バーンスタイン&VPOの「英雄」
ぐずついた空模様が続く関東地方。きょうも程々に仕事に精出し、いつもの時刻に帰宅した。
ひと息ついて…このところ通勤車中で聴いていた、この演奏を取り出した。

レナード・バーンスタイン(1918-1990)とウィーンフィルによるベートーヴェンの交響曲第3番変ホ長調「英雄」。同コンビによるベートーヴェン交響曲全集の中の一枚。手持ちの盤は8枚組LPのカートンボックス入りセット。90年代後半、御茶ノ水の中古レコード店で投げ売りされていたもの。
60年代後半のイッセルシュテットに始まり、ベーム(70年代初頭)、バーンスタイン(70年代後半)、アバド(80年代中庸)、ラトル(2002年)、ティーレマン(2008~2010)と、ウィーンフィルはこれまで何度か一人の指揮者によるベートーヴェンの交響曲全集を録音(ライヴ含む)している。熱心なクラシック愛好家は、自分が音楽にもっとも接した時期に応じて、いずれかの盤を愛聴しているに違いない。ぼくの場合は世代的にベームとバーンスタインということになる。
バーンスタインは50~60年代に多くのレパートリーを当時の手兵ニューヨークフィルと録音していたが、ぼく自身はあまり馴染みがなく、何となくアメリカ生まれの、ミュージカルも手がける器用な作曲家兼指揮者というイメージしかもっていなかった。そのためマーラーやチャイコフスキーの一部の録音を除く、ベートーヴェンやブラームスなどの独墺系楽曲にはほとんど接していなかった。実際、世評でもバーンスタインのベートーヴェンやブラームスを高く買われていたという記憶はない。そんなバーンスタインの評価が一変したのは、70年代以降、活躍の場を欧州に移し、とりわけウィーンフィルとの結びつきを深めてからだった。ウィーンフィルとの出会いによって欧州の伝統とバーンスタインの解釈とが融合した。その結果、ベートーヴェンやブラームス、シューマンなどの録音が世に出て、その演奏は以降も名盤として今日に引き継がれている。このベートーヴェン全集もその時期のバーンスタイン、そしてウィーンフィルを代表する盤となった。
中でもこの第3番「英雄」はバーンスタインとのロマンと情熱とを併せ持つ解釈とウィーンフィルの艶やかでありながら重量感もある特性とにより、素晴らしい演奏を展開している。バーンスタインは80年代以降の晩年になるとテンポが極端に遅くなった。粘着質の解釈と相まって、音楽の進行が鈍重になり、くどさを増す面が否めないが、この録音の頃はまだそれがない。音楽は第1楽章から雄渾に流れ、第2楽章では深い慟哭にむせぶ。終楽章では重量感を増しつつテンポを上げ、ややもするとダレだちになるこの楽章でも緊張感と情熱を持続して大団円を迎える。
この盤の音源。第1楽章
この録音と同時期の映像音源。ウィーンフィルを情熱的にドライブするバーンスタイン。第2楽章の山場、終盤26分00秒からのフーガでは一層感情移入を強める。26分41秒からのコントラバスの入りは、オケ奏者になるなら絶対コンバスだ!と思わせるひと節だ。27分14秒:高らかに咆哮するウィンナホルン。27分28秒:ティンパニの一撃。27分47秒辺りから短二度の響きで緊張感MAXとなり、28分07秒から続くスフォルツァンドで一気にカタルシスを迎える。
バーンスタイン先生による短いレクチャー
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