中本マリ「アンフォゲッタブル」
月末納期の仕事も目途が立ち、休心。少し気をよくして帰宅した。さて12月半ばの週末金曜日。あすはこれといった用事もなく、今夜はリラックス。ついでにこんな盤を取り出した。


中本マリのアルバム「アンフォゲッタブル」。
ぼくらの世代で思いつく70年代に活躍した日本の女性ジャズヴォーカルというと、笠井紀美子、伊藤君子そしてこの中本マリあたりだろうか。少し前の世代になるとマーサ三宅(古っ!)。もちろん江利チエミもペギー葉山もジャズシンガーのキャリアはあるし、美空ひばりのジャズスタンダードは中々のものだが、ここでは除外しておく。あるい80年代前半に元祖ネクタイ族のアイドルとして人気が出た阿川泰子や真利邑ケイ、秋本奈緒美の名前もあがってきそうだが、ぼくの感覚では、作られたアイドルとしては成功したのだろうが、およそジャズを歌える歌手という認識はない(そう言いつつ、写真のように手元に彼女らの盤があるのが、ちょいと恥ずかしい…)。中では中本マリはオーソドックスなジャズをドライブ感あふれる歌いっぷりで楽しませてくれた。「アンフォゲッタブル」は当時録音の良さでも知られたインディーズレーベルTBM(スリー・ブラインド・マイス)に録音した彼女のデビューアルバムだ。確か社会人になって給料日にはレコード屋へ行くことが楽しみであった頃に買った。
CEC製ベルトドライブプレーヤーST930のスイッチを入れてアイドリング回転させること10分。メカがひと通り温まり、回転も安定したところで、オルトフォンSPU-Gの針を静かに下ろす。わずかなサーフィスノイズに導かれ、大沢保朗のピアノが短い導入フレーズを奏でる。続いて中本マリのタイム・アフター・タイムが部屋にあふれる。あっと思わず声が出るほどいい音だ。久々に針を落としてみて、あらためて鮮度の高い音に驚いた。録音は1973年9月。当時彼女はまだ二十代後半だったはずだが、随分と落ち着いた声と歌いっぷりだ。上州弁ネイティブのぼくには英語の発音はよく分からないが、世評では当時から彼女の発音は折り紙付だった。音程は文句無くいいし、ロングトーンの後半でかかるヴィブラートも彼女の持ち味で、いい感じだ。バックを固めるメンバーも当時の腕利き揃い。ギター横内章次の名前が懐かしい。しかし、今風のやたらとドライブをかけてノリノリの勢いだけで押してしまう演奏にはなっていないところが70年代的だろうか。クラシックもジャズも時代の様式感は大切だ。あくまでスタンダードをスタンダードの様式で弾き、歌っている。過不足なく安心して聴け、楽しめる。
この盤の音源で全曲。
「Lullaby of Birdland」 80年代前半かと
「Night and Day」 羽田健太郎他とのセッション。90年代初頭の演奏かな
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