ブロムシュテットの第九@1985年ライヴ



先日聴いた第九。聴き始めるまでは、まあ年末気分を盛り上げようか…程度の気持ちだったが、聴き始めてみれば、そこはやはり名曲。一気に全楽章を聴いてしまった。そして今夜も勢い止まらず。この盤を取り出した。


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今年95歳、ヘルベルト・ブロムシュテット(1927-)とシュターツカペレ・ドレスデンによるベートーヴェンの第九交響曲ニ短調。1985年ドレスデン・ゼンパー・オーパーでのライヴ。手持ちの盤は90年代初頭に手に入れた米デルタミュージックによるもの。

このジャケットに見覚えのある輩も多いのではないだろう。思い起こせば80年代後半CD導入期の頃、四千円近いその価格から、音盤道楽もレコード時代にようにはいかなくなると思っていた。そんな状況下で一時期活況を呈したのが「駅売りCD」だった。文字通り駅構内のコンコースに店を広げ、クラシックからポップス、ジャズまで千円前後の値付けで販売されていた。値段にひかれ何枚か買ったものの、LP盤からの板起こしや、版権の怪しいコピーまがいなどが多く、まともに聴けるものは少なかった。そんな中にあって、この盤は例外的に好録音かつ演奏自体も素晴らしかった。あとになって、この演奏が復興されたゼンパー・オーパー(ドレスデン国立歌劇場)の柿落としの一環として演奏されたライヴ盤であると知った。ワグナーやR・シュトラウスなど多くの作品の初演でも知られる名門ゼンパー・オーパーは1945年に連合国軍のドレスデン大空襲で破壊され、70年代後半に復興が始まり1985年に復興完成となった。

同歌劇場付きのドレスデン国立歌劇場管弦楽団(SKD)。ブロムシュテットは同団とベートーヴェン交響曲全集をセッション録音で完成させ、SKDの音色を味わえる名盤とされているが、加えてこの第九はライブ特有に熱気と緊張感にあふれた素晴らしい演奏だ。第1楽章冒頭からやや速めのテンポ設定で進みながら静寂と熱気のあいだを行き来する。燻し銀と称されたSKD弦楽群の味わい深くも引き締まった響き。その間隙をぬうように名手ゾンダーマンと思われるティンパニーの強打、ホルンやトランペットの強奏が演奏全体を引き締める。第2楽章も軽々しさとは無縁で腰の据わった低重心のスケルツォ。第3楽章はドレスデンの弦楽群の響きがこの上なく美しく、そして木管群とよく調和する。手持ちの第九の中でも最も美しい演奏の一つだ。録音状態はややデッドで左右の広がりも控えめ。そのためか響きがより凝縮され、ライヴとしての熱気を伝えるには過不足ない。このコンビのセッション録音ではうかがい知れない姿が再現される。


この演奏の音源。第1楽章6分35秒過ぎから展開部佳境に入り、7分5秒を過ぎたあたりからヴァイオリン群と低弦群の拍節が交錯するくだり、終盤12分30秒過ぎから低弦群のピチカートにのって次第に緊張を高め13分10秒のクライマックスへ。


2015年ブロムシュテット88歳。ライプツィッヒゲヴァント管弦楽団とのライヴ。独唱陣に藤村実穂子。



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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