ジョージ・セルのベートーヴェン@1969年ザルツブルクライヴ
相変わらずすっきりしない天気が続く。今月は上期最終月。業務少々ひっ迫につき、本日も業務に精励。いつもの時刻に帰宅した。先日来の整理も終わった音盤棚を眺め、久しぶりにこんな盤を取り出した。

ジョージ・セル(1897-1970)が客演した1969年8月ザルツブルク音楽祭でのウィーンフィルとの演奏会ライヴ。曲目はオール・ベートーヴェンプログラムでの以下の3曲。ピアノ独奏は、このライヴの前年1968年にセル&クリーヴランド管と組んでベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲を録音しているエミール・ギレリス。
・エグモント序曲
・ピアノ協奏曲第3番ハ短調 エミール・ギレリス(pf)
・交響曲第5番ハ短調「運命」
さすがにセルの手によって徹底的に鍛えられたクリーヴランド管と違って、客演指揮のウィーンフィル、しかも当時まだ今ほど世界がボーダレスになっていない時代のウィーンフィルだ。細かなアンサンブル面ではクリーヴランド管ほどに徹底せず、少々ほころびがみえるところもある。またベームの指揮だったらもっとずっとモッサリしたベートーヴェンだったろう。そこはやはりセルの手腕だ。音楽に贅肉がなく、筋肉質のしまった響きを楽しめる。エグモントでは冒頭の和音を長く引き伸ばしたあと重々しい和音が続くが、ここも鈍重な重さは無く、切れ味が鋭い。一方エミール・ギレリス(1916-1985)を独奏に迎えた第3番の協奏曲はセル、ウィーンフィル、ギレリスが一体となって音楽に迫る感じが少々乏しいようにも感じる。
圧巻は第5交響曲だ。ここでのセルはピアノ協奏曲のときとは人が変わったように積極的に音楽を展開する。ウィーンフィルもようやく本気になった響きで応える。速めのインテンポでたたみかける第1楽章は一瞬たりとも弛緩したところがない。それでいて再現部後半に入るオーボエのソロなどはぐとテンポを落として切々と歌わせる。第2楽章は冒頭そして変奏部分のでウィーンフィルの弦楽の美しさに耳を奪われる。どっしりとして重量感と安定感のある曲の運びの第3楽章から第4楽章へ入ると一転して速めのテンポとなり一気呵成に突き進む。ウィーンフィルの金管群も音を割るほどに強奏してセルの棒に反応していく。そしてコーダでの強烈なアチェルランド。更にそのあとウィーンフィルが一瞬タイミングを外しそうになるほどにテンポを落として最後の和音を閉じる。まさにライヴならでは、あるいは客演ならでは緊張感あふれる演奏だ。
この盤の音源。交響曲第5番ハ短調 全楽章
同 ピアノ協奏曲第3番ハ短調 ギレリスのソロ。
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