パウル・デッサウ「交響的変態」(モーツァルトK.614による)



7月最後の週末金曜日。明日は休日、夜更かしオッケーだ。深夜のお楽しみは今月から始まった「孤独のグルメseason9」…と、その前にちょっと音盤も。先日来のモーツァルト続きの余勢をかって、こんな盤を取り出した。


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ドイツの作曲家・指揮者:パウル・デッサウ(1894-1979)の作品集。モーツァルト弦楽五重奏曲変ホ長調K.614による「交響的変態」と、ブレヒトの詞による終曲合唱「レーニンの墓碑銘」付き管弦楽音楽第3番「レーニン」という2曲が収められている。オケは共にシュターツカペレ・ベルリン。指揮は「交響的変態」がスウィトナー(1971年録音)、「レーニン」がデッサウ自身による(1965年)。手持ちの盤は例によって以前ネットで箱買いをした中にあったもの。80年代初頭の盤。ドイツシャルプラッテン・徳間音楽工業レーベル。

そもそもパウル・デッサウについて寡聞にして不案内。ドイツのオペラ劇場でキャリアを重ねながら、一方でハリウッドに渡り、初期ディズニーの映画音楽も担当した。広範囲の作品を手がけ、12枚組の作品集まで出ている。今夜はこの盤から「交響的変態」に針を降ろした。

現代ドイツの作曲家がモーツァルトの作品を借りて作ったバリバリの現代曲かと思って聴くと、肩透かしをくらう。原曲の弦楽五重奏曲第6番変ホ長調K.614の楽章構成と5声の音そのものはほぼ忠実に引き継ぎながら、現代管弦楽の様々な有り様をかなり自由に盛り込んだ作品。編曲という概念からは逸脱していて、やはりこれは創作。

管楽器や打楽器の付加が曲全体の雰囲気を華やかなものにしている。第1楽章冒頭、オリジナルではヴィオラで奏される主題が「狩のホルン」で奏され、以降も繰り返し現れるモチーフを頻繁に楽器を変えて扱うなど、曲想は変化に富み、際立って色彩的だ。管弦楽の各パートが入れ替わり立ち代り現われ、見方によっては少々せわしないと言えなくもない。原曲はモーツァルト最晩年の作品として、闊達にして簡素な曲想ながら無駄と隙のない傑作。いくつかある側面のうち、ハイドンへのオマージュとも言われた明るく伸びやかな雰囲気が強調される創作になっている。室内楽をオーケストラ作品に仕立てる試みは他にも多くあるが、その中でも独自の効果をあげた作品だ。


この盤の音源。「交響的変態」スウィトナー指揮シュターツカペレ・ベルリン。


原曲のモーツァルト弦楽五重奏曲第6番変ホ長調 K.614 モーツァルト最晩年の作品の一つ。



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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