カザルス バッハ無伴奏チェロ組曲
月があらたまって令和三年文月七月。
淡々とした日々。きょうも一応仕事らしいことをして日が暮れる。4月から始まった今年度も最初の四半期を終えたところだが、業務少々ひっ迫。あまり呑気に構えてもいられない日々が続いている。万事程々に願いたいところだが…。 さて、きょうは週末金曜日、相変わらずの音盤ルーチン。今夜はこんな盤を取り出した。

パブロ・カザルス(1876-1973)の弾くバッハ無伴奏チェロ組曲。1930年代後半SP時代の録音。LP三枚組の手持ちの盤はイタリアのMAESTOSOというレーベルの輸入盤で1986年のリリースされている。当時都内のどこかの店で安く売られていたのを買った記憶がある。おそらくEMIからのライセンスを受けてのものだろうが、ライナーノーツもなく詳細は不明。少し調べてみたがMAESTOSOというそのレーベルも今は見当たらなかった。
この盤には久しく針を通していなかったし、1930年代の録音ということで、さすがに古色蒼然とした演奏かと思いながら一枚目の組曲第1番に針を下ろす。軽いスクラッチノイズに続いてト長調のアルペジオ風のお馴染みのフレーズがスピーカーから流れてきた。予想よりもずっとフレッシュな音に驚く。もちろん帯域は狭いし、音のエッジはそがれているのだが、その分聴きやすく、ノイズもほとんど気にならない。本家EMI盤や現行CDはどんな音なのだろうか。少なくてもこの盤も音質を理由に聴くのをためらうようなものではない。
録音当時六十を過ぎたばかりのカザルスはまだ技巧的な破綻などなく表現も意欲的だ。テンポも総じて速めだし、当時としては画期的といわれたダイナミックなボーイングのテクニックもよくわかる。但しそれはいずれも当時の水準であって、21世紀の基準に照らすといささか難があることは否めない。バッハの無伴奏は第1番から第6番まで順に難易度が上がっているといわれる。第1番に続いてハイポジションを多用する難曲の第6番も聴いてみた。こちらは冒頭のプレリュードの音形がやや不安定に聴こえる。これはぼくらがすでに20世紀後半以降の高い技巧の演奏に慣れてしまっているからだろう。加えてSP時代の録音技術に起因する音のふらつきもある。
表現としてはもっと19世紀的なスタイルを引きずっているものと思っていたが、第1番も第6番も十分現代的かつ意欲的だ。フレーズの頭に長めのボーイングで少し音を引っ張る特徴があるものの、テンポや拍節感はほとんど違和感はない。この曲を発掘し、のちに続くチェリストにとってのバイブルとしたカザルスの原点の曲であり、壮年期の充実した記録だ。
この盤の音源。第4番変ホ長調
全6曲。オリジナルのSP盤音源をリマスタリング(+ステレオ化)したもの。ちょっと驚きの音質大変身だ。
バッハ無伴奏チェロ第1番。1954年カザルス77歳のときの演奏。場所はカザルスが故郷スペインのフランコ政権に背を向けて移り住んだ仏プラドの教会。
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