ライナー&CSO:ワグナー名演集



週半ばの水曜日。きょうもけなげに仕事をし、いつもの時刻に帰宅した。
ひと息ついて…夏もそろそろ終わりだなあ。 昨年来のコロナ禍で世のエンターテイメントはすっかり調子が狂ってしまったが、本来ならばクラシックの世界もあちこちで夏祭りが繰り広げられていたはずだ。中でもバイロイト音楽祭はもっとも人気の高いフェスの一つだろう。ワグナーファンでもないし、もちろんバイロイト詣も縁はないが、この時期になるとにわかワグネリアンとなって、気分だけでも味わいたくなる。本来は対訳でも見ながら全曲盤を聴きたいところだが、時間の制約もあって中々そうもいかず、結局ダイジェスト版や管弦楽曲集でお茶を濁すことが多い。きょうの盤もそんなときに取り出す一枚だ。


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フリッツ・ライナー(1888-1963)とシカゴ交響楽団による「ワグナー名演集」と題された一枚。1959年録音。手持の盤は60年代のビクター・リビングステレオの国内盤(おそらく初出盤)。例によって大阪出張の折に梅田の中古レコード店で手に入れた。阪急東通り商店街のネオンが終わり、その少し先にある名曲堂阪急東通り店。最後に行ったのは2008年だったろうか。当時そこには60年代国内盤コーナーというのがあった。店主のポップによれば、60年代の国内盤はレコードがまだ貴重品だった時代のもので、盤質もよくお薦めとあった。確かにその通りで、多くの60年代の盤はまだ合理化の手が入る前の産物。厚手の盤質でどれもいい音を奏でてくれる。しかも需要がないのか、ほとんどにワンコインの値札がついていた。この盤もそんな中の一枚だ。収録曲は以下の通り。名曲集には違いないが、よくある序曲や前奏曲を集めたものと違い、二つの楽劇に絞って聴きどころを選んでいる。

Side_A 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」から
第1幕前奏曲、第3幕前奏曲、徒弟たちの踊り、名歌手たちの入場
Side_B 神々の黄昏から
ジークフリートのラインへの旅、ジークフリートの葬送行進曲

少し前にことになるが、2013年はワグナーとヴェルディの生誕200年という年だった。この盤のライナーノーツには「今年1963年はワグナー生誕150年にあたる…」と記されていた。ちょうど半世紀前の盤ということになる。ライナーとシカゴ響の全盛期を伝える演奏そしてゴージャスな響きでワグナーが繰り広げられる。特に金管群のパワー感は他に類をみない。音価の長い音符でも息が切れるどころか、まるで何か機械でアシストしているのではないかと思うほどテヌートをいっぱいに効かせて吹き切る。このパワー感はのちのショルティ時代になっても不変だった。一方で、第3幕前奏曲などでは弦楽群の抒情的な表現も不足はない。1959年録音とのことだから、チェロのトップにはぎりぎりシュタルケルが座っていた頃かもしれない。


この盤の音源。「ジークフリートのラインへの旅」


同「ジークフリートの葬送行進曲」



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バッハ:カンタータ「イエスよ、汝わが魂を」BWV78



高校時代の友人からメールがあり、最近バッハのカンタータにご執心だという。その友人とは高校時代に一緒にギターを弾いていた仲で、社会人になってからは疎遠になっていたが、二年前に再会し交流が復活した。彼は教会暦に従ってバッハのカンタータを聴き進めている由。そういえば最近聴いていないなあ、カンタータ…と思い、彼からのメールに書かれていたこの曲を聴くことにした。


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カンタータ「イエスよ、汝わが魂を」BWV78。例のブリリアント版バッハ全集の一枚。このカンタータは、ちょうど今の時期、三位一体主日後第14主日のために書かれ、いわゆるコラールカンタータの中でも名曲として知られる。曲は以下の7曲からなる。

第1曲 コラール合唱「イエスよ、汝わが魂を」
第2曲 二重唱「われは急ぐ」
第3曲 レチタティーヴォ「ああ、われ罪の子」
第4曲 アリア「わが咎を消し去る御血潮」
第5曲 レチタティーヴォ「傷、釘、荊、墓」
第6曲 アリア「今や汝わが良心を鎮むべし」
第7曲 コラール「主はわが弱きを助くと信じたり」

第1曲冒頭から半音階の下降音形による印象的なフレーズが始まる。曲はこの冒頭の音形によるシャコンヌ(パッサカリア)として進行する。第2曲ではイエスの元へと急ぐ足取りが、低弦(指定はヴィオローネ)のピチカートと無窮動風のオスティナートで表現され、それにのってソプラノとアルトが伸びやかに歌う。テノールのレチタティーヴォとアリア(フルートのオブリガートを伴い美しい)に続き、第5曲バスのレチタティーヴォ。そしてオーボエとバスによる二重協奏曲を思わせる第6曲バスのアリアへと続く。数あるバッハのカンタータの中でも名曲として知られ、人気も高い曲だけに、構成するいずれの曲も機知に富みまったく飽きさせない。特にチャーミングな第2曲と、対照的なバスによる第5曲のレチタティーヴォと第6曲のアリアは印象的だ。

少し腕のあるクラシックギター弾きに中にはバッハ、バッハと熱っぽく語る輩も多いが、話をするとリュート作品として認知されている数曲や無伴奏のチェロやヴァイオリン曲に少々触れている程度で、鍵盤曲やオルガン曲、宗教曲に話が及ぶことはほとんどない。まあ、アマチュアの道楽だから何でもアリだろうから、他の曲を聴かずしてバッハを語ることなかれなどど言うつもりは毛頭ないが、今やYouTubeでいくらでも聴ける時代。他の曲に触れることでギターで弾く際の参考にもなるはずだ。


独ヴルツブルクのバッハカンタータクラブという団体よる演奏。動画コメントによれば指揮者とソプラノ、バスは日本人とのこと。アルトはカウンターテナーによる。オケは各パート1名という最小限の構成だが不足は感じない。


こちら方面はまったく疎いのだが、今やマタイ魔笛も歌う初音ミクによる第2曲ソプラノとアルトのアリア。 上に貼った音源では5分55秒から始まる。



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庄司紗矢香 ルーヴル・リサイタル2001



九月に入ってから天候不順といってもいい状態が続く。陽射しのある日は気温も上がるか、もはや盛夏の勢いはない。どうやらこのまま秋を迎えそうだ。 さて、週末土曜日。ちょこちょこ野暮用外出。三時過ぎにようやく落ち着いて一服。渋茶をすすりつつ、こんな盤を取り出した。


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庄司紗矢香(1983-)のパリ・ルーヴル美術館オードトリアムでのリサイタルライヴ。ちょうど20年前、2001年9月の録音。1983年生まれの彼女は16歳でパガニーニ・コンクールで最年少優勝し、そのあとメータの指揮でパガニーニの協奏曲第1番でアルバムデヴューした。そのあとに出たのがこのリサイタル盤だ。ピアノはイタマール・ゴラン。収録曲は以下の通り。

ドヴォルザーク:4つのロマンティックな小品 作品75
シマノフスキ:ヴァイオリン・ソナタ ニ短調 作品9
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調 作品100
ラヴェル:ツィガーヌ

録音当時彼女はまだ18歳。その年齢からは想像がつかない本格的なプログラムだ。ロマン派以降のかなり濃い口の選曲だが、技巧的にはもちろん、音楽の運びもまったくもって成熟し落ち着き払っている。大したものだ。五嶋みどりにせよ、諏訪内晶子にせよ、十代から第一線で活躍している演奏家には、若い頃から一般の若者とはまったく違った独特の成熟感を感じる。庄司紗矢香もしかりだ。下記の貼り付けたYouTubeの映像に見られる16歳の彼女の落ち着いた受け答えを見てもそれとわかる。

ブラームスのソナタなど、この曲の持つ渋さと時折みせるほのかな明るさとの微妙なバランスを18歳の彼女がどんな気持ちで弾いていたのか実に興味深い。音を聴く限り、作曲当時50代中年男ブラームスの心境を十全に理解しているのではないかと思ってしまう。


16歳当時の彼女を映したドキュメンタリー。


この盤の音源。ブラームスのソナタ第2番イ長調作品100  しみじみいい曲だなあと思う。



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ホリー・コール「Holly Cole」



週半ばの木曜日。ここ数日、ちょいと引っかかる案件があって往生していたが、何とか解決の見通しがついて休心。気分が幾らか軽くなったところで、今夜はこんな盤を取り出した。


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ホリー・コールのその名も「Holly Cole」と題されたアルバム。邦題が「シャレード」と付されている。2007年リリース。収録曲は以下の通り。ジャズ、ボサノバ、映画音楽他、お馴染みのスタンダードが並ぶ。

1.ザ・ハウス・イズ・ホーンテッド
2.シャレード
3.シェルブールの雨傘
4.三月の水
5.アレイ・キャット・ソング
6.ラージャー・ザン・ライフ
7.ビー・ケアフル、イッツ・マイ・ハート
8.イッツ・オールライト・ウィズ・ミー
9.ユーアー・マイ・スリル
10.ライフ・イズ・ジャスト・ア・ボウル・オブ・チェリーズ
11.リーチング・フォー・ザ・ムーン

1991年に「コーリング・ユー」のヒットで表舞台に出て以来、独自の魅力でファンの多いホリー・コール。ぼくもたまたま手にしたアルバムですっかり彼女に魅力にひかれ、何枚かの音盤を手に入れたが、本作はそれまでのアルバムと少々異なる。まずバックがコンボスタイル以上、やや大きめの編成であることが特徴的だ。それまでピアノとベースといったミニマムなバックを従えて、集中力の高いディープな歌いっぷりが印象的だったが、この盤ではバックアンサンブルの多様さと、曲のポピュラリティーもあって、ずっとくつろいだ雰囲気。アップテンポあり、バラードありだが、総じて力の抜けた歌唱で、よりエンターテイメント色の濃いアルバムに仕上がっている。

これをもって彼女のイメージと違うとか、いささか営業クサいとか、そんな苦言も聴こえてきそうだが、まあいいではないか。バラードもちろんよし、アップテンポのイッツ・オールライト・ウィズ・ミーではバックミュージシャンの腕も冴えてノリノリだ。飛び切りのイイ女が変わらぬチャーミングかつセクシーな歌声で、むしろいつもよりくつろいで歌ってくれているのだから、ここはひとつうるさいことを言わずに、ダラ~とやに下がりましょう。


この盤の音源。アルバムの邦題になっている「Charade」


同 「I will wait for you」 邦題「シェルブールの雨傘」


同 「It's all right with me」



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ジョージ・セルのベートーヴェン@1969年ザルツブルクライヴ



相変わらずすっきりしない天気が続く。今月は上期最終月。業務少々ひっ迫につき、本日も業務に精励。いつもの時刻に帰宅した。先日来の整理も終わった音盤棚を眺め、久しぶりにこんな盤を取り出した。


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ジョージ・セル(1897-1970)が客演した1969年8月ザルツブルク音楽祭でのウィーンフィルとの演奏会ライヴ。曲目はオール・ベートーヴェンプログラムでの以下の3曲。ピアノ独奏は、このライヴの前年1968年にセル&クリーヴランド管と組んでベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲を録音しているエミール・ギレリス。

・エグモント序曲
・ピアノ協奏曲第3番ハ短調 エミール・ギレリス(pf)
・交響曲第5番ハ短調「運命」

さすがにセルの手によって徹底的に鍛えられたクリーヴランド管と違って、客演指揮のウィーンフィル、しかも当時まだ今ほど世界がボーダレスになっていない時代のウィーンフィルだ。細かなアンサンブル面ではクリーヴランド管ほどに徹底せず、少々ほころびがみえるところもある。またベームの指揮だったらもっとずっとモッサリしたベートーヴェンだったろう。そこはやはりセルの手腕だ。音楽に贅肉がなく、筋肉質のしまった響きを楽しめる。エグモントでは冒頭の和音を長く引き伸ばしたあと重々しい和音が続くが、ここも鈍重な重さは無く、切れ味が鋭い。一方エミール・ギレリス(1916-1985)を独奏に迎えた第3番の協奏曲はセル、ウィーンフィル、ギレリスが一体となって音楽に迫る感じが少々乏しいようにも感じる。

圧巻は第5交響曲だ。ここでのセルはピアノ協奏曲のときとは人が変わったように積極的に音楽を展開する。ウィーンフィルもようやく本気になった響きで応える。速めのインテンポでたたみかける第1楽章は一瞬たりとも弛緩したところがない。それでいて再現部後半に入るオーボエのソロなどはぐとテンポを落として切々と歌わせる。第2楽章は冒頭そして変奏部分のでウィーンフィルの弦楽の美しさに耳を奪われる。どっしりとして重量感と安定感のある曲の運びの第3楽章から第4楽章へ入ると一転して速めのテンポとなり一気呵成に突き進む。ウィーンフィルの金管群も音を割るほどに強奏してセルの棒に反応していく。そしてコーダでの強烈なアチェルランド。更にそのあとウィーンフィルが一瞬タイミングを外しそうになるほどにテンポを落として最後の和音を閉じる。まさにライヴならでは、あるいは客演ならでは緊張感あふれる演奏だ。


この盤の音源。交響曲第5番ハ短調 全楽章


同 ピアノ協奏曲第3番ハ短調 ギレリスのソロ。



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カシオペア「Photographs」



九月最初の週末日曜日。このところ関東地方は雨続き。湿度の影響もあってか楽器の鳴りはイマイチ。指の不調も相変わらずで全然ギターを弾いていない。いろいろ冴えないなあ…と、ぼやいていても仕方ない。何か聴いて気分を上げようと、こんな盤を取り出した。


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カシオペアの数あるアルバムの中でもお気に入りの一枚。彼らの第9作目にあたるアルバム「Photographs」。1983年録音。手持ちのLPは20年近く前、リサイクルショップのジャンク箱から百円也で捕獲してきたもの。帯付きのミントコンディションで、外観・盤質とも新品同様だった。収録曲は以下の通り。現在に至るまで彼らのライヴで繰り返し演奏される人気曲がいくつか収まっている。

Side_A
 1.LOOKING UP
 2.DAZZLING
 3.LONG TERM MEMORY
 4.STRASSE
 5.OUT DRIVE
Side_B
 1.MISTY LADY
 2.LOVE YOU DAY BY DAY
 3.SPICE ROAD
 4.FRUIT SALAD SUNDAY
 5.FROM OVER THE SKY

このアルバムが出た1983年頃、彼らの人気は絶頂期。アイドルポップスに飽き足らない音楽好きの若者の多くは彼らの繰り出すテクニカルでポップな音楽に傾倒していた。ぼく自身は当時、社会人になって数年が経った頃。聴く音楽はもちろんクラシック主体だったが、カシオペアの曲はテレビにもラジオにもしばしば流れ、聴くともなしに耳に入ってきていた。もっとも、以前も何度か書いているように、ぼくがカシオペアを聴くようになったのは90年代半ばになってからで、この「Photographs」もリアルタイムでは知らず、CD共々後年手に入れた。

日頃から移動中のカーオーディオで聴いている盤だが、きょうは久々にLP盤に針を下した。先日入れ替えた2S-305から、たった今そこで録られたのではないかと思うほどフレッシュな音が飛び出してくる。重くタイトながらキレのある神保彰と櫻井哲夫のリズム隊、凝ったコードワークとヴォイシングでカシオペアサウンドを決定づける向谷実、そしてテクニカルなギターをソロを繰り出しながらもバンドとしてのアンサンブルをまとめる野呂一生。当時二十代半ばの若者だけのバンドとは思えない完成度だ。そして、このアルバムではそれまでカシオペアにはなかったボーカル要素も組み入れられ新境地を見せている。中でも「LOOKINGUP」「DAZZRING」「MISTY LADY」などは、現在に至るまでライヴでは必ずといっていいほど演奏され、何度聴いてもその斬新な曲想に心踊る。

それにしても…このアルバムから四十年近くが経ち、当時二十代だった彼らも還暦(もちろん、こちらも)。遥かに来てしまったなあと思うことしきりである。


カシオペアの曲でもっとも好きな曲の一つ「DAZZRING」 この盤の音源。


このアルバムから3年経った1986年のライヴ。ボーカルに楠木勇有行が参加した。


レーザーディスクでリリースされたこの1986年のライヴは以下で全編観られる。
https://youtu.be/oskHCN7kOrY

現代のエレクトーンを駆使すれば一人カシオペアに!



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DIATONE 2S-305 vs AVALON ECLIPSE



先回の続き。オーディオあるあるで、一度手放した2S-305を再び向かい入れたという、おバカな話のその後。


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2S-305が来てからAVALON ECLIPSEは物置代わり使っている別室に放置状態だったのだが、先日小型のキャスターを買って移動可能にし、2S-305と時々入れ替えて楽しむことにした。本来ならキャスターなど使わず、床にしっかり設置するのがベストだが、利便性優先。まあ、大目にみることにした。

写真で分かる通り、2セットを並べることも可能ではあるが、8畳の部屋では少々圧迫感がある。それと部屋の横幅いっぱいまで占有すると、ギターを入れているクロゼットの扉を開けるには、その都度スピーカーを移動させなければならない。結局セットするのはどちらかワンセットにすることにした。

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先週末二つのセットを切り替えて聴いた。そのときの感じを手短かに記しておこう。

2S-305はやや古めで音数の少ない録音では非常にリアルな音が熱く迫ってくる。ジャズは最高。昭和歌謡も◎。80年代フュージョンも悪くない。低音は50Hz以下の低いところまで十分な音圧があって文句なし。一方中高音はややレンジの狭い鳴り方。音場よりも音像の明快さが優先される。周波数レンジが広く、音場が前後左右に広がる最新録音はその情報を伝えきれない。しかし、そうしたネガティブな要素は、軽量コーンと強力な磁気回路による反応の良さで帳消しされる。

AVALONのECLIPSEは一聴して「きれいな音」。特にオーケストラを聴くと、音場の広がり・奥行きを伴いながらも、各パートが明瞭かつ歪みなく聴こえてくる。同じ録音を2S-305で聴くのと比べると、録音年代がひと世代新しくなったのではないかと思う程だ。中高音のレンジ、指向性、歪特性等が優れているためと思う。低音は量感、ローエンド限界とも2S-305に負けるが、足らないなあと眉をしかめるほどではない。

よくよく考えてみると、2S-305が昭和30年代初頭に世に出て、平成に変わると同時に引退だから現役生活30年。Avalon_Eclipseも1990年に発売後10年程現役だったが、すでに開発当時からは30年と、引退時の2S-305と同等の年月が経っていることになる。現代のスピーカーは広いレンジと音場感の表現が重要視されることを考えると、Avalon_Eclipseの設計思想は今もそのまま通用するし、製品自体の能力も現在のモデルと比して、それほど遜色ないというのも大したものだと感じる。アナログ時代の日本標準vsデジタル時代の世界標準(の一つ)…というと大げさだが、あながち遠からず。その二つを手元における幸運に感謝しよう。


いつもギター録音に使っている小型のレコーダー(ZOOM社Q2n-4K)で2S-305の音を録音してみた。最近は「空気録音」というらしい(ちょっと違和感ある言葉だなあ)。オモチャのようなレコーダーなので予想以上に情けない音だし、こういう試みでスピーカーの音など分かるはずもない。しかしオーディオマニアの悲しいさがで、ついついやってみたくなる。まあ、ほんのお遊びということで…。AVALONとの比較ができればよかったが、その辺りはまたいずれ。

熱帯ジャズ楽団「Mambo Inn」 1分51~53秒付近では高橋ゲタ夫のベースが40Hz付近まで押してくる。


アントニオ・ヤニグロのチェロ フォーレ「夢のあとに」 1960年の録音でややテープヒスノイズが目立つ。


ファリャ「火祭りの踊り」 ガルシア・ナヴァロ指揮ロンドン交響楽団 元の録音そのものがイマイチ。



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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