イェーツ編マティエカ・ソナタ集
週末金曜日。野暮用あっていつもより三時間ほど遅い帰宅。音盤を取り出す気力も時間もなく渋茶で一服。楽器を取り出すこともなく、この楽譜を眺めながらホッとひと息ついている。


先回の記事に書いたアーネスト・シャンド作品集と一緒に注文していた、同じスタンレイ・イェーツ編のマティエカ・ソナタ集。2017年刊。その名の通り、マティエカのソナタを名乗る以下の7曲が収められている。
ソナタ 作品16
ソナタ 作品17
大ソナタ1番
大ソナタ2番
交響曲形式によるアレグロ 作品20-21
「ハイドンによる」ソナタ 作品23
6つのソナタ 作品31
ヴェンチェル・トーマス・マティエカ(1773-1830)のソナタと言えば数年前、旧友Y氏がインターネット上のアーカイブ(ファクシミリ版)をまとめたソナタ集を私家版として作成し、プロ奏者を含む一部の愛好家に配布した。そのときY氏から、イェーツ編マティエカのソナタ集が正式に出版されるようだとの情報を得ていた。それが今回手に入れたこの曲集ということになる。
あらためてY氏の私家版を取り出してみたところ、収録曲はこのイェーツ版とまったく同じだった。もっとも編者のイェーツもソースはネット上のアーカイブのようで、同じ内容になるのも当然かもしれない。収録曲は同じだが、出版物として譜面は新しく編集され、必要な校訂もなされているので見やすいし、実用版としての価値は高いだろう。シャンド作品集同様この曲集でも、巻頭にはマティエカの紹介に始まり、マティエカが活躍した19世紀ウィーン古典派におけるギター作品の受容や、マティエカの作曲手法等が記されている。
「クラシックギター」という言葉の定義は何かという質問に対して、多くのギター愛好家から出る答えは一様ではない。一般のクラシック音楽のイメージ同様、一つの答えとして有力なのは「18~19世紀ウィーン古典派にルーツを見いだせるギター作品」でないか。その意味で、マティエカの作品は正にウィーン古典派ど真ん中と言える。マティエカはギター作品だけでなく、職業作曲家として宗教曲や室内楽作品も多く残した。ギターリスト兼ギター曲作曲家ではなかった。マティエカ特有のギター的技法や効果はあるものの、むしろ普遍的な古典様式の音楽をギターという楽器上で再現したと言える。
クラシックギターの演奏曲目は昨今、時代や地域、奏法など多種多様。間口が広いのは悪くないだろうが、いささかごった煮の感も否めない。そんな中、他のクラシック音楽の保守本流と同じ潮流を感じながら楽しめるマティエカの作品は実に貴重で、金にならなくてもいいアマチュア愛好家こそ、もっと弾くべし!と思ってしまう。 まあ、そう気負わず、ソナタ全曲でなく合間のメヌエットや下記のアーカイブにある小品からでも、往時のウィーン古典派の薫りは十分に感じ取れるだろう。
IMSLPのマティエカのページ
https://imslp.org/wiki/Category:Matiegka,_Wenzel_Thomas
この曲集の編者スタンレイ・イェーツ自身の演奏。作品23のロ短調のソナタ第1楽章。
大ソナタ第1番全3楽章の楽譜付き音源
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