シェリングとヴァルヒャのバッハ



三連休最終日。日中少々野暮用こなし、昼過ぎには渋茶で一服。音楽も渋めのこんな盤を取り出した。


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バッハ「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタBWV 1014-1019」。先日の記事でベートーヴェンを聴いたヘンリク・シェリング(1918-1988)のヴァイオリン、ヘルムート・ヴァルヒャ(1907-1991)のチェンバロ。1969年録音。十数年前、廉価盤でリリースされた際に買い求めた。ぼくは決して熱心なバッハ愛好家ではないが、この盤は年に一度はプレイヤーにセットする。

この作品は以降の時代の独奏楽器と鍵盤楽器伴奏という形式の器楽ソナタの範になったとされる。実際チェンバロパートには、同じバッハの「フルートとチェンバロのためのソナタ」同様、当時一般的だった通奏低音の役割を超えた独立した声部やフレーズが与えられ、ヴァイオリンパートと一体的に音楽を構成する。一方独奏ヴァイオリンは単独で自己主張することが少なく少々地味な印象すらあり、より人気の高い無伴奏の作品が一つの楽器で表現の限りを尽くすがごとく広い音域と多彩な技巧を凝らしているのとは対照的だ。

この演奏を聴いて印象的なのはシェリングの独奏ヴァイオリンではなく、バッハの求道者として有名なヴァルヒャの弾くチェンバロパートだ。全6曲いずれも生真面目を通り越し、いささかぶっきら棒と感じるほどの弾きぶりといったらいいだろうか。拍節感は厳格でありながら、厳しさというよりは素朴さを感じ、フレーズの入りや出も持って回ったようなところは皆無だ。彼の繰り出す音楽からは、16歳で失明しながらバッハ鍵盤作品をすべて暗譜し、二度に渡ってオルガン作品の全曲録音を果たしたという彼の求道的な姿勢と飾らない音楽世界が聴こえてくる。もちろんヴァルヒャの真髄はオルガン演奏だろうが、こうした合わせ物(確かこの録音が唯一)のチェンバロにおいても彼の音楽への姿勢は十分に感じ取れる。

そんなヴァルヒャに呼応してか、シェリングのヴァイオリンも音価を短めに切り詰め、決して歌い過ぎずに内省的に弾き進めていく。マタイ受難曲の有名なアリア<神よ、憐れみたまえ>を冒頭に配した第4番ハ短調BWV1017など、美音を駆使してもっとメロディアスに歌うことは容易であったろうが、そうしない見識も立派。昨今のオリジナル志向、ピリオドアプローチからはかけ離れた演奏だが、一時代を象徴する名盤だ。


この盤の音源。第1番ロ短調


同 第3番ホ長調


メニューインとグールドによる第4番ハ短調。第1曲シチリアーノはマタイ受難曲中の名アリア<憐れみたまえ>につながる。



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