群馬交響楽団@東京オペラシティー



先日、おらがグンマの至宝:群馬交響楽団の東京公演を聴いてきた。


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群馬交響楽団(群響:グンキョウ)は20年以上前から年2回の東京公演を行っている。ぼくも過去何度か都内のホールで群響を聴いたことがある。今回もその定例の東京公演の一環。たまたまその日、都内での仕事を少し早めに切り上げられることになり、指揮者も長年に渡って群響の音楽監督を務めて幾多の名演を残した高関健氏ということもあって、足を運ぶことにした。

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ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73「皇帝」
-休憩-
リムスキー・コルサコフ/交響組曲「シェヘラザード」
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仲道郁代(P)
高関健指揮・群馬交響楽団
2021年8月23日(月)19:00~ 東京オペラシティー
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西新宿・初台の東京オペラシティーのコンサートホールは今回で2回目。同じ施設内にある近江楽堂ではギターや室内楽の演奏会を数回経験している。コンサートホールは1500名程収容のシューボックス型ホールで、オーク材を贅沢に使い、天上に向かってのびる質感高い空間が素晴らしいホールだ。会場には6時少し前に到着、当日券を選んだあとは施設内のレストランで腹ごしらえ。余裕をもって席についた。緊急事態宣言下ということもあって入場者数を定員の半分に制限しての開催だ。 定刻ちょうどに客電が落ちオケ団員が入場。チューニングが始まる。程なくして落ち着いたブルーのドレスをまとった仲道郁代登場、そして高関氏があとに従う。地方都市のホームを離れてメトロポリタンTOKYOでの演奏を前に、こちらも胸がたかまる。

前半のベートーヴェン。オケは14型(14-12-10-8-7)のフル編成対向配置。冒頭のトゥッティが堂々と響き渡って曲が始まった。当夜は1階席中央やや後ろの席を選んだ。そのせいか仲道郁代のピアノが幾分遠くで鳴る。高い天井に向かって音が拡散するのだろう。しかし、それゆえにピアノとオケパートとが溶け合い、とかく力づくで剛直な響きになりがちなこの曲が一つの響きとして調和する。仲道郁代の弾きぶりもそんなイメージにぴったりで、細やかなフレーズを丁寧に弾き進めていく。そうした性格が第2楽章では取り分け効果的で、やはりこの曲の第2楽章は素晴らしいなあと、あたらめて感じ入った。
第3楽章ではピアノソロにも力が入り、強い打鍵ではそれまでの柔和なイメージをくつがえすほどの力感を表出する。さすがに経験豊富な仲道郁代。近年はベートーヴェンのソナタや協奏曲に積極的に取り上げているというだけのことはある。最後は終止厚い響きで支えてきたオケと一体になった大団円で曲を閉じた。 鳴りやまぬ拍手に応えてのアンコールは得意のシューマン。クライスレリアーナ作品16から第6曲が奏されて前半を終了した。

20分の休憩後は「シェヘラザード」。
オーケストレーションのお手本とも言われ、指揮者もオケも腕の見せ所満載の曲だ。そしてぼくにとってこの曲は少々不思議な曲で、いつも音盤をセットして聴き始める前は何となく退屈な50分を想像するのだが、聴き始めるとそんな予想は一瞬にして消え去り、最後まで聴き入ってしまう、そんな曲だ。 指揮棒を持たないことが多い高関氏だが、今回この曲では指揮棒を使っていた。その指揮棒が大きく振り下ろされると、ユニゾンの導入句がホールに響き渡った。思わず声を上げそうになる程の壮大な響き。そして直後にあらわれる静寂。ハープを伴ったヴァイオリンソロで主題が提示され物語が始まった。リムスキー・コルサコフ自身はこの曲の物語性を必ずしも歓迎していなかったのか、最終稿では曲の各部に付けられた標題を削除したとのこと。その経緯はともかく、いくつかの明確かつ特徴的な主題が現れると、やはりその主題からイメージする光景・物語を連想する。それだけ音楽そのものにイマジネーションを呼び起こす力だある証拠だろう。

高関氏は当日8月23日ゲネプロ前にTwitterで「実は長いこと苦手にしてきたこの作品。自分の不理解と勉強不足に起因することをようやく認識して、そろそろ指揮しても良いかな、とプログラムに載せています。本当に魅力に溢れる傑作ですね♪」と書き込んでいる。今現在、日本の指揮者の中でもっとも読譜力の優れた指揮者の一人であろう高関氏。不勉強…はもちろん謙遜はなはだしく、実際には自信をもってこの曲に臨んでいるに違いない。当夜の指揮ぶりは、曲の隅々まで意を尽くしたフレージング、ディナーミクが手に取るように分かるほど明確で自信にあふれていた。そしてそんな高関氏の期待に応える群響も熱演。分厚くうねるような弦楽群、その間隙をぬって冴え渡る木管群のソロ、思い切りよく圧をかけてくる金管群、そしてこの曲の主役ともいうべきヴァイオリンソロをとる伊藤文乃の安定した弾きぶりなど、ホームを離れた他流試合とは思えない充実した演奏だった。

地方オケの草分け的存在として語られることの多い群馬交響楽団だが、今や団員に群馬生れは皆無。団員募集では何倍もの競争率に全国からのエントリーがある。群響だけでなく全国のオケが同じようの状況だろう。当然技術レベルも拮抗していくる。今回のような公演でローカルのオケに触れる都会の音楽ファンはどんな感想をもつのだろうか…。 そんなことを思いながら会場をあとにし、昼間の熱気が幾分癒えた中、帰途についた。堂々としながらも柔和な響きの「皇帝」。そしてファンタスティックなアラビアンナイトを思い起こさせる「シェヘラザード」。晩夏の宵に相応しいよい演奏会だった。


仲道郁代の「皇帝」第3楽章


交響組曲「シェヘラザード」 激甘の第3楽章 米国内の主要オケから選抜したプレイヤーで構成した、その名もオールスターオーケストラによる演奏。


フェドセーエフ指揮のN響による全楽章。



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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