A・ビルスマ(Vc)ヴィヴァルディ・チェロソナタ集
今週前半は冬の寒さだったが、ようやく寒気も抜け、気温上昇。穏やかな日和となった。さて、二月最後の週末土曜日。昼前に野暮用一つこなした他はこれといったこともなく、ボーッとした一日。昼下がりになってアンプの灯を入れ、こんな盤を取り出した。

アンナー・ビルスマ(1934-2019)の弾くヴィヴァルディのチェロソナタ集。手元にはジャンドロン盤、トルトゥリエ盤などがあるが、このビルスマ盤はそれらとは演奏コンセプト、内容ともに一線を画す。収録曲はチェロソナタの第1番から第6番。 アンナー・ビルスマ(Vc)、アンドレーア・マルコン(Cemb&Org)、アレッサンドロ・ズブロジョ(ヴィオローネ)、フランチェスコ・ガッリジョーニ (通奏低音Vc)、イヴァーノ・ザネンギ(アーチリュート)
こうしてみるとまず通奏低音の多彩さに目がいく。この盤では曲によって通奏低音を受け持つ楽器を変えている。もっともシンプルなのはチェロとチェンバロによるもの。第2番、第5番がこの形式によっている。次にこれら二つにアーチリュートが加わるもの。第3番、第4番がこれにあたる。残りの第1番、第6番はさらにヴィオローネが加わり、同時にチェンバロがオルガンに変る。曲に応じた通奏低音楽器の変更は、様々な資料や演奏効果を検討した上で決めたものを思うが、このこと自体がこの盤の演奏のコンセプトを物語っている。
チェロソナタと聞けば、主役は独奏チェロ。通奏低音は伴奏あるいは添え物程度と考えがちだ。実際かつての録音の多くも通奏低音が、添え物とは言わないまでも、チェロがど真ん中の主役であることを主張する演奏がほとんどだったろう。この盤はそこの成り立ちが違う。ビルスマのチェロはもちろん主役には違いないが、決して主役に視線を集めるような演奏、音作りにはなっていない。多彩な編成の通奏低音が、その名の通り曲のベースを形作り、響きのイメージを決めている。どの編成の通奏低音も柔らかく豊かな響き。まるで上質の羽毛布団のようなその響きに上で、ビルスマのチェロが軽やかに、よく調和して歌う。ピッチが現代の標準に比べると半音ほど低く、415Hz付近にとっていることも大きく影響しているだろう。その結果、ビルスマ・オンステージではなく、このメンバー全員によるヴィヴァルディ時代の空気感の再現…。そんなイメージを聴かせてくれる。
よくピリオドアプローチというが、楽器の音色と物理的な曲の解釈にばかりに関心がいきがちだ。この演奏のように、まだ見ぬ、あるいは想像の先にある、かつての時代の雰囲気を伝えてくれてこそのピリオドアプローチではないかと思うが、どうだろう。
この盤の音源で第4番変ロ長調
第5番。第1楽章は独奏チェロと通奏低音(チェロ)の二重奏のように書かれている。
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