朝晩の多少の冷え込みはあるものの、日中はすっかり暖かくなった。コートも薄手に春物に替え、首元もリネンの軽い巻物という出勤コーデ。きょうも程々に働いて一日が終わった。さて、今夜はメインのオーディオセットに灯を入れ、こんな盤を取り出した。 ハイドン、フンメル、ベッリーニといった古典派作曲家の手になるオーボエ協奏曲集。ドイツ・シャルプラッテン原盤。1980年代初頭、東独勢による演奏。度々来日もしているブルクハルト・グレッツナーというオーボエ吹きがソロを取り、ライプツィッヒ放送室内楽団が伴奏を付けている。 曲はいずれも1800年を挟んだ古典派全盛期の作品。ハイドンのハ長調の協奏曲はハイドン作かどうか真偽のほどが定かでないらしいが、3楽章構成で20数分を超える堂々とした協奏曲。オーボエのテクニカルな見せ所もたっぷりで充実した作品だ。フンメルの曲はコンチェルトという表記はなく「序奏・主題と変奏」と題されている。ヘ短調で始まる序奏が中々意味深く、聴かせる。ベッリーニの短い協奏曲は、協奏曲というよりこの作曲家得意のイタリア古典期オペラのアリアを聴く風情だ。 オーボエ協奏曲というと古典派ではモーツァルトのハ長調。時代下ってリヒャルト・シュトラウスの協奏曲あたりしか一般的には演奏されないように思う。しかし、最も古い歴史をもつ楽器の一つであつオーボエ。管弦楽作品ではしばしば魅力的なソロを聴かせるこの楽器による貴重な協奏曲集だ。 ハイドンのハ長調の協奏曲。VIDEO ベッリーニのオーボエ協奏曲変ホ長調。美しいイタリア古典オペラ風のアリアだ。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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週明け月曜日。本日も業務に精励。今年度末の業務案件も片付き、新年度に向けた準備など少々。そしてホワイトデイ…一切関係なく帰宅。ひと息ついて、今夜はこんな盤を取り出した。 「ノルウェイ・ヴァイオリン名曲集」と題されたNAXOSの一枚。1997年録音。NAXOS専属の録音専門オケ:ラズモフスキー交響楽団による演奏。ビャルテ・エンゲストという指揮者が振り、ヘンニング・クラッゲルードという1973年ノルウェイ生まれのヴァオリニストがソロを弾いている。タイトル通りノルウェイの作曲家、それもブル、シンディング、スヴェンセン、ハルヴォルセンといった、グリーグほどの知名度を持たない作曲家の作品が収められている。主な収録曲は以下の通り。 オーレ・ブル:羊飼いの少女たちの日曜日。憂うつ。協奏曲ホ短調からアダージョ。 クリスティアン・シンディング:古風な様式の組曲 Op. 10 スヴェンセン:ロマンス ト長調。 ハルヴォルセン:ノルウェイ舞曲第1番、第2番。乙女の歌。老漁師の歌。結婚行進曲他 グリーグ:2つの悲しい旋律。君を愛す。 何ともロマンティックで美しいメロディーの曲を集めたものだと感心する。グリーグの抒情小曲集などに親しんでいる向きには、その路線といったらわかりやすいだろうか。ロマンティクというヨーロッパの歴史に深く根ざした概念など、ぼくはとんと理解していないのだが、つたない理解で言葉を当たるなら、ノスタルジックあるいはメランコリーといった方が相応しいかもしれない。いずれの曲も穏やかでゆるやかなメロディー、心地よいが単純ではない和声、控え目なダイナミズムに彩られ、限りなく美しい。こちらの心中が満たされているときに聴けば、幸せが倍増するだろうし、反対に憂いを抱えているときに聴くと少々あやうくなるかもしれない。知名度の高いグリーグの曲も2曲入っていて、さすがに一層際立った美しさだ。 オーレ・ブル(1810-1880)はパガニーニやリストとも親交があったヴァイオリンのヴィルティオーゾとしても知られ、当時の名声も作曲家としてよりはヴァオリニストとして確立された由。残された曲はそう多くはないが、ここに収められている元は歌曲の「羊飼いの少女たちの日曜日」はよく演奏されるようだ。ヴァイオリン協奏曲ホ短調は同じNAXOSに全曲盤があり、手元にあるのでまた聴いてみよう。 オーレ・ブル「羊飼いの少女の日曜日」オリジナル歌曲の歌詞を知らないが、このYouTubeに添えられた絵を見ていると、ノルウェイの片田舎の村から出ることなく日々の労働と食事とわずかな休息だけを繰り返していたであろう少女に思い巡らし、胸が苦しくなる。VIDEO この盤にも入っているよく知られたグリーグ「君を愛す」。チェロで弾くと一層深く美しい。VIDEO スヴェンセン:ロマンスト長調VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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週末土曜日。昼過ぎまでアレコレバタバタと過ごす。夕方近くになって一服。陽気にも誘われ、ゆるめのジャスをと思い、先回の記事に書いたアルベルト・ポンセの盤のモナリザのジャケットで思い出し、久々にこの盤を取り出した。 平賀マリカが歌うナット・キング・コールへのトリビュート盤「Mona Lisa」。お馴染みの軽快でポップなスウィングチューンが並ぶ。2011年リリース。収録曲は以下の通り。バックを固める面々はこちらを参照 。 1.MONA SALA 2.ALMOST LIKE BEING IN LOVE 3.I LOVE YOU SENTIMENTAL REASONS 4.IT'S ONLY A PEPER MOON 5.L-O-V-E 6.STARDUST 7.ROUTE 66 8.CANDY 9.SMILE 10.FLY ME TO THE MOON 11.UNFORGETTABLE 12.FAR CALL この盤、中々の意欲作だ。というのも、軽く歌えばいくらでも軽くポップに歌えるナット・キング・コールの曲を、最小限のインスト伴奏をバックに直球勝負で歌っている。録音もノンエコーのオンマイク。ギター1本の伴奏で歌うナンバーなどはほとんどアカペラに近い。こういう録り方は歌い手の力量がそのままごまかしなく出る。事実彼女の歌も危ういところがないと言えば嘘になる。しかし、そういうリスクをあえて冒しながらも、こうしたアレンジと編成をとった彼女やスタッフの意気込みに拍手を送りたい。相変わらずクリアーな声で、ドラムレスのシンプルかつ軽みのあるバックにその声がよく乗る。群馬弁ネイティブのぼくはよく分からないが、英語の発音も聞き易く無理がない。軽快にスウィングするAlmost Like Being in LoveやRout66、スローのMonaLisa…いずれも耳に心地よく、ジャズファンならずとも広くポップスファンにも楽しめるだろう。 世にナット・キング・コールへのトリビュート盤は多い。手元にも、ダイアナ・クラールの盤と我らがジャパン代表美空ひばりが原信夫とシャープス・アンド・フラッツと入れたLP盤(2006年に重量盤で復刻されたもの)もある。これらもいずれ取り上げよう。 手持ちの盤からアップ。「Almost Like Being in Love」VIDEO 同 「MonaLisa」VIDEO 同 「Route 66」VIDEO このアルバムの最後に入っているFarCallを歌っているPVがあったの貼っておく。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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週半ばの木曜日。年度末納期の案件に何とか目途がつき休心。少し早めに仕事を切り上げ帰宅した。ひと息ついて今夜はギター。こんな盤を取り出した。 フランスのギタリスト:アルベルト・ポンセの「Sourire de la Guitare」と題された一枚。「モナリザの微笑」ならぬ「ギターの微笑」。 ポンセ(1935-)は演奏家としてよりは指導者としての印象の方が強いだ。パリ・エコールノルマル音楽院の教授を務め、ローラン・ディアンスをはじめ、福田進一、村治佳織などパリで学んだギタリストの多くはポンセに教えを受けている。取り出した盤は二十年近く前にネットで箱買いしたLPの中に入っていたもの。1976年仏ARIONレーベル。ポンセはLP時代に何枚かアルバムを出していた ようだが、今となっては少し珍しいものかもしれない。収録曲 はA面にリョベートやプジョール、B面にはピポー、デ・ラ・マーサ、ブロウエル、ヴィラ・ロボス、セルヴァンテス、カルレヴァーロの作品が入っている。A面冒頭のリョベート;スケルツォ・ワルツから切れのいい技巧と抜群のリズム感、そして流れるような曲の運びだ。プジョールの小品(Cubana,Tonadilla,Tago,Villanesca,Scottish mandrileno)も美しいメロディーを趣味のいい歌い口で聴かせる。ピポーの歌と踊り第1番もあっさりとした軽みのある演奏、デ・ラ・マーサのハバネラやヴィラ・ロボスのショーロもラテン演歌調にならず趣味がいい。 この盤は総じてラテン系のメロディアスな曲が収められているが、こうしてポンセの演奏で聴くと、ラテンという言葉からイメージするイタリアやスペイン、中南米系の系譜ではなく、『ラテンの雄;フランスの薫りかくや』と思わせる。強烈なタッチやヴィブラートとルバートで押してくるようなラテン系譜とはかけ離れていて、リズムやアーティキュレーションの切れがよく、歌い方も粘らず実に趣味がいい。久々に聴いたが、いいアルバムだ。 1973年の映像。バッハ無伴奏チェロ第3番のジーグ。 VIDEO 同 トゥリーナのソナタからVIDEO 同 ビウエラを弾くポンセVIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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ひな祭りが終わり、遅かった春一番も吹き、日足ものび…ようやく春到来を実感する頃になった。週明けから年度末業務に精出し、きょうは火曜日。今夜はジャズ。こんな盤を取り出した。 サラ・ヴォーン(1924-1990)が活動後期、パブロレーベルに移ってから残した傑作アルバムの一つ「Crazy And Mixed Up」。この当時コンビを組むことが多かったギターのジョー・パスに加え、ローランド・ハナのピアノ、アンディ・シンプキンスのベース、ハロルド・ジョーンズのドラムが加わり、円熟のヴォーカルを聴かせてくれる。1982年録音。収録曲は以下の通り。 1. I Didn't Know What Time It Was 2. That's All 3. Autumn Leaves 4. Love Dance 5. The Island 6. Seasons 7. In Love Vain 8. You Are Too Beautiful 1曲目の「I Didn't Know What Time It Was」。マイナー・キーの循環コードにのって軽くスィングするサラのヴォーカルは夜更けて聴くにはベストチューンだ。タイトル曲の第3曲「枯葉」でのまさに火の出るようなスキャットは圧巻。ジョー・パスのギターもよどみないフレーズを繰り出して、夜更けのセッションは大いに盛り上がる。初めて聴いたとき「枯葉」のテーマはいずこへ?と思ったが、テーマなしでインプロヴィゼーションに突入する意表を突く演出で驚いた。 情感たっぷりに語りかけるスローバラードを2曲はさんだあと、この盤のピアノを受け持つローランド・ハナ自身の作曲によるSeasonsでは一転して伸びやかに明るく歌い上げる。終曲You are too beautifulでは広い音域に渡って張りとボリュームのある声、そしてよくコントロールされてヴィブラートと、サラ・ヴォーンならでは歌唱が楽しめる。50年代のサラはもちろん素晴らしいが、80年代晩年の彼女も実に味わい深い。 この盤の音源。「I Didn't Know What Time It Was」VIDEO 同 「枯葉」VIDEO 同 「You Are Too Beautiful」VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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三月最初の週末日曜日。所用あって昼前から外出し、夕方近くに帰宅した。北関東自動車道と東北自動車道を1時間ほど走ったが、道中見える景色はまだ冬枯れだが、どことはなし春らしい空気を感じる。 帰宅後一服。少し時間があったのでアンプの灯を入れ、先日のドヴォルザークの続きでこんな盤を取り出した。 ヴァーツラフ・ノイマン(1920-1995)がチェコフィルを振って1985年に録音したドヴォルザークのスラブ舞曲集。日本コロンビアの廉価盤シリーズCREST1000の中の一枚で、同曲の第1集と第2集がすべて収められている。 70年代半ばから80年代初頭にかけて、ノイマン&チェコフィルは日本で大そう人気を博した。ドヴォルザークの8番や9番のレコードはベストセラーになったし、ノイマンも度々来日していた。美しい指揮ぶりは今でも目に焼きついている。一方で玄人筋には少々辛口の評を受けることが多かったノイマンとこの時期のチェコフィルだが、現代的で颯爽としたところと、お国物としての共感あふれる演奏はこの盤でも十分楽しめる。 ドヴォルザークのスラブ舞曲について解説する必要もないだろうが、お馴染みのブラームス「ハンガリー舞曲集」と常に対比あるいは並べて論じられることが多い。ボヘミア起源の民族的なリズムやメロディー、形式を素材にしているわけだが、このスラブ舞曲には各曲に舞曲名が付され、それもフリアント、ドゥムカ、ポルカに始まり、更にポーランド起源のマズルカやポロネーズにまで及ぶ。いまこうして聴くとブラームスのハンガリー舞曲集よりも多彩で、より深みをもつ音楽に仕上がっているように感じる。 CDプレイヤーに盤をセットして再生ボタンを押すと第1曲ハ長調フリアントのリズムが立ち上がる。<2+2+2+3+3>の変則的なリズムが躍動感をいっそう際立たせる舞曲だ。ノイマン&チェコフィルの演奏はお国物だけに郷愁たっぷりに歌い抜くかと思いきや、意外にもテンポは速めの設定で進む。フリアントの中間部もあまりテンポを落とさない。あくまで舞曲としての扱いだ。そういえば隣り町のマンドリン楽団で以前、パイレーツ・オブ・カリビアンのテーマを取り上げた際、合奏練習で2拍子系と3拍子系の複合するリズムの処理に手を焼いていたことがあった。ぼく自身は即座にこのスラブ舞曲のフリアントのリズムを感じて難なく演奏することが出来たことを思い出す。第2曲のホ短調のドゥムカ、第3曲のポルカ、第4曲のソウセツカーと、愛らしく曲が続く。第2集ではボヘミアのリズムに加えポーランド系の舞曲も入り、より多彩に楽しめる。よく知られた第2番(通し番号では10番)ホ短調はやはり取り分け美しい。 チェコフィルの音色は、60年代のアンチェル時代にはまだ残っていた独特の金管のヴィブラートや弦楽群の際立った音色感はやや後退し、悪く言えばやや没個性で平凡、よく言えば現代的で普遍的な音だ。すでにデジタル録音の技術もこなれていた時期でバランスも良好だ。 この盤の音源。第1集・第1曲ハ長調 フリアントVIDEO 同 第2集の第8番変イ長調 ソウセツカーVIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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今週は納期切迫の年度末案件の対応で程々に汗をかいた。まだ予断を許さない状況だが、何とかなりそうかな…という程度の見通しもついて、ひとまず休心。きょう週末金曜日は幾分か気分も軽く帰宅した。さて、ネクタイもといベルトを緩めてひと息つき、こんな盤を取り出した。 近代英国の作曲家ウィリアム・ウォルトン(1902-1983)のチェロ協奏曲。例のトルトゥリエ・ボックスセット20枚組中の8枚目。この盤にはイギリス物の名曲、エルガーとウォルトンの協奏曲そしてディーリアスのドッペル(ヴァイオリンとチェロのための協奏曲)が収録されている。ウォルトンの協奏曲は1973年の録音。もちろんトルトゥリエのソロ、そしてパーヴォ・ベルグルンド指揮ボーンマス交響楽団がバックを務める。 20世紀の音楽。それも昭和でいえば昭和30年代初頭の作品。第1楽章は穏やかなモデラートのテンポにのって長調とも短調とも確定せず、そして不安と安息のはざ間を行き来するようにチェロが歌う。現代的な抒情にあふれる旋律といったら適当だろうか。第2楽章はテンポを上げたスケルツォ。緊張度の高い曲想が続く。独奏チェロの難易度は相当高そうだということがCDを聴いているだけで分かる。打楽器やハープも活躍するオーケストレーションも巧みで緊張と推進力に満ちていて素晴らしい効果を上げている。終楽章は変奏曲形式。冒頭チェロの息の長いフレーズで主題が奏される。ここでもヴィブラフォン、シロフォン、チェレスタ、ハープなどの響きに彩られたオケパートの響きが美しい。 トルトゥリエのチェロはこうした曲にはピタリだ。技巧的により完璧な弾き手はいるだろうが、ややひんやりとした感触ながら深い抒情をたたえた旋律を美しく歌うことについていえば、トルトゥリエの弾きぶりは文句なし。英国風の中庸をいく20世紀現代音楽の響きを堪能できる名曲名演だ。 この盤の音源。抒情的な第1楽章VIDEO ローラ・ヴァン・デル・ハイデンというイギリスの若いチェリストのよる演奏。第1楽章VIDEO この曲の初演者ピアティゴルスキーによる演奏。全3楽章 1957年とあるので、英国初演時あるいはその前後のものと思いわれる。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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