中本マリ「アンフォゲッタブル」



月末納期の仕事も目途が立ち、休心。少し気をよくして帰宅した。さて12月半ばの週末金曜日。あすはこれといった用事もなく、今夜はリラックス。ついでにこんな盤を取り出した。


202212_Makamoto_Mari.jpg

202212_female_Jazz_Singers.jpg


中本マリのアルバム「アンフォゲッタブル」。
ぼくらの世代で思いつく70年代に活躍した日本の女性ジャズヴォーカルというと、笠井紀美子、伊藤君子そしてこの中本マリあたりだろうか。少し前の世代になるとマーサ三宅(古っ!)。もちろん江利チエミもペギー葉山もジャズシンガーのキャリアはあるし、美空ひばりのジャズスタンダードは中々のものだが、ここでは除外しておく。あるい80年代前半に元祖ネクタイ族のアイドルとして人気が出た阿川泰子や真利邑ケイ、秋本奈緒美の名前もあがってきそうだが、ぼくの感覚では、作られたアイドルとしては成功したのだろうが、およそジャズを歌える歌手という認識はない(そう言いつつ、写真のように手元に彼女らの盤があるのが、ちょいと恥ずかしい…)。中では中本マリはオーソドックスなジャズをドライブ感あふれる歌いっぷりで楽しませてくれた。「アンフォゲッタブル」は当時録音の良さでも知られたインディーズレーベルTBM(スリー・ブラインド・マイス)に録音した彼女のデビューアルバムだ。確か社会人になって給料日にはレコード屋へ行くことが楽しみであった頃に買った。

CEC製ベルトドライブプレーヤーST930のスイッチを入れてアイドリング回転させること10分。メカがひと通り温まり、回転も安定したところで、オルトフォンSPU-Gの針を静かに下ろす。わずかなサーフィスノイズに導かれ、大沢保朗のピアノが短い導入フレーズを奏でる。続いて中本マリのタイム・アフター・タイムが部屋にあふれる。あっと思わず声が出るほどいい音だ。久々に針を落としてみて、あらためて鮮度の高い音に驚いた。録音は1973年9月。当時彼女はまだ二十代後半だったはずだが、随分と落ち着いた声と歌いっぷりだ。上州弁ネイティブのぼくには英語の発音はよく分からないが、世評では当時から彼女の発音は折り紙付だった。音程は文句無くいいし、ロングトーンの後半でかかるヴィブラートも彼女の持ち味で、いい感じだ。バックを固めるメンバーも当時の腕利き揃い。ギター横内章次の名前が懐かしい。しかし、今風のやたらとドライブをかけてノリノリの勢いだけで押してしまう演奏にはなっていないところが70年代的だろうか。クラシックもジャズも時代の様式感は大切だ。あくまでスタンダードをスタンダードの様式で弾き、歌っている。過不足なく安心して聴け、楽しめる。


この盤の音源で全曲。


「Lullaby of Birdland」 80年代前半かと


「Night and Day」 羽田健太郎他とのセッション。90年代初頭の演奏かな



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

田邊三兄弟



忙中閑あり。仕事の追われているだの何だとといいながら先日、都内での仕事を早めに切り上げ、上野下谷の六弦聖地アウラへGo!となった。


202212_Tanabe_Guitars.jpg
(田邊三兄弟:左から…ハウザーモデル、アルカンヘルモデル。サントスモデル)

少し前にギター製作家田邊雅啓氏より連絡があり、サントスモデルの新作が出来たので試奏しますか?とのお誘い。あいにくぼくの都合が付かず、工房へお邪魔するタイミングを逸し、結局先日、納品先のアウラにて試奏となった。折しもアウラには現在、田邊氏の以下の3本を在庫していて、それらを比較試奏することが出来た。印象がホットなうちに備忘を記しておこう。

(1)サントス・モデル 2022年新作
(2)アルカンヘル・モデル 2022年新作
(3)ハウザー1世・モデル 2018年中古

(1)サントス・モデル 2022年新作
先週末に入荷したばかりの新作。きょう現在まだアウラHPにも出ていない。田邊氏のサントスモデルは数年前に初号機が出来たとき以来、何度か弾いている。今年5月にも新作を弾き、非常に好印象だった。今回の作品も出来上がった直後に田邊氏より連絡があって「とてもいい感じに出来上がった。特に6弦は過去最高かも」との自信あふれるメッセージが届いていた。
さて、実際に弾いてみると…田邊氏自身が自ら絶賛していた低音はもちろんだが、高音もカリッと立ち上がり、音量・サステインも十分。ちょっと鳴り過ぎか?と思う程、開放的にカーンと音が抜けてくる。5月に弾いた前作より更に良くなっている。低音のボディレゾナンスはF#付近。6弦5フレット以下の量感は十分だ。低音レゾナンスのオクターブ上、5弦9フレットF#がデッドトーン気味になるのは宿命ながら、タッチで対応できるレベルで問題ない。簡単な曲を少し弾いてみると、低音・高音のバランス良く、いきなり音楽的に響いて驚いた。これまで見た田邊サントスはいずれも極めてレベルの高い出来上がり。首をかしげたくなるところは皆無。これなら店在庫、注文とも安心してチョイス出来るだろう。

(2)アルカンヘル・モデル 2022年新作
このアルカンヘルモデルは今年9月に行われたイーストエンド国際ギターフェスティバル出品作。弾き比べコンサートでは、あのホルヘ・カバジェロが弾いている。ぼくはフェスティバルには行けなかったのだが、イベント終了後、楽器が田邊工房に戻ってきた際にうまくタイミングが合って工房にお邪魔して弾くことが出来た。
この作品は田邊氏が1985年製アルカンヘルを横に置きながら製作したもので、そのオリジナル個体の色合いがよく反映されている。サントスモデルを弾いたあとだと、マイルドで落ち着いた感じを受ける。軽いタッチで楽々鳴る楽器ではなく、スイートスポットを探るように慎重に弾き進めると、深みのある音が出てくる。そういう意味ではやや通好みかもしれない。おそらく何年か弾き込んで音がこなれてくると素晴らしい楽器になるに違いない。

(3)ハウザー1世・モデル 2018年中古
このハウザーモデルは性格こそ異なるが、サントスモデルと並んで好印象だった。低音ウルフはやや高めながら6弦ローポジ全体に十分なボリュームがあり、不足感なし。高音はサントスモデル並みに反応良く、音量・サステインとも十分だった。その上で全体としてはサントスモデルよりクラシカルな雰囲気。2018年作でわずか4年経過ながら、指板や表板の感じから前所有者はかなり弾き込んでいたようで、全体に音がこなれていて発音がスムースだった。表板の塗装もやや濃い目で適度な焼け具合もあり、ビンテージ風の味わい。少々キズが多いからか価格は44万円。これは超お買い得だろう。

この日は上記田邊三兄弟の他にもいくつか興味深いギターを拝見した。しかし、あえて言おう。田邊サントスモデルを越えて興味を引くギターはなかった。田邊氏の自信作だけのことはある。近日中にアウラHPに出るだろうが、もはやそのときにはSOLDになっている可能性も高そうだ。


上記の田邊ギター:アルカンヘルモデル2022年 


上記の田邊ギター:ハウザーモデル2018年 録音レベルが少々小さいのが残念


横裏メイプルの田邊ギター2012年


クロサワ楽器在庫(現在は無し)の田邊ハウザー2018


マイ田邊ギター:ロマニリョスモデル2004年



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

ノリントン&LCPの第九



ちょっとわけあって、きょうは当地市中のど真ん中にある天然温泉に行って暖まってきた。JR駅前わずか300メートル程だろうか。かつて地元では唯一高級オーディオも扱っていた有力電気店が廃業し、その店舗跡を掘ったら温泉が出てきたというもの。湯量・泉質とも上々の街中のいで湯だ。さて、暖まった身体が冷えないうちに布団に入ってゆっくり寝れば日頃の疲れも…というところだが、そこはどっこい道楽与太郎。先日来の流れの続き。こんな盤を取り出した。


202212_Norrington_LVB9.jpg


ロジャー・ノリントンとロンドン・クラシカル・プレイヤー(LCP)によるベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調。ベートーヴェンの交響曲全9曲とメルヴィン・タンがソロを弾くピアノ協奏曲全5曲が一緒になった激安ボックス中の一枚。感覚的には最近の演奏と思っていたが、すでに30年以上前、80年代終盤の録音。これだから年寄りの感覚は当てにならない。「最近」が20年前…って

このコンビの名前から想像する通りの展開だ。しかし一方で、エキセントリックなピリオド演奏、きっとつまらないだろうという、根拠のない個人的予想は見事に外される。活気と生気に満ち、推進力にあふれるこの演奏が、重厚長大の典型である第九にこれほど相性がいいとは思ってもいなかった。

ノリントンの解釈もこの盤の頃と現在では当然変化しているのだろうが、このLCPとのベートーヴェン、取り分け第九はいい演奏だ。第九の魅力をまったく損なわないばかりか、第九の持つ力感や推進力を再認識させてくれる演奏だ。対向配置の弦楽群は、その運動性能の良さと速めのテンポ、短めに切り上げるフレージングとも相まって、曲全体をグイグイを進める推進力となっている。木管群はよく全体の響きに溶け込み、金管群は突き抜けるように響き渡る。そして要所要所で強烈なアクセントを打ち込むティンパニーの雄弁さも他に類をみない。特に第1、2楽章は素晴らしい。聴いていて、あれ?と思うようなところがない。ほとんどのフレージングやアーティキュレーションは違和感なく、あるべき姿の第九として響いてくる。一方後半二つの楽章、取り分け終楽章はやや精細を欠く。やろうとしていることが曲想にマッチしているのかどうかよく分からないのだ。ただの風変わりに聴こえてしまうところがある。もっともこの曲に関しては、大方の好事家の間では終楽章そのものに対して評価が低いのだが(ぼくも同様だ)。…といいながらも、全曲62分を一気に聴いてしまったのも事実。やはり新たな時代を切り開いた偉大な指揮者に違いはない。


この盤の音源で第1楽章。2楽章以降も順次再生される。


ノリントンとN響のライヴ(おそらく2012年)



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

ブロムシュテットの第九@1985年ライヴ



先日聴いた第九。聴き始めるまでは、まあ年末気分を盛り上げようか…程度の気持ちだったが、聴き始めてみれば、そこはやはり名曲。一気に全楽章を聴いてしまった。そして今夜も勢い止まらず。この盤を取り出した。


202212_LVB9_Blomstedt.jpg


今年95歳、ヘルベルト・ブロムシュテット(1927-)とシュターツカペレ・ドレスデンによるベートーヴェンの第九交響曲ニ短調。1985年ドレスデン・ゼンパー・オーパーでのライヴ。手持ちの盤は90年代初頭に手に入れた米デルタミュージックによるもの。

このジャケットに見覚えのある輩も多いのではないだろう。思い起こせば80年代後半CD導入期の頃、四千円近いその価格から、音盤道楽もレコード時代にようにはいかなくなると思っていた。そんな状況下で一時期活況を呈したのが「駅売りCD」だった。文字通り駅構内のコンコースに店を広げ、クラシックからポップス、ジャズまで千円前後の値付けで販売されていた。値段にひかれ何枚か買ったものの、LP盤からの板起こしや、版権の怪しいコピーまがいなどが多く、まともに聴けるものは少なかった。そんな中にあって、この盤は例外的に好録音かつ演奏自体も素晴らしかった。あとになって、この演奏が復興されたゼンパー・オーパー(ドレスデン国立歌劇場)の柿落としの一環として演奏されたライヴ盤であると知った。ワグナーやR・シュトラウスなど多くの作品の初演でも知られる名門ゼンパー・オーパーは1945年に連合国軍のドレスデン大空襲で破壊され、70年代後半に復興が始まり1985年に復興完成となった。

同歌劇場付きのドレスデン国立歌劇場管弦楽団(SKD)。ブロムシュテットは同団とベートーヴェン交響曲全集をセッション録音で完成させ、SKDの音色を味わえる名盤とされているが、加えてこの第九はライブ特有に熱気と緊張感にあふれた素晴らしい演奏だ。第1楽章冒頭からやや速めのテンポ設定で進みながら静寂と熱気のあいだを行き来する。燻し銀と称されたSKD弦楽群の味わい深くも引き締まった響き。その間隙をぬうように名手ゾンダーマンと思われるティンパニーの強打、ホルンやトランペットの強奏が演奏全体を引き締める。第2楽章も軽々しさとは無縁で腰の据わった低重心のスケルツォ。第3楽章はドレスデンの弦楽群の響きがこの上なく美しく、そして木管群とよく調和する。手持ちの第九の中でも最も美しい演奏の一つだ。録音状態はややデッドで左右の広がりも控えめ。そのためか響きがより凝縮され、ライヴとしての熱気を伝えるには過不足ない。このコンビのセッション録音ではうかがい知れない姿が再現される。


この演奏の音源。第1楽章6分35秒過ぎから展開部佳境に入り、7分5秒を過ぎたあたりからヴァイオリン群と低弦群の拍節が交錯するくだり、終盤12分30秒過ぎから低弦群のピチカートにのって次第に緊張を高め13分10秒のクライマックスへ。


2015年ブロムシュテット88歳。ライプツィッヒゲヴァント管弦楽団とのライヴ。独唱陣に藤村実穂子。



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

フリッチャイ&BPO ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調



仕事に追われながらも、師走感ゼロのきょうこの頃。気分だけでも少しは年末を感じようと、今夜はこの盤を取り出した。


202212_LVB9_Fricsay.jpg


フェレンツ・フリッチャイ指揮ベルリンフィルハーモニーによるベートーヴェンの第9交響曲ニ短調。1957~58年録音。手持ちの盤は20年前近く前に輸入盤のワゴンセールで手に入れた。70年代LP廉価盤時代から繰り返しリリースされているお馴染みの録音だ。フリッチャイ(1914-1963)とベルリンフィルとのベートーヴェンは3番・5番・7番・9番がステレオ録音されている。もしかしたら全曲録音を前提にセッションが進んでいたのかもしれない。残念なことにフリッチャイが病魔に冒され、それはかなわなかったが、ベートーヴェンの代表作が良好な音質で残っただけでよしとしよう。ちょうどこの頃はベルリンフィルのシェフにカラヤンが決まって間もない時期。以降カラヤンとベルリンフィルによる膨大な録音セッションが始まることになる。

フリッチャイとベルリンフィルの一連のベートーヴェン録音からは、ベルリンフィルがまだカラヤンに飼いならされる前の、戦前からのフルトヴェングラー時代を通してつちかわれたドイツ的なベルリンフィルの音が聴ける。この録音から数年後の60年代初頭、カラヤンとベルリンフィルによる最初のベートーヴェン全集が録音されるのだが、それと聴き比べると実に興味深い。録音年月はカラヤン盤が数年あとだが、録音場所は共にベルリン・イエスキリスト教会、プロデューサーもオットー・ゲルデスで同じだ。録音技師(トーンマイスター)だけがフリッチャイ盤ではヴェルナー・ヴォルフ、カラヤン盤はギュンター・ヘルマンスと異なる。しかし、その演奏・音響は随分と違っていて、このフリッチャイ盤の方が明らかに音が硬質で引き締まっている。録音も優秀。解像度が高く各パートがよく分離して、それぞれ何をやっているかがよくわかる。

第1楽章はフリッチャイ盤では極めて整ったアンサンブルと筋肉質の音色で、聴いていると正にこちらの身も引き締まる感がある。一方カラヤン盤は、音響がやや肥大していてグラマラスだ。音楽の運びも前のめりで、いささか落ち着きがない。それをもって「現代風な…」ということになるのだろうが、どう聴いてもフリッチャイ盤に軍配が上がる。
フリッチャイは終止落ち着いた曲の運びで、これでオケが貧弱だと単に迫力のない地味なだけの演奏になるところだが、そこはベルリンフィルだ。控えめな表現で落ち着いたテンポながら緊張感に満ちた音楽を展開する。第3楽章のアダージョ・モルト・エ・カンタービレは、このコンビの特質がよく出ている。各パートの音の分離が明確で、変奏曲ごとに繰り出される各パートの組ひものような絡み合いが実によく表現されている。木管や金管の音も落ち着いていて、ややほのぐらい弦楽器群の音色と共に、この第3楽章の美しさを引き立てている。第4楽章でバリトンパートを歌うのはディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ。意外なことにフィッシャー=ディースカウが第9を歌っているのは、このフリッチャイ・ベルリンフィル盤が唯一ということだ。フリッチャイはこの第4楽章に限って、やや速めのテンポを取っている。コアなクラシックファンの中には、第9はこの第4楽章で価値を下げているという人もいるのだが、こうして速めのテンポと取ることで、例えばテノールがマーチ風の伴奏にのって歌ったあとの管弦楽の掛け合い部分などは素晴らしく緊張感あふれる展開となっている。そして最後の最後、コーダでの一気呵成のアチェルランドで曲を閉じている。フリッチャイは本当に素晴らしい指揮者だった。一連のベートーヴェン以外にも新世界やチャイコフスキーの悲愴など名演を残した。


この盤の音源。全4楽章。



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

ハラルド・スタンパ(G)「アルゼンチンの舞曲集」



先週あたりから季節が一段進み、晩秋から初冬の趣き。今朝も上着一枚では少々心細く、コートを羽織って家を出た。本日も程々に働き、帰宅後一服して弛緩タイム。今夜はこんな盤を取り出した。


202212_Harald_Stampa_s.jpg


「アルゼンチンの舞曲集」というタイトルのナクソス盤。ハラルド・スタンパというドイツ人が弾いている。2001年録音。収録曲は以下の通り。

恋する鳩の踊り(ユパンキ)
ユパンキの主題による変奏曲(プホール)
アルゼンチン舞曲集OP.2~第2番
 粋な娘の踊り(ヒナステラ/スタンパ編曲)
ギター・ソナタ Op.47(ヒナステラ)
わが悲しみの夜(カストリオータ/プラト編曲)
エル・イレシスティプレ(ロガッティ/プラト編曲)
ラ・パジャンカ(ベルト/プラト編曲)
エスティーロ・ポプラール第1番(リョベート)
エスティーロ・ポプラール第2番(リョベート)
はちすずめ(ザグレラス)
ガトとマランボ(アヤラ)
グアラニア(アヤラ)
5つの小品集(ピアソラ)

今更いうのもナンだが、「アマチュア中級ギター弾き」風情の分別臭いギターネタを書いているように思われているかもしれないが、実のところギター音楽には詳しくない。ここに取り上げられた曲でも、ああ、あれかと分かる曲は半分もない。通して聴いて、耳に覚えのある曲はヒナステラのソナタ、ピアソラの5つ小品、ザグレラスにリョベート、その程度だ。まあ、ぼくの無知はおいておくにしても、この盤の選曲はいささかごった煮の感が強いのも事実だろう。 ユパンキの素朴で郷愁を帯びた曲想で始まったかと思えば、突然ヒナステラのモダンな響きにチェンジする。アルバムタイトル通り、アルゼンチン産という切り口で半ば強引に集めたように感じる。もっともその結果が、アルゼンチンのこうした音楽の多様性をそのまま反映しているということかもしれない。あまり四の五のいわずに、響きに身を任せて聴けばよいということだろう。耳慣れているということもあって、やはりピアソラの5つの小品が一頭抜きん出る。ハロルド・スタンパというギタリストはかなりのキャリアがあり、この盤のような近現代ラテン系ばかりでなく、19世紀古典期の作品には当時のオリジナル楽器で取り組むなど、正統派の奏者のようだ。


手持ちの盤からアップ。ユパンキの「恋する鳩の踊り」


同 リョベート「エスティーロ・ポプラール第1番」


バリオスを弾くハラルド・スタンパ



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

小曽根真「The Trio」



師走最初の週末日曜日。撮りためたサッカーW杯、恒例早明ラグビー…久しぶりにテレビにかじりついて過ごす。リビングの椅子に腰かけたまま数時間。少々痛くなった腰をさすりながら気分転換。音盤棚を見回し、こんな盤を取り出した。


202212_Ozone.jpg


小曽根真が自身のトリオ名義でリリースした最初のアルバム。1997年小曽根真36歳のときの録音。ベースに北川潔、ドラムスにクレランス・ベン。スペシャルゲストとしてギターのジョン・スコフィールドが3曲に参加している。かなり以前からジャズに留まらず、クラシック分野での演奏も話題の彼だが、この盤はそうした彼のキャリアが本格化し始める頃の録音。

何とも雰囲気のいい盤だ。スウィンギーな曲も絶妙のバランス感覚の上に展開される。つまり、ノリと勢いだけでガンガン行くような演奏ではなく、知的なコントロール下に置かれているとでも言えばいいだろうか。バラードプレイもしかりで、甘ったるい情緒だけで終わらない。そう感じながらライナーノーツを読んでいたら、このアルバムの録音あたっては各パートの楽譜をかなり周到に書いた経緯が記されていた。ジャズの楽譜というとテーマとコード進行だけがざっと書かれていて、あとはその場の事前の打合せでゴー!というケースが多い中、異例とも言える。もちろん彼ほどのプレイヤーであればそうした展開もお手の物だろうが、そんな丁寧な手仕事ぶりをうかがわせる一面が、彼のその後と多方面での活躍につながっているように感じる。


この盤の音源「Tea for Three」


同 ジョン・スコフィールドのギターも聴けるバラード「home」


小曽根真クラシックを語るの巻



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

カレンダー
11 | 2022/12 | 01
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
最新コメント
カテゴリ
検索フォーム
月別アーカイブ
QRコード
QR
閲覧御礼(2010.10.01より)