週半ばの水曜日。6月も中旬。関東地方もようやく梅雨入りした。このところアレコレあって少々疲れ気味。加齢のなせるワザか、かつてならどうということもない事柄が妙にストレスになる。リポDもアリナミンも感度低下の老体には効きそうにないなあ…などど思いながら、溜息まじりに音盤棚を見渡し、ふと目の合ったこの盤を取り出した。 ノーマン・ブラウン(1970-)による1994年リリースのアルバム「After The Storm」。 ぼくはおそらく傍目には少々オタク入っているクラシック愛好家風情だが、ジャズはもちろん、フュージョン、ポップス、歌謡曲も好きだ。この盤はジャンル的にはインストのAORあるいはアダルト・フュージョン、最近の言い方ではスムース・ジャズというあたりだろうか。ノーマン・ブラウンは25年程前にデビューしたジョージ・ベンソン系ギタリスト。この盤は彼の2作目。発売間もない頃の出張帰りに、かつての音盤愛好家の聖地:石丸電気のフロアで流れているのを耳にして、珍しく衝動買いした。 例えば…日頃から憎からず思いを寄せる彼女とふとしたきっかけで食事をすることになり、ちょっと背伸びしてフレンチを。「おいしかったわ…」と少々上気した彼女を乗せて、都会のハイウェイをナイトクルーズする…そんな勝負どころのBGMには最高だ。そんなときにいくらなんでもヨッフムのブルックナーではいかんだろう。このところ少々疲労困ぱい気味。勝手な妄想をしつつ、この盤を聴いていると、いくらか元気が出てくる。 この盤の音源「Take me there」 0:47からのサビを聴いてこの盤を衝動買いした。VIDEO ライヴでのメドレーVIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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久しぶりにカシオペア。取り出したのはこの盤だ。 「CASIOPEA」「SUPER FLIGHT」に続くカシオペアの第3作、1980年リリースの「THUNDER LIVE」 数あるカシオペアのアルバムの中でも評価の高い名盤だ。取り出した盤は初出時の紅色に染められたLP。例によってリサイクルショップのジャンク箱から救済してきたもの。このジャケットはあまりにインパクトがあり過ぎたのか、再プレスの際にその後CD時代にも使われることになる白地のジャケットに変更された。 「スリル、スピード、スーパー・テクニック」というキャッチフレーズで1978年にデヴューしたカシオペア。初期2作の「CASIOPEA」「SUPER FLIGHT」はもちろん素晴らしいが、その後の全盛期を支えることになる神保彰が参加し、かつライヴ収録されたこの「THUNDER LIVE」こそが真のデビューと言われることもある。久々にフルボリュームで聴いたが、開いた口がふさがらないというのはこういう演奏を言うのだろう、まったくもって素晴らしいの一言だ。 「Space Road」は冒頭、宇宙船ロケットの発射前秒読みのようなSEで始まる。高速スケールのスタートダッシュのあとは同じフレーズをキーを次第に高めながら繰り返す、まるでエンジン噴射によって加速されるロケットそのものだ。一旦周回軌道にのってゆったりとしたフレーズが奏でられたあと、再び各パートがスリリングなフレーズを交換する。そしてもう1曲、このアルバムで聴き逃せないのは「Black Joke」だ。冒頭の6連符高速スケールでまず度肝を抜かれる。その後も細部に至るまで完璧なアンサンブルと疾走感。神保彰と櫻井哲夫のソロワークもライヴの雰囲気を盛り上げる。このアルバムを聴いた西海岸のトップミュージシャン達は演奏の完成度の高さと熱いエネルギーに驚いたそうだ。40年前、二十歳そこそこの若者達による奇跡的な記録の一つだ。 この盤の音源「Space Road」VIDEO 同「Black Joke」 主部に圧倒されるうちに3分35秒過ぎからのブリッジをはさみ、4分5秒過ぎから神保彰のソロ、ついで5分50秒過ぎからは櫻井哲夫のソロが始まる。VIDEO 同時期のライヴ映像VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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週末土曜日。午前中、かれこれ三年半乗っている車 の点検でディーラーへ。車自体は特に不具合もなく点検終了。折よく7年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型 の展示があって、とくと眺めてきた。デザインの細部がリファインされ、色々と新機能も盛り込まれているが、車としての基本的なアーキテクチャ、動力性能はほとんど変わっていない。「先行予約いかがですか?」「当分買い替えるつもりはないなあ」…と営業担当の声も右から左。 さて、帰宅後一服してリラックス。久々にこんな盤を取り出した。 近代スペインのギタリスト:ミゲル・リョベート(1878-1938)。そのリョベートの作品を集めたナクソスの盤。ミラノ生まれのロレンツォ・ミケーリというギタリストが弾いて2002年に録音されている。収録曲は以下の通り。 1. スケルツォ-ワルツ 2. 奇想的練習曲 3. マズルカ 4. 13のカタルーニャ民謡 5. 即興曲 6. 5つの前奏曲 8. 4つの民謡 9. 練習曲 ホ長調 10. ロマンス 11. ソルの主題による変奏曲 ぼくら世代のギター愛好家にとってリョベートは、もっぱらタレガの高弟、カタルーニャ民謡の編曲者…として知られている。実際はもっと多彩な活躍をした人物。何より演奏家として今に続くモダンギターの流れを作った一人だし、世界各地を飛び回ったことも当時としては画期的だったように思う。この盤の収められているカタルーニャ民謡のようにシンプルで美しい曲やアレンジはもちろん価値あるが、一方で「即興曲」や「ソルの主題による変奏曲」など相当テクニカルな曲も残していて、彼が優れたヴィルティオーゾであったことが分かる。 この盤でギターを弾いているロレンツォ・ミケーリは1975年生まれというから40代半ば。ナクソスにはジュリアーニやアグアド、テデスコなどの録音もあって、この盤でもいたって正統派の弾きぶり、かつ切れのいい技巧を聴かせてくれる。使用楽器は彼と同郷のミラノの製作家ロベルト・デ・ミランダとクレジットされている。スピーカーから出てくる音は極めてクリアかつ艶やかで、分離もよい現代的な楽器のようだ。 この盤の音源。「スケルツォ-ワルツ」VIDEO 「ロマンス」 パンク・ロッカーにあらず。ステファニー・ジョーンズというドイツのギタリスト。VIDEO パク・キュヒの弾く「ソルの主題による変奏曲」。原曲フェルナンド・ソル作曲の「スペインのフォリオの主題による変奏曲」を更に変奏というもの。技巧のオンパレード!VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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梅雨入り前ながら陽射しMAX。気温、湿度ともじわじわ上昇中。あたり前だが今年も夏が目前だ。さて週半ばの木曜日。きょうは少々早く7時前に帰宅。ひと息ついてネクタイを、もとい、ベルトを緩めてリラックス…今夜はジャズだ。 タル・ファーロウ(1921-1998)のカルテットとしてのデヴュー盤。バンド名がそのままアルバムタイトルになっている。タル・ファーロウ(g) ドン・アーノン(g) クライド・ロンバルディ(b) ジョー・モレロ(ds)。1954年録音。ベースとドラムスに加えてピアノレスの2本ギター編成という、その後彼のカルテットのスタイルとなる編成による最初の盤だそうだ。 ピアノレスのためか全編通して主役を演じるギターの音がことさらよく聴こえる。リズム隊もそれを意識して控え目にバックアップ。収録曲はタルのオリジナルが3曲とスタンダードが3曲。ロジャースやコール・ポーターなど職業作曲家の曲には一日の長があるとは思うが、タルのオリジナル作品も中々メロディアスで素晴らしい。 ロジャース作曲の第1曲「Lover」は三拍子のリズムを使って優雅さを出しながらテーマを奏でたあと、一気に高速スケールのテクニカルなアレンジになっていて、この盤の最初から聴き手を耳と心を引きつける。コール・ポーター「All through the night」では例によってタルの滑らかなスケールプレイが楽しめる。タルのオリジナル曲「Rock’n Rye」はブルースではあるが洗練されていて、ピアノレスの編成とも相まって汗臭さのない軽みのあるブルースだ。この盤、収録曲は6曲で20数分。雰囲気を出すにはオリジナルの10インチLP盤に針を降ろして聴きたいところだ。 この盤の音源。第1曲「Lovers」VIDEO タルのオリジナル「Tina」 2本のギターが効果的に使われている。50秒あたりからのマイナースケールによるプレイは中々印象的だ。VIDEO コール・ポーター作曲「All through the night」 VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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きょうは在宅勤務の予定だったが、訳あってやむなく出勤。いつも通りに一日となった。19時過ぎに帰宅。ひと息ついて音盤棚を見回し、こんな盤を取り出した。 ヤーノッシュ・シュタルケル(1924-2013)の弾くブラームスのチェロソナタ集。ピアノはジェルギー・シェベック。1959年録音。手持ちの盤は70年代半ばに出ていたエラートレーベルの廉価盤。ジャケット裏に日付が記されていて、それによると大学3年の春に手に入れている。当時、ブラームスの交響曲や協奏曲をいやと言うほど聴いて耳と身体に叩き込み、次は室内楽をと思って買った最初に盤だったように記憶している。そして粗末なオーディオセットにこのレコードを載せ、四畳半の下宿に流れた第1番冒頭のその渋い響きに、思わず嗚呼…と感嘆をもらしたことを思い出す。 ブラームスの二つあるチェロソナタのうち第1番は彼が32歳のまだ壮年期というにも早い時期の作品であるが、北ドイツ風の荒涼とした味わいや深々とした叙情はその年齢からは想像が出来ない。特に第1楽章はチェロの低音域を有効に使い、ほとんどのフレーズでピアノよりも低い音域を歌う。ぼくら世代にとってシュタルケルというと、例のコダーイ無伴奏の名録音で知られた豪腕チェリストというイメージがあって、このブラームス第1番の出だしの楚々とした風情にも驚いたものだ。シュタルケルはこの録音の前、50年代にモノラルで、またこの録音のあと60年代初頭に、同じジェルギー・シェベックのピアノで再録。さらに90年代にもこの曲を録音している。よほど好きな曲なのか、あるいは前の録音に満足できなかったのか…。手元にはフルニエとバックハウスのモノラル盤、ロストロポーヴィッチ、トルトゥリエの盤などもあるが、青春時代への郷愁も手伝ってか、このシュタルケルのエラート盤に手が延びることが多い。録音も優秀で今もって色あせない。 この盤の音源。第1番全曲VIDEO ミッシャ・マイスキー@2003年VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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6月最初の週末日曜日。昼をはさんで野暮用少々でやむなく外出した他は引き続きステイホーム。午後3時を少し回ったところで一服しつつ、こんな盤を取り出した。 トーマス・ビーチャムがロイヤルフィルハーモニー管弦楽団を指揮したフレデリック・ディーリアス(1862-1934)の管弦楽曲集。手持ちの盤はセラフィムレーベルの輸入盤LP。確か70年代半ば、大学3年のとき手に入れた。ディーリアスの曲が一部のクラシックファンの間で、その穏やかな曲想から話題となり始めた頃だったと思う。 サー・トーマス・ビーチャム(1879-1961)は現在まで続く製薬会社の子息として生まれた。当時の裕福な家庭の常として、教養としての音楽教育を受けたが、それが高じてオペラ劇団やオーケストラを私費で設立するにいたった。特に手兵ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団を指揮した多くの録音は彼の名を広めた。中でもイギリス近代の作曲家ディーリアスの管弦楽曲を集めたレコードは今もスタンダードな名演されている。 この2枚のLPには「春初めてのカッコウの声を聴いて」、「ブリッグの定期市」、「楽園への道」といったディーリアスの代表的な管弦楽曲が収められている。いずれの曲も曲名からイメージできるような描写的な曲想が繰り広げされる。近代フランス印象派を連想するような部分や、フランス以外の近代ラテン系作品(スペインのファリャ、アルベニス、イタリアのレスピーギ等)、またイギリスの伝統的で穏やかかつ保守的な音使い、そういった要素が織り成す、ともかく気持ちのいい、それでいて表層的だけでない音楽だ。 「ブルックの定期市」では冒頭、ハンガリー田園幻想曲を思わせるペンタトニックのフルートの旋律が出てきて少々驚く。その後穏やかな曲想の変奏曲が続き、とりわけ管楽器のソロが彩りを添える。「春初めてのカッコウの声を聴いて」は、まさに春のまどろみの中で、ふと聴こえてきたカッコウの声に心躍るひとときと、少々気だるい春の空気感をよく表現している。 この盤の音源。「春初めてのカッコウの声を聞いて」VIDEO 民謡をベースにした変奏曲「ブリッグの定期市」。穏やか曲想だが編成は大きく、コールアングレやバスクラリネット等も加わった三管編成。秋山和慶指揮する洗足学園のオケ。管楽器のソロもみな立派!VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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先日来、前橋汀子、シゲティと聴いてきたバッハ無伴奏。流れにのって今夜も…。取り出したのはこの盤だ。 シギスヴァルト・クイケン(1944-)の弾くバッハの無伴奏バイオリン作品集。ソナタとパルティータの計6曲が収録された盤。1999~2000年の録音。十数年前ちょっとしたいきさつがあって、ある古楽リコーダー奏者からいただいた。 説明をするまでもないだろうが、シギスヴァルト・クイケンは有名なクイケン三兄弟の真ん中。三兄弟は揃って古楽分野で活躍している。ぼくは古楽ファンでもピリオド指向でもないので、彼の盤はこれが唯一手元にあるだけだ。にもかかわらず、バッハの無伴奏を聴くとき他のいくつかの盤よりもこの盤を手にすることが断然多い。 この盤、まず録音が素晴らしくいい。さすがは伝統を誇る独ハルモニアムンディ(DHM)。透明感にあふれ、ヴァイオリンの音だけでなく周りの空気までも澄み切っているように感じる。ナチュラルなエコーも十分効いていながら細部もあいまいにならずよく聴こえる。ピリオドスタイルというと門外漢のぼくなどはやや過激な表現やモダンとかけ離れた奏法と音響をイメージするが、このクイケンの演奏はそうした違和感がない。ライナーノーツによれば使用楽器はジヴァンニ・グラツィーノ作。弓も当時のオリジナルとある。さきほどからソナタ第3番ハ長調BWV1005が流れているが、第2楽章フーガのテンポは落ち着いているし、続く第3楽章のラルゴも急がずもたれずで実に好ましく美しい。まさに心洗われる思いに至る。 この盤の音源でBWV1005のラルゴ。あまたあるバッハの曲の中でも最も美しい旋律の一つ。VIDEO クイケンはヴィオラ・ダ・スッパラ(ヴィオラポンポーザ)も器用にこなす。チェロ組曲第1番のプレリュード。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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