セゴビア・コレクション第3集「ポンセ・ソナタ集」



週末日曜日。コロナ感染状況が一服していることに加えて、季節は秋たけなわで行楽日和…と思ったが、きょうは昼をはさんで寒冷前線通過。その後は一気に寒気流入、気温も15度を切って驚いた。シャツ一枚では肌寒く、ジャケットを羽織って野暮用外出。3時を少し回って帰宅した。ひと休みしながら、先日来の続きでこんな盤を取り出した。


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80年代終わりに当時のワーナー・パイオニアから出たセゴビア・コレクション全17巻中の1枚。先回先々回に続く第3集。アンドレス・セゴビア(1893-1987)が弾くマヌエル・ポンセ(1882-1948)のソナタを集めた盤。収録曲は以下の通り。

1.ソナタ・メヒカーナ 全4楽章 (1967年録音)
2.ソナタ・クラシカ(フェルナンド・ソル讃) 全4楽章 (1967年録音)
3.ソナタ・ロマンティカ(フランツ・シューベルト讃) 全4楽章 (1964年録音)
4.ソナタ第3番 全3楽章 (1955年録音モノラル)
5.「ソナタ・メヒカーナ」~アレグロ (別テイク1958年録音モノラル)

ギターにしか興味がない人、ギター音楽しか聴かない人にとってはそれほど不思議はないのかもしれないが、他のクラシカルな楽器の世界からみるとギターの世界は少々奇異なことがある。その一つがソナタという古典的様式を持った楽曲が取り上げられることが他のジャンルに比べて少ないことだ。例えばピアノの世界であれば、バイエルを終えてブルクミュラーに手をつける頃には、同時にソナチネ集も与えられる。そしてその後はハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどの古典期のソナタが必須課題なる。そういう段階を踏みながら機能和声と楽曲の様式感、音楽表現を会得することになる。 ところがクラシックギターの場合、ひと昔のメソッドだとカルカッシ教則本をざっと通し、その後はカルリやソル、ジュリアーニ等のエチュードのいくつかやると、いきなり近代のヴィラ・ロボスやタレガに飛んだりする。ソナタ形式を学ぶ機会がない場合すらある。ソル、ジュリアーニの他、ウィーン古典派のディアベリ、マティエカ他にも古典期ソナタはもちろんあるが、その数は他の楽器に比して多くはない。多くはないが、ソナタ形式を習得する題材として事欠くということもないだろう。にもかかわらず、プロアマ問わず多くのギター弾きは(教える側も含め)、これらを積極的に取り上げようとしない。

そんな中にあって近代に位置するマヌエル・ポンセのソナタは貴重だ。この盤にはポンセのソナタが4曲納められていて、いずれも3ないしは4楽章形式の古典的様式にのっとりながら、近代的な和声感をもった充実したソナタが楽しめる。曲名や副題の通り、ポンセの故郷であるメキシコの民族的な主題を元にしたり、古典期やロマン派期の作風を模しながら、その中に近代作曲家らしいポンセの巧みな構成やフレーズ、和声が盛り込まれている。中でもソナタ第3番は他の2曲のように副題がなく、ポンセ自身のイメージがもっとも明確に出ている曲だろうか。ラテン系らしいフレンドリーなメロディーながら明るい太陽のラテンからは遠い。どこかほの暗く、抒情に満ちている。第2楽章「シャンソン」は憂いと哀愁を湛え、とりわけ美しい。


この盤の音源で「ソナタ・メヒカーナ」


セゴビアの弾くソナタ第3番の第2、3楽章。この盤の録音とほぼ同時期1955年のライヴ音源のようだ。


ソナタ第3番の全楽章。ユロス・ベイリックというギタリスト。



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ドヴィエンヌ フルート協奏曲ホ短調



少し前からブツブツぼやいていた納期仕事を何とかやっつけ、ひとまず休心。安堵の帰宅をなった。今回思いのほか手を焼いてしまった影響は今月から来月にかけて尾を引きそうだが、先のことは…まあ、そのときになったら考えよう。というわけで、今夜は解放された週末金曜日。先日聴いたペルゴレージで思い出し、こんな盤を取り出した。


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フランス古典期の作曲家にして有能なフルート奏者でもあったフランソワ・ドヴィエンヌ(1759-1803)のフルート協奏曲。どんな楽器でもそうだろうが、その楽器の世界ではポピュラーでありながら、音楽全般の中にあっては、ごく一般的な愛好家にはほとんど省みられない作曲家や曲がある。このドヴィエンヌもそんな存在かもしれない。この盤にはかなりの数が存在する彼のフルート作品から、2つのフルートのための協奏協曲ト長調作品76とフルート協奏曲第7番ホ短調が収められている。オーレル・ニコレのフルート(作品76では夫人のクリスティアース・ニコレが加わる)とアントーニ・ロス=マルバ指揮オランダ室内管弦楽団の演奏。1979年録音。例によって以前、格安箱買いしたLP盤中にあったもの。

さきほどからホ短調の協奏曲を聴いている。古典期の短調作品の多くが緊張や深い感情表出に使われたように、この曲の第1楽章アレグロはまさにそうした性格を感じさせる開始だ。第2主題では穏やかな長調旋律を取りながら突如して短調に転じるなど、いずこもこの時代の短調作品特有の充実した響き。第2楽章はソロフルートが終始美しい旋律を典雅に歌うアダージョ。終楽章ロンドは再び短調に戻るが、長調の副主題を交えながらソロが華麗な技巧を繰り広げる。「フランスのモーツァルト」とも称されたドヴィエンヌの面目躍如たる佳曲だ。フルトヴェングラー時代のベルリンフィル首席であったオーレル・ニコレは、終楽章の技巧的なフレーズもやや渋めの音色と落ち着いた吹きぶりで素晴らしい。


ランパル&パイヤールによる音源。シュトゥルム・ウント・ドランク!


楽譜付き音源



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ペルゴレージ フルート協奏曲ト長調



週半ばの水曜日。先日来の納期アップアップを強行突破。何とか目途をつけて首がつながった…フ~ッ。さて。少々気が楽になったところで、変わらぬ音盤ルーチン。通勤車中で聴いていたC.P.Eバッハのフルート協奏曲で思い出し、今夜はこんな盤を取り出した。


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モーツァルトやシューベルトより若く弱冠26歳で夭逝したイタリアの作曲家ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ(1710-1736)のフルート協奏曲ト長調。 ミュンヒンガー&シュトゥットガルト室内管弦楽団のコンビとピエール・ランパルによる盤。手持ちの盤は1964年リリースと記されたキングレコードのロンドン盤。録音は60年代初頭か。これも例によって十数年前、出張先の大阪梅田で見つけた。60年代中庸の盤らしくずっしりと重く分厚い盤質。オルトフォンSPUの針を降ろすとクリアかつ密度感のある極上のアナログサウンドが流れてきた。DECCA録音らしく細部もクリアで、弦楽群と独奏フルートの距離感など申し分ない。コントラバスの低い基音もしっかりと聴こえてくる。

同じイタリアのヴィヴァルディやスカルラッティよりも少し年代が下がることもあって、イタリアンバロックの響きを基調としながらも時折古典派の幕開けを感じさせる豊かな曲想にあふれる。B面に収録されているコンチェルト・アルモニコ第5番、第6番も素晴らしい弦楽合奏曲。夭折の人気作家ゆえに偽作と称される作品も多く、この盤のライナーノーツでも、収録されたフルート協奏曲、弦楽合奏協奏曲ともにその可能性が否定できないと記されている。但し半世紀も前の記述。その後の研究で様々な確定情報があるようだが、その手のことにあまり興味なく寡聞にして不案内。曲の良さだけ楽しもう。


この盤の音源。ランパル&ミュンヒンガーによるフルート協奏曲ト長調第1楽章


同 第2楽章 憂いに満ちた素晴らしい楽想
https://youtu.be/CYhLZbvpRT8

ブエノスアイレス生まれのクラウディオ・バリレによるフルート協奏曲ト長調。録音のせいもあるだろうが、太くたっぷりとした音。そして何より抜群の歌いっぷりが素晴らしい。


楽譜付き音源(上に貼ったクラウディオ・バリレの演奏だと思う)。ギターでも弾きやすいト長調なのでソロパート、伴奏パート、気分で選んで初見大会を試みるのも楽しい。



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井上陽水「9.5カラット」



週明け月曜日。本来なら休日だが、今年はオリンピックで7月にシフト。昭和の感覚では10月10日が「体育の日」ということになるが、昨今は祝日もどんどん動くので何が何だか分からない。 さて、いずれにしてもよい季節。きのう日曜は野暮用少々の他はのんびりステイホーム。部屋の片付けをしながら聴いたこの盤について記しておこう。


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井上陽水のセルフカヴァーアルバム「9.5カラット」。1984年12月リリース。手持ちの盤は二十年程前、今思えば「狂ったように」音盤を買い漁っていた時期にリサイクルショップのジャンクコーナーで捕獲した。収録曲は以下の通り。お馴染みのヒットポップスが並ぶ。

Side_A
1.はーばーらいと
2.ダンスはうまく踊れない
3.TRANSIT
4.A,B,C,D
5.恋の予感
Side_B
1.いっそ セレナーデ
2.飾りじゃないのよ 涙は
3.からたちの花
4.ワインレッドの心

ぼくのような井上陽水のファンでもない、彼の多くの曲をほとんど知らないに等しい者が何かを語る資格もそのつもりもないのだが、彼の尋常ではない歌の上手さ、聴き手に訴える力など、あらゆるジャンルの歌手の中で最も優れた歌手の一人だと感じている。このアルバムがリリースされた1984年当時、デヴューからすでに十年以上経ち、オリジナリティにあふれた歌唱で現在に至るまでの彼らしさは確立していた頃だ。

収録曲には楽曲が提供された歌手によってヒットし、ぼくのような特別な陽水ファンでもポップスファンでもない者も聴き馴染んだ曲が並ぶ。オリジナルのそれぞれの歌手の歌唱も優れたものだと思うが、こうしてまとめて陽水のセルフカヴァーで聴くと、こちらがオリジナルではないかと感じてしまう。それほど自然で、曲のイメージと合っていて、何よりやはり彼の声質と歌いっぷりからくる存在感に圧倒される。


「いっそセレナーデ」 このアルバムの少し前にシングルでリリースされた。


「恋の予感」


中森明菜のヒット曲となった「飾りじゃないのよ 涙は」 with井上陽水・玉置浩二



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ヒンデミット 室内音楽集



先回の記事に書いたように、足元の仕事が納期ギリギリで進行中。今週はいつになく集中して仕事をした。まあ、たまにはいいか…フ~ッ。さて週末土曜日。町内自治会仕事を少々こなし、ようやく一服。先回のヒンデミットのヴィオラ・ソナタで思い出し、こんな盤を取り出した。


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パウル・ヒンデミット(1895-1963)の書いた室内音楽集を収めたハルモニアムンデ盤LP2枚。ヒンデミットはKammerMusikenと称する室内楽編成の合奏曲を第1番から第7番までを残している。手元にあるのは第1・2・6番が入っている盤ともう1枚、第5番・7番が入っている盤。ドイツのバーデン・バーデン合奏団を中心に曲によって独奏楽器のメンバーが加わっている。1977年録音。

20世紀の、それも室内楽というジャンルにあって、このヒンデミットの室内音楽集がなかなか人気が高いようだ。CDでもいくつか手に入る。ヒンデミットの自画像が印象的なこのLPは以前ネットで格安箱買いした中に入っていた。そうでもなかったら、自発的に選んで買っていなかっただろう。そういう意味では、中身を見もせず何かを手に入れてみるのも、たまにはいいかもしれない。

実際この曲は楽しい。難解さ皆無。20世紀の音楽だから旋律や和声には新鮮な試みがなされているが、もちろん無調ではないし、かといってリヒャルト・シュトラウス的な調性音楽末期の耽美的音楽でもない。新古典主義風の響き+α。そのあたりの塩梅がヒンデミットの面白さであり、この曲のポピュラリティの理由かもしれない。いずれの曲も全体で十数分でいくつかの楽章からなっている。バロックの組曲を思わせるものや独奏楽器主体の協奏曲風のものなど、形式は多彩だ。リズムの規則、フレーズの歌い方などは古典音楽のそれをそのまま引き継ぎながら、響きの上では20世紀を感じることができる。そして他の多くの音楽もそうだが、この曲は実際に演奏する側に回ると更にエキサイティングだろう。ぼくが弾ける楽器がクラシックギターしかないが、どこかのパートをギターに書き換えて参加したいほどだ。


第1番。ごく最近アップされたばかりの演奏動画
1.非常に速く
2.適度に速く演奏部分、リズムは厳格に守って
3.四重奏的に非常にゆっくり、そして表情をつけて
4.フィナーレ:1921-その他、活き活きと



オルガン入りの第7番。
1.あまり速すぎずに
2.きわめてゆっくりそして非常に安らけく
3.第2楽章は標示なし



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ハインリッヒ・コル(Va)「The Art of The Viola 」



コロナ禍も一旦小休止。気候も良くなり、仕事なんぞしている場合か!と言いたいところだが、不覚にも業務ひっ迫。納期マジでやばいぞ!と自問しつつ本日も業務に精励。ブラックにならないうちに退勤となった。帰宅後ひと息入れ、さて今夜はこんな盤を取り出した。


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ウィーンフィルの元首席ヴィオラ奏者ハイリヒ・コル(1951-)がソロをとったナクソス盤。曲に従って何人かのメンバーがジョイントしていて、ピアノには日本人の乾まどかが入っている。2004年ウィーン録音。収録曲は以下の通り。

・ヒンデミット:ヴィオラ・ソナタ 作品11-4
・ベートーベン:ヴィオラとチェロのための二重奏曲「2つのオブリガート眼鏡付き」変ホ長調 WoO.32
・シューマン:おとぎ話 作品132から
・ヘンデル(ハルヴォルセン編):ヴァイオリンとヴィオラのための「パッサカリア」
・ブリテン:ラクリメ 作品48

このナクソス盤、ヴィオラの魅力を伝えるのに相応しい曲が揃っているが、中でもヒンデミットがいい。ヒンデミットは自身が優れたヴィオラ奏者でもあったことから、ヴィオラのためソロ作品としてソナタを3曲と無伴奏ソナタを4曲残している。このヘ長調のソナタもその中の1曲で、後期ロマン派にドイツ近現代的手法が加味されたヒンデミットらしい作風。穏やかなロマンティシズムをベースに美しい旋律と和声にあふれる。シューマンはヴィオラ、クラリネットとピアノのためのオリジナル作品でロマン派歌曲を聴く趣きの美しい小品だ。

ヴァイオリン族の中でヴィオラはどうも不遇な地位にあるようだが、どうして、その音色は魅力的だ。ヴァイオリンが何事も訴えたがる若い女性(当世、不適切発言か)、チェロは逞しいようでその実ややスノッブでナルシストな男とすれば、ヴィオラは男にせよ女にせよ万事に控え目で分別ある大人の味わいだ。


手持ちの盤からアップした。ヒンデミットのソナタ


同 シューマン「おとぎ話」作品132



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セゴビア・コレクション第2集「協奏曲集・スペインの城」



少し前に記事にした80年代終盤に当時のワーナーパイオニアからリリースされたセゴビア・コレクション。先日聴いた第1集をきっかけに、あらためて全17巻を聴くことにした。きょうは順番に従い、その第2集を取り出した。


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この盤のライナーノーツで故濱田慈郎氏がセゴビアの死去(1987年6月)について触れている。この盤のリリースが1987年か1988年だったから直前のことだったのだろう。濱田氏の記述の中でセゴビアが若い頃に生涯の目標と定めた四つの事柄が記されている。

一に、ギターを大衆的な民族楽器のランクから引き上げ、クラシックの楽器として通用させること。
二に、世界中のいろいろな作曲家に新しいギターのレパートリーを作曲してもらい、このジャンルを豊かにすること。
三に、セゴビア自身の演奏を通じ、なるべく広い範囲の人びとからギターの美を認めてもらうこと。
四に、世界の主要音楽学校にギター科を設置させること。

これらの目標は今日振り返ってみると、セゴビア94年間(1893-1987)の生涯にほぼ達成され、自分の目で確かめることができたと言える。この盤では特に二つめの目標の成果として、以下の収録曲通り、19世紀古典期のマウロ・ジュリアーニ以来途絶えていた管弦楽との協奏という大きなジャンルを開花させた作品が収められている。オケのシンフォニー・オブ・ジ・エアはトスカニーニ亡きあとの元NBC響。指揮のエンリケ・ホルダ(1911-1996)は50年代にサンフランシスコ響の音楽監督も務めていて、この盤の録音と同時期に「ある貴紳のための幻想曲」の初演をセゴビアと共に行っている。

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ロドリーゴ:ある貴紳のための幻想曲*(1958年5月NY録音)
 1.ビリャーノとリチュルカーレ/2.エスパニョレータ~ナポリ騎兵団のファンファーレ/3.たいまつの踊り/4.カナリオ
M・ポンセ:南の協奏曲*(1958年5月NY録音)
 1.アレグロ・モデラート/2.アンダンテ/3.アレグロ・モデラート・エ・フェスティーヴォ
モレーノ・トローバ:スペインの城(1969年12月スペイン録音)
 1.トゥレガノ(山歌)/2.トリーハ(悲歌)/3.マンサナーレス・エル・レアール(美しい乙女に)/4.モンテマヨール(静思)/
 5.アルカニス(祝祭)/6.シグエンサ(王女は眠る)/7.アルバ・デ・トルメス(吟遊詩人の歌)/8.セゴビアの王城(召集)
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*エンリケ・ホルダ指揮シンフォニー・オブ・ジ・エアー


さきほどからマヌエル・ポンセ作曲「南の協奏曲」を聴いている。
マヌエル・ポンセ(1882-1948)はメキシコ近代音楽の父といわれ、多くの作品を残した。とりわけギター音楽に関しては1920年代以降セゴビアとの交流の中から、現在もギタリストにとって重要なプログラムになっているいくつかの曲を残した。「南のソナチネ」や擬バロック形式の組曲などはその代表的なものだ。そのポンセが書いたギター協奏曲「南の協奏曲:Concierto del Sur」は1941年セゴビアに献呈され、同年セゴビアの独奏、ポンセ自身の指揮で初演された。

ポンセの楽曲は総じて新古典主義の作風をとる。この曲も定石通り急緩急の3つの楽章から成り、全編を通して古典様式に近代的和声を散りばめ、感興と機知に富む。ギター特有のラスゲアード奏法(弦をかき鳴らす奏法)や、明確なリズムの刻みなどに、ギターの故郷としてのスペイン情緒も盛り込まれている。特に両端楽章にその傾向が顕著で、フランス仕込みの色彩的なオーケストレーションと相まって華やかなフレーズが続く。

録音当時65歳のセゴビアはまだまだ技巧の切れもよく、初演者の自信を感じさせる弾きっぷりで、この曲の楽しさを十分伝えてくれる。録音はセゴビアのソロがオンマイクでほとんどエコーなしで録られ、バックのシンフォニー・オブ・ジ・エアのオケパートはかなり残響豊かで、パートごとに遠近感を感じさせるなど、まずまず満足できる水準。数少ないギターのための協奏曲、中でも20世紀以降の作品としてはロドリーゴの「アランフェス協奏曲」が図抜けて有名だが、テデスコの協奏曲と並び、このポンセの曲も近現代を代表するギター協奏曲として貴重な作品だ。


この盤の音源。ポンセ「南の協奏曲」YouTubeにいくつかアップされているこの曲の音源のうち、この音源が手持ちのCDにもっとも近い音質だ。



同 モレーノ・トローバ「スペインの城」全8曲



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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