セゴビア・コレクション第5集「テデスコ作品集」
80年代後半バブル景気の功罪は今でもしばしば回顧される。三十数年前のことになるが、ぼくら世代にとってはついこの間の出来事だ。製造メーカーの地味な技術者として地方で生活していたぼくには、功も罪もほとんど無関係だったが、こと道楽の音楽に関しては今に至るまで残された功の方が多いように感じる。

そんなバブル期が残した功の一つ、80年代終わりに当時のワーナーパイオニアからリリースされたセゴビア・コレクション全16巻。きょうはその中の第5集「テデスコ作品集」を取り出した。タイトル通り、近代イタリアの作曲家にしてセゴビアとの交流から貴重な20世紀のギター曲を残したカステルヌオーヴォ=テデスコ(1895-1968)の作品からギター五重奏曲と「プラテロとわたし」(抜粋)が収められている。
今夜はそのうちギター五重奏曲に選んでプレイボタンを押した。1956年モノラル録音。弦楽はこの盤以外では名前を見たことのないキジアーノ弦楽四重奏団。濱田滋郎氏の解説によれば、1950年頃セゴビアがLAのミュージク・ギルド・オブ・ロサンジェルスの演奏会に室内楽奏者として出演交渉を受けた際、「テデスコが室内楽作品を書き下ろしてくれたなら」との条件付で承諾、テデスコがそれに応えてこの曲を書き上げたという経緯があるようだ。
全4楽章の充実した室内楽作品。近代的ながら親しみやすい新古典主義的な響きをベースに、民族的要素も組み入れ飽きさせない。前半二つの楽章が特に充実しているだろうか。ソナタ形式の第1楽章は二つの主題とも印象的で美しい。第2主題はふとボロディンの四重奏曲を思わせる。第2楽章は<ゆっくりと悲しげに>という指定に従い、ヴィオラの美しくも物憂げな旋律で始まる。ほどなくギターが入ってくるが、その裏でヴァイオリンが効果的な副旋律を付けていく。ギター入りの室内楽として、ギターと弦楽部のバランスがとてもよく、ギターパートの技巧披露だけという曲にはなっていない。おそらくギターパートを他の楽器に置き換えても聴き映えのする曲になるだろう。1956年録音ということだから、セゴビアはハウザー1世を弾いていた時期だろうか。モノラルながらクリアに録られていて、一聴して往時のセゴビアトーンと分かる。
この盤の音源。テデスコのギター五重奏曲第1楽章。
セゴビア・コレクション全16巻のうちこれまで取り上げたものは以下の通り。
第1集「バッハ作品集」
第2集「協奏曲集・スペインの城」
第3集「ポンセ・ソナタ集」
第4集「ポンセ作品集」
第5集-本記事-
第7集「タンスマン・ドビュッシー・ルーセル作品集」
第8集「ソル・ジュリアーニ:作品集」
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