江崎ギター工房へ



7月末の某日。ギターを担いで浜松の江崎ギター工房まで行ってきた。
少し前に手に入れた40年前のヤマハ製ギターGC-30B本家アグアドと瓜二つのその音が気に入り、このところ毎日のように取り出して弾いていたのだが、素人目には特に不具合はないようにみえるものの、いくつかの音でデッド、ピークが感じられ、もしかするとブレーシングの緩み等も考えられるかなと思い、生みの親である江崎氏にみてもらおうと思い立った。以前も書いた通り、この楽器の当時の製作担当で、2007年にヤマハ退職後は個人製作家として活躍しているのが他ならぬ江崎秀行氏。江崎氏の自宅兼工房は浜松市中心部から少し離れた住宅地にある。


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普段と同じ時間に家を出て、東京発9時過ぎのひかりに乗車。浜松までは1時間半。浜松は仕事で過去数回訪れて以来、十数年ぶり。駅前周辺の様相はさすがの70万人都市だ。JR浜松駅に隣接する遠州鉄道に乗り継いで15分。江崎ギター工房最寄り駅「積志(せきし)」に到着。出迎えに来てくれた江崎氏の車に同乗し近くの餃子レストランへ。モヤシのせの浜松餃子を初体験。昼を少し回って浜松医大近くの工房へ到着した。

挨拶もそこそこに早速楽器をみてもらう。1980年製で相応のキズはあるし、前所有者は中々の弾き手だったのだろう、指板も全域に使い込んだ痕跡があるものの、ネックの状態やサドルのセッティングも良好。総じて状態は健全で修理の必要はないでしょうとのこと。何か気になることは?と聞かれ、高音弦の開放と1フレット押弦時の音色差が気になると告げると早速ナット溝をチェック。ヤスリを取り出し溝を調整。加えて経年による裏板のスレやくすみを磨いてきれいにしてくれた。

低音の出方に話が及ぶと、ウルフを測ってみましょうと、自作と思われる簡易治具を取り出した。小型スピーカーをアクチュエータとしてギターのサドル部分に取り付け、想定されるウルフトーン近くの周波数を送り込み、ギターが発する音のピークからウルフトーンの音程を探すというもの。簡素ながら理にかなった方法だ。持参したGC-30BはGとF#のちょうど中間付近にピークが出た。江崎氏はそれをみて「驚くほど低いですね」と言う。現在の江崎ギターの設定はG#とAの間に設定しているそうだ。昨今の多くのギター同様、低音と高音のバランスや音の立ち上がり等を勘案してウルフトーンを高めにとる設計思想のようだ。

ウルフトーン(胴共鳴の音程)を決めるファクターのうち大きな要素の一つが表板の厚さ。板厚を測るツールでGC-30Bを測ったところ2.0ミリ程度とかなり薄くことがわかり、これにも驚いていた。江崎氏がヤマハでGCシリーズを作っていた40年前の当時は、ウルフトーンや板厚の正確な測定手段もなく、現代のようにウルフトーンが楽器のキャラクターを支配するという考えもなかったそうだ。


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ギターの点検をしてもらっている間、試奏用として工房に常備している楽器も弾かせてもらった。弾いたのは80万円の2機種(表板が松と杉、横裏板は共にマダガスカルローズ)と35万円の1機種(表板:松、横裏板はインドローズ)。いずれも楽器のキャラクターは同じで、価格差ほどの大きな違いは感じなかった。上位機種の方が幾分低音の量感があり、全体的に響きが豊かだったように思う。試奏したのが響きの良いリビングで、いずれも気持ちよく弾けた。ヘッドデザインにわずかなデザイン違いがあることと、塗装が「セラックフィニッシュ」と「全セラック塗装」の違いがあるが、これもパッと見は分からない。「セラックフィニッシュ」は下地としてウレタン塗装をした上にセラックを塗る、「全セラック塗装」は最初から最後までセラック使用という違い。全セラックの方が塗装膜を薄く仕上げられるので、より自由に表板が振動する…というのがうたい文句のようだが、仔細に検分しないと分からない。いずれにしても、現代のモダンギターとして正統派の音と作りで、強烈な個性を売り物にする楽器ではない。全域で均一に鳴り、工作の信頼度も高い。長く使っていくには結局こういう楽器がいいのだろうなあと、あらためて感じた。

これまで断片的に見知ったヤマハ時代やスペインでの修行時代の話も、あらためて興味深く伺った。ヤマハを定年退職して15年だそうだ。現在はギター製作のほか、地元愛好家の集いの取りまとめ、ブロアマ問わずギター愛の醸成が自身のテーマと語っていた。あまり時間を取ってもと思い、工房滞在は2時間程。尽きぬ話を切り上げ礼をいい、再び積志駅まで送ってもらって工房をあとにした。


江崎ギターの紹介。ナレーションは江崎さんご自身ですか?と聞いたら、いやプロにお願いしましたとのこと。


モデルNo.35G(松、杉)による演奏



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音楽とクラシックギターに目覚めて幾年月。道楽人生成れの果てのお粗末。

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