バースタイン&NYP マーラー交響曲第10番
週末三連休の日曜日。さすがに一時期の暑さはなくなり、もうすぐ秋本番だ。日頃から「やるやる詐欺」でごまかしていた家内野暮用を少々こなし、さて一服。アンプの灯を入れ、こんな盤を取り出した。

久しぶりのマーラー。バーンスタイン指揮ニューヨークフィルの演奏で第10番の交響曲を聴くことにした。バーンスタイン、そして彼のマーラー演奏についてはあれこれ紹介する必要もないだろう。1975年録音のこの盤は、彼のニューヨークフィルとの60年代から始まった最初の全集録音に、あとから付け加わる形で作られた。この盤ではA面に第10番、B面にはジャネット・ベーカーが歌う「亡き子をしのぶ歌」が入っていて、当時まだ残っていたSQ4チャンネル対応のカッティングがなされている。二十年近く前に、近所のリサイクルショップのジャンク箱で見つけた。ジャケットの隅に¥150のプライスタグが付いたままだ。
調性感の定まらない不安げなヴィオラのメロディーでこの曲は始まる。ひとしきりこの旋律が続いたあとヴァイオリンの主題が出て、ようやく音楽が動き出す。以後はこの主題を変奏する形で曲は進むが、マーラーの作品らしい濃厚なロマンチシズムと同時に、頻繁な転調やときおり調性感を失うような箇所も多く、ずっとその音楽に浸り切る安定はない。常に居所定まらない不安が付きまとう感じだ。マーラーが、自身の死がそう遠くないこと悟っていた時期の作品で、かつ5楽章の構想を描きながら絶筆に終わったこの曲は、残された二十数分間のこの第1楽章に象徴されている。もし5楽章が完成していたらどういった音楽になっていたかは、デリック・クックによって補筆された全曲版が有名だ。手元にサイモン・ラトルによるクック版もあるので、いずれ取り上げよう。
バーンスタインの指揮ぶりは、この曲に関しては意外にもあっさりと仕上げている印象だ。同じニューヨークフィルとの録音で聴かれる熱っぽい感情移入や、フレーズをことごとく粘り気味に歌い、重い足取りで進む特徴的な曲の運びは影をひそめている。ど素人が批評するような話ではないが、さすがにマーラー指揮者として第一人者だったバーンスタインだ。やはり楽曲の特性をよく心得ている。今更バーンスタインでもないだろうという声も聞こえてきそうだが、いやいやなんの。一時代成した貫禄のマーラーだ。
ウィーンフィルとのライヴ映像。1974年ウィーンコンツェルトハウス。
クレーメルと彼が率いるクレメラータ・バルティカによる弦楽合奏版の演奏。 例によって!マークが出るが、「YouTubeで見る」をクリックすればOK。
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