開演だと終演が18時頃。コンサートのあと、余韻を楽しみながらお茶や食事をというには、終演が21時をまわる19時開演よりは好都合だ。地方都市では夜9時過ぎに食事をしようとすると場所が限られる。きのうは当日券を求めて15時過ぎに会場へ。会場は一昨年秋に落成した群響の新しいホーム:高崎芸術劇場。これまで数回足を運んだが、土地価格が安い地方都市のメリットで施設内も余裕ある作りだし、ホールの音響も十分及第点だと感じる。惜しむらくはクラシック音楽専用ではないことからオルガンが無いことだが、まあ仕方ないと諦めた。
さて、当日のプログラムは以下の通り。先回聴いた3月に続きマーラーの交響曲、そして新進気鋭のピアニスト三原未沙子を迎えてのベートーヴェン。バランス良く、かつ聴きごたえのあるプログラム。
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ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番ハ長調
-休憩-
マーラー/交響曲第5番嬰ハ短調
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三原未沙子(P)
飯森範親指揮・群馬交響楽団
2021年5月23日(日)16:00~ 高崎芸術劇場
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コロナ禍の第4波も未だ終息には遠い状況で、観客の入りはどうだろうかと思いつつホールに入ると、驚いたことに満席に近い入り。しっかりした感染対策も取られ不安なく席につく。この時期、開演前のややひんやりとした独自の空気感はホールコンサートの楽しみの一つだ。
16時ちょうどに客電が落ち開演。団員に続き、飯森範親氏と三原未沙子氏登場。三原未沙子氏に接するのは今回初めて。スラリとした長身に深緑色のドレスが映える。最初はベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番ハ長調。第1番は5曲あるベートーヴェンのピアノ協奏曲のうち、人気の上では第3番以降の3曲が先行すると思っていたが近年再評価が進み、演奏頻度も第5番、第4番に続く人気だそうだ。実際、ぼく自身も第1番は昔から好きな曲の一つで、聴く機会は世の人気の通りだ。ハ長調の明るい曲想、古典派のお手本のような様式感、それでいて演奏時間35分以上を要する規模や意表をつく転調などは、さすがにベートーヴェン。凡百の古典派作品に留まらない。この日の演奏、当初ピリオドスタイルを取り入れた今風の演奏を予想していたが見事に裏切られ、堂々としたオケの響きに加え、ピアノも深いタッチと重みのある響き。やはりベートーヴェンはこうでなきゃ…と思わせる好演だった。
休憩をはさんで後半はマーラーの第5交響曲。
この曲に初めて触れたのは二十歳になった頃。その後も現在に至るまで、マーラーの交響曲の中ではもっとも聴く頻度が高い。群響の演奏でも何度か聴いているが、これまで聴いきた残響が極度に少ない旧本拠地:群馬音楽センターでは、マーラーやブルックナーの本来あるべき響きには遠かった。今回は新ホールで聴く初めて第5番。冒頭のトランペット、第3楽章のホルンソロ他、程よいホールエコーに支えられ存分に楽しめた。この日は第3楽章で活躍するホルンソロをフィーチャする目的で、この楽章だけソロホルン奏者が山台から降り、ヴァイオリン群の後ろの席に移動するという趣向が凝らされ目をひいた。それにしてもこの第5交響曲、とかく第4楽章アダージェットばかりが注目されるが、荘重な第1楽章に続く第2楽章・第3楽章(共にスケルツォの指示)の充実ぶりを再確認。まさにオーケストラ総力戦の感があり、実演に接するとその様相がよく分かる。このところ世代交代も進んでいる群響。腕利きのオーケストラビルダーの飯森氏の棒に応える合奏能力も素晴らしく、この名曲の一部始終を堪能できた。
実はこの日の演奏会の前日、群響と幾多の名演を聴かせてくれた群馬交響楽団名誉指揮者マルティン・トゥルノフスキーの訃報にふれた。5月19日ウィーンで亡くなったとのこと。他の国内オケへの客演も含め日本との関係も深い名指揮者だった。1958年のブザンソンで優勝し、1968年には名門ドレスデン国立歌劇場のシェフとなる別格の存在だった。ぼく自身も何度かその颯爽とした指揮姿に接し、楽屋にお邪魔して楽譜にサインをいただいたこともあった。享年92歳。合掌
ピアニスト三原未沙子氏。この演奏会の二日前5月20日にブラームスプログラムのデビューアルバムがリリースされている。以下のブラームスは昨年のもので、オフィシャルHPでも紹介されている自信作かと。指揮者は偶然だが同じ飯森氏。
マーラー第5交響曲。アバド&ルツェルン祝祭管弦楽団による演奏。2004年
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