マタチッチ&NHK交響楽団 ワグナー管弦楽曲集
この春から公私ともに少々慌ただしい。細かな雑事がちょこちょこあって、一つ一つは大した用件でもないが、妙に負担に感じる。これも加齢のなせる業か…嗚呼。 さて週末金曜日。音盤棚を見回していたらこの盤と目が合ったので取り出した。

ロヴロ・フォン・マタチッチ(1899-1985)とNHK交響楽団によるワグナー管弦楽曲集。1968年9月新宿厚生年金会館でのセッション録音。手持ちの盤は90年代初頭に出ていた廉価盤シリーズの1枚。 ぼくら前後の世代にとって、マタチッチとN響は懐かしく親しみを感じる存在だ。マタチッチの真価は60年代来日時のイタリアオペラ公演だという向きも多いが、その頃はまだハナタレ小僧だったぼくには馴染みがない。やはり70年代中ば、そして最後の来日となった84年の来演が記憶に残る。84年の来日は、これが最後となるだろうと皆が心の中で思いながら、コンサートであるいはテレビで聴き入った。
このワグナーアルバムはそれより少し前の時代のもの。マタチッチもまだ70歳になったばかり。そしてN響も若かった。厳しい欧州メディアなどはN響を指して学生オケレベルと評したこともある時代だ。 しかしここに聴くマタチッチ&N響のゴツゴツした肌触りと骨っぽさ、そして真摯な姿勢は、もう今は聴けないのではあるまいか。70年代のN響はこんな音だったなあと思い返す。マタチッチの指示だろうが、すべての音は太く強くエッジが立っている。そして残響の乏しい当時の日本のホールがその音を際立たせる。ブレンドされた柔らかな響き、切れ目なく美しくつながるフレーズ、そういったものとは無縁の演奏だ。そしてかつてのクナや後年のチェリのように曲が進むごとにテンポを落として巨大な造形を作り上げるという手法ではなく、マタッチは速めのインテンポと骨格の太さで音楽のスケール感を築く。そんなゴツゴツした感触だからこそ、時折り緩徐部で見せる歌いっぷりにグッときてしまうのだ。
この盤の音源。手持ちの盤からアップ。マイスタージンガー第一幕前奏曲
同 タンホイザー序曲
最後の来日となった1984年の演奏。ベートーヴェン交響曲第7番第1楽章。マタチッチは晩年になってもテンポが落ちなかった。
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