カラヤン&VPO ニューイヤーコンサート1987年



以前だったらきょうが成人の日。ハッピーマンデーだか何だか知らないが、祝日がふらふら移動することには違和感をもつ。成人の日は15日。かつては共通一次やセンター試験、ラグビー日本一決定戦…まあ、ぶつぶつ言っても仕方ないけど。 さて、令和五年に引っ掛けた「5」しばりは松の内も終えるのでひと先ず終了。きょうは遅ればせながら年頭気分に戻って、この盤を取り出した。


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ジャケット帯が両面仕様というのも珍しい
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ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908-1989)が生涯にたった一度だけその指揮台に立ったウィーンフィル・ニューイヤーコンサートの1987年ライヴ盤。1987年・昭和62年…ニューイヤーコンサートの元旦中継もすっかりお馴染みになりつつあった頃、世間はバブル経済のお祭り騒ぎに突入する前夜、あれからもう35年余。歳もとるはずだ。

さてこのレコード。ウィーンフィルが奏でムジークフェラインに響く音はまことに立派で非の打ちどころがない。テンポ設定や歌いまわしも極めて自然。どこをとっても不自然さはない。反面これはという面白さやハッとする解釈はほとんどなく、この演奏でなければ…というものがあるかと問われると答えに詰まる。ぼくはカラヤンに対してはシンパでもアンチでもないのだが、世間的あるいは業界内での圧倒的な人気を博しながら、もうひとつ玄人筋にウケがよくないのはそのあたりのカラヤンの資質ゆえだろう。まあ、ニューイヤーコンサートというお祭りだ。解釈を四の五のいうこともない。飛び切りの美音でシュトラウスの豊かな歌にひたれればそれで十分だ。

この年のニューイヤーはカラヤンが振るということに加え、ソプラノのキャスリーン・バトル(1948-)の登場も話題になった。この盤では彼女が歌う「春の声」が最後のトラックに収録されている。当時のバトル人気はすごかった。黒人ソプラノ歌手ということでは先駆者はもちろんいるが、彼女は取り分けヴィジュアルも物腰もチャーミングで日本でも大そうな人気を得た。

このニューイヤーを振ったカラヤンは2年後の1989年7月に亡くなった。日本のバブル景気はピークを向かえる頃。何万円もするクラシックコンサートのチケットが売れ、にわか景気に浮き立った人々がブランド物のスーツを着込んでサントリーホール集う光景。しかしそれも2年後には幕となる。35年前のことかと思いながらこの盤を久々に聴くと、自己見積もり20年の余生もあっという間だ。


ポルカ「観光列車」「ピチカート・ポルカ」と続く。


バトルが歌う<春の声>



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シベリウス交響曲第5番変ホ長調



懲りもせず、引き続き「5」しばりの音盤探索。きょう取り出しのはこの盤だ。


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シベリウスの交響曲第5番変ホ長調。ブラームスやチャイコフスキーに加え、シベリウスも得意にしていたクルト・ザンデルリンク(1912-2011)が旧東独のベルリン交響楽団(現ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団)を振った全集セット中の一枚。このセットには7つの交響曲の他、主要な交響詩が5曲収録されている。1976年ベルリンイエスキリスト教会での録音。十年程前、ブリリアントの激安ボックスセットで出た際に買い求めた。

ぼく自身は熱心なシベリウスフアンというわけではなく、聴きかじった曲といえば、いくつかの交響曲と管弦楽曲、有名なヴァイオリン協奏曲、それとピアノの小品程度だろうか。このセットも入手直後に何枚か聴いたが、その後はほとんど手付かずのままだった。今夜久しぶりの第5番を取り出した。第5番はもっともポピュラーな第2番に次いで演奏機会も多く、人気の曲だろう。

第1楽章冒頭から聴く者を引き付ける魅力的な響きで始まる。ホルンがまさに北欧の澄んだ空と深い森をイメージするように静かに響き、程なく、そのゆったりとした空気の中に、やや鋭い響きの木管群が呼応する。この冒頭の魅力的なフレーズだけでも、この曲を聴く価値があると言っても言い過ぎではない。大自然の息吹き、大地の力強さ、森の静けさとざわめき…そうしたものが渾然一体となってシンフォニックに響き渡る。まことにスケールの大きな楽章だ。 歌謡性に富んだ主題とその変奏で綴られる素朴で美しい第2楽章をはさんで、萌えいずるようなエネルギーを感じる第3楽章の充実した響き。冒頭少ししたあたりで出るゆったりとした主題、そしてエンディング数分間の大団円は第2番のクライマックスに勝るとも劣らない。

ザンデルリンクはロマンティックな解釈をベースに極めてシンフォニックでスケール大きな演奏を展開する。録音も優秀だ。ぼくらが北欧フィンランドの作曲家シベリウスを聴いてイメージする響きそのもののような曲。同時に、自然の目覚め、かすかな春の訪れをも感じる曲でもあって、今の時期に聴くのに相応しい名曲だ。


この盤の音源。全4楽章


ユッカ・ペッカ・サロネン指揮ラハティ交響楽団による第5番全曲。ラハティはフィンランド南部の古い都市。指揮者のユッカ・ペッカ・サロネンの故郷でもある。2000年に完成した同市内のシベリウスホールでのライヴ。34分40秒過ぎからアンコールとして「鶴のいる情景」(Scene with Cranes)が演奏される。



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群馬交響楽団&ケク=チャン・リム チャイコフスキー交響曲第5番ヘ短調



令和五年にちなんだNo.5しばり。きょうはこの盤を取り出した。


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群馬交響楽団(群響:グンキョウ)によるチャイコフスキー交響曲第5番ヘ短調。指揮は1928年オランダ領ボルネオ生まれのインドネシア系中国人のケク=チャン・リム(Lim Kek-tjiang 林克昌1928-2017)。1981年5月の録音。

これは名演だ。群響がこれまでに残した録音の中で最も優れた録音の一つだと断言できる。久々に針を降ろしたが、あらためて唸ってしまった。 録音は井阪絃率いるカメラータ東京によって行われているが、当時の群響本拠地:群馬音楽センターではなく、隣り町渋川市にある渋川市民会館で収録された。群馬音楽センターは残響の少ない極めてデッドなホールで録音後処理でのエコー付加が欠かせない。この録音では渋川市民会館のナチュラルエコーが効いているのだろう、オケの音全体に適度で自然な残響が加わっている。弦と管の距離感も程よい具合だ。カメラータ東京技術陣はきっと慣れないホールでのマイクセッティングやミキシングに腐心したことだろうが、その結果は盤の出来に十分反映されている。

そして何より指揮者ケク=チャン・リムの曲作りには感服した。この曲を貫くほの暗さとロマンティシズム、そして終楽章の勝利。そのすべてがあるべき形で提示されている。全体にテンポ設定は遅く、第1楽章には17分近くをかけている。これはチェリビダッケの18分台には及ばないが、セルより3分遅く、ムラヴィンスキーより6分も遅い。遅いテンポを取ると一般には音楽の彫りが深くなり、一つ一つのフレーズが持つ意味合いがより明確に提示される。反面、オケのコンロトールが不十分だと緊張感や統一性に欠け、いろいろやっているが全体として何を言いたいのか不明といった演奏になることもしばしばだ。しかしこの盤では群響がケク=チャン・リムの彫りの深い音楽作りによく反応し、緊張感を維持している。ケク=チャン・リムはもともとヴァイオリニストで、著名なコンクールのファイナリストに残るほどの名手だったそうだ。そのせいか弦楽群のフレーズの作り方が巧みで、やや濃い口の歌わせ方だが、緊張と解決をうまくコントロールしている。何気ない第3楽章のワルツなども実に雰囲気があって、フレーズがフワッと浮き立ち、心地よく収束する。


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以前取り上げた豊田耕児と群響による古典と初期ロマン派の整った音楽作りはそれまでの群響とは一線を画するものであったが、ケク=チャン・リム指揮のこのチャイコフスキーは、更に一皮むけて深く濃いロマンティシズムをたっぷりと聴かせる力が群響にあることを示した名盤と言えるだろう。

よくぞこのLP盤音源をアップしてくれた。チャンネル主催者のブログにも、この曲の名演として紹介されている



ケク=チャン・リムは60年代には中国本土で様々な活躍をしたが文革のため西洋音楽が排除され、その後ときの周恩来の計らいもあってマカオに移ったそうだ。検索してみたら2000年代に入って、台湾の企業グループがスポンサーになって出来た長栄交響楽団の初代シェフに就いていることを知った。同団との演奏があったので貼っておく。

同じチャイコフスキーの5番



カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲。濃厚な味付けだが、よくコントロールされていて素晴らしい!



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テンシュテット&LPOのマーラー第五@1984大阪



三連休最後の月曜日。日中これといった用事もなく、アンプの灯を入れ五番しばりの音盤選び。冬の陽射しが差し込む道楽部屋で久しぶりにフルボリュームで聴こうと、この盤を取り出した。


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クラウス・テンシュテット(1926-1998)がロンドンフィルと1984年に来日した際の大阪でのコンサートライヴ盤。この盤には1984年4月13日大阪フェスティバルホールでの演奏曲目、モーツァルト交響曲第35番ニ長調「ハフナー」とマーラー交響曲第5番嬰ハ短調の2曲がそのまま2枚のディスクに収められている。


冒頭のトランペットは音量・抑揚ともやや押さえた表現で始まる。そしてその後に続く異様ともいえるスローテンポの葬送マーチ。大声を張り上げることなく、しかし極度の緊張感が音楽を支配する。室内楽的に精緻なアンサンブルと各声部を丁寧に扱いながら、しかし緊張感ゆえの秘めたスケールが伝わってくる。第4楽章アダージェットも過度の感情移入は少なく、やや抑えた表情と弱音のコントロールが美しい。マーラーというととかくスケール感にばかりフォーカスされるが、少なくても第5交響曲については純器楽構成の伝統的な管弦楽として、丁寧に曲を運ぶことが大事だと気付かされる。

1984年はテンシュテットがロンドンフィルの音楽監督に就いた翌年にあたる。まだ病魔が表面化する前の来日記録でもある。手元にはスタジオセッションの彼のマーラー全集もあるが、それとは一線を画す緊張MAXの名演だ。


この盤の音源。


同じコンビによる同曲第2楽章冒頭。1988年ライヴ@ロンドンフェスティバルホール。



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ブロムシュテット&SKD シューベルト交響曲第5番変ロ長調



年が明けて一週間。年始四日から仕事で都内へ出向いたが、新幹線も東京駅も大そうな人出だった。完全にコロナ禍以前のレベル。多くの人がキャリーケースを引いている。帰省や観光か…。来週からは少し落ち着きを取り戻すだろうか。 さて、週末土曜日。夜半前の五番しばり。今夜はこの盤を取り出した。


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ブロムシュテットとドレスデン国立歌劇場管弦楽団(シュターツカペレ・ドレスデン:SKD)によるシューベルト交響曲のセットから第5番変ロ長調。1980年、ドレスデン・聖ルカ教会での録音。HMVのサイトでは「ドイツ・シャルプラッテン本来の優秀録音が蘇ったと評判になったハイパー・リマスタリングによる廉価ボックスの登場。オリジナル・アナログ・マスター・テープ本来の音の情報が、間接音除去やイコライジングによって損なわれることなく忠実に再現されており、ドイツの名門シュターツカペレ・ドレスデン全盛期のサウンドをアナログ完成期の名録音で楽しむことができます。」…との口上がうたわれている。70年代終盤から80年代初頭のアナログ最後期の音の記録でもある。

第5番はシューベルトの交響曲の中では「ザ・グレイト」と並んで好きな曲の筆頭。かなり劇的な作風の第4番から一転、トランペットやティンパニ、クラリネットも省いた小編成で、穏やかな古典的たたずまいに満ちている。モーツァルトの第29番シンフォニーに相通じる雰囲気がある。ブロムシュテットはテンポを中庸に取り、この曲のそうした雰囲気にマッチした曲の運び。同時にマスの響きの雰囲気だけではなく、各声部が交錯する様などは明瞭に提示するなど、実に好ましい。


この盤の音源。第5番全4楽章。


グールドの弾く第1楽章冒頭



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ブラームス弦楽五重奏曲第2番ト長調



令和5年にちなんだナンバー5。5に引っ掛けて、第5番ではないが、「5」つながりということで、この盤を取り出した。


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ブラームスの弦楽「五」重奏曲第2番ト長調作品111。ベルリンフィルメンバーによる1970年の録音。弦楽五重奏の1番と2番がそれぞれA面B面に収められている。手持ちの盤は1979年に<室内楽1300>と称されたフィリップス系廉価盤シリーズ中の一枚。演奏団体名はベルリン八重奏団としてクレジットされて、その中の以下のメンバーが参加している。土屋氏は1959年から2001年までBPO最初の日本人プレイヤーとして在籍。この録音は入団から10年を経った頃のもので、名実共に名門オケのヴィオラ奏者として活躍していた時期の記録となる。

 アルフレッド・マレチェック(Vn)
 フェルディナンド・メツガー(Vn)
 土屋邦雄(Va)
 ディートリッヒ・ゲルハルト(Va)
 ペーター・シュタイナー(Vc)

ブラームスの五重奏ではクラリネット五重奏曲、ピアノ五重奏曲がまっさきに頭に浮かぶが、管もピアノもない弦楽五重奏曲、取り分けこの第2番もいかにもブラームスらしい渋さに満ちている。加えてこの曲には渋さゆえの難解さがない。全楽章とも穏やかな歌謡性を持ち、親しみ易い。ベートーベン最晩年の室内楽やピアノソナタが、深く瞑想的かつ常人を受け付けないようなところがあるのとは対照的だ。ぼく自身はブラームスの室内楽中、もっとも素晴らしいものの一つと感じる。

第1楽章、冒頭こそ明るいト長調で始まるが、決して陽光さんさんと降り注ぐ明るさではない。穏やかで平和的ながら、ほの暗い落ち着きも併せ持って曲が進む。2本のヴィオラによる響きは中音部が厚く、それでいて同じブラームスのチェロを2本にした弦楽六重奏ほどの重さはなく、程よく重厚で温厚に響く。
第2楽章と第3楽章はそれぞれニ短調、ト短調の短調に転じる。第2楽章はヴィオラの哀愁に満ちた主題で始まり、ヴァイオリンによって変奏されていく。最後に主題が回想され、長調に転じて終止するあたりは本当に美しい。続く第3楽章のレントラー風のメロディーも一度聴いたら忘れないほど印象的なものだ。哀愁に満ちた旋律を各パートが綾を成すように展開される。終楽章はブラームス得意のハンガリー風(ロマ風)のモチーフで始まる。途中、穏やかな副主題をはさみながらも、最後はラプソディックに盛り上がり曲を終える。

ベルリンフィルメンバーによる演奏は、昨今の、よりダイナミックかつアクティブな演奏スタイルに比べるとずっと内省的。1970年というと、ベルリンフィルはカラヤン施政下ですっかり近代的なオケになっていたと思うが、こうして室内楽と聴くと、個々の演奏者のベースにはまだまだひと昔前のスタイルが残っていたのかと実感する。


この盤の音源。第2番第2楽章アダージョ


以下の動画は2013年ヘルシンキ室内楽フェスティバルでの録音とのこと。セルシェル(G)とデュオのアルバムも出しているジャン・ワンがチェロを弾いている。少し調べてみると他のメンバーもみな素晴らしキャリアの持ち主。モダンかつシャープな演奏。当然だがBPOメンバーによる半世紀前の演奏とは印象がまったく異なる。
第2楽章12:12~ 第3楽章18:12~ 第4楽章23:30~



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マタチッチ&チェコフィル チャイコフスキー交響曲第5番ヘ短調



年明け。さて何を聴こうかと音盤棚を見回す。未聴の盤も随分あるなあと思いながらも、ここ何年か取り出す盤を絞られてきた。いずれサンデー毎日状態になったらボチボチ聴こうを思っているが、どうなるのかと、しばし沈黙…。 我に返って気を取り直し、令和五年にちなんでナンバー5で行こうかと、こんな盤を取り出した。


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ロヴロ・フォン・マタチッチ( 1899-1985)とチェコフィルハーモニー管弦楽団による1960年の録音。70年代には廉価盤で出ていたマタチッチとチェコフィルの演奏やその後のNHK響との演奏他いくつかの盤が以前、日本コロンビアから復刻された。手元に十年程前に手に入れた盤がいくつかあるが、きょう取り出したチャイコフスキーの5番もその中の一枚。

第1楽章の序奏は物々しく始めることが多いが、この盤では思いのほかあっさりと進む。過度な表情付けはないが、よく聴くとフレーズの緊張・解決に沿ってわずかに音の重みに変化を付けている。主部に入ってからも速めのテンポでもたれず進む。主題の切り替わりで僅かにテンポを揺らしたり、展開部ではせき込むようなアチェルランドを過度にならない範囲で効かせ、効果を上げている。チェコフィルの弦楽器群の音は潤いに満ちていて、フォルテッシモでも余裕を持った柔らかな響きをキープしていて美しい。管楽器群も鋭く響くようなところはなく弦楽群とよく調和している。

第2楽章のホルンのソロや、ときどき金管群やホルンが聴かせるヴィブラートがこの時期のロシア・東欧系オケの特色を感じさせる。料理の仕方次第で様々に変化するチャイコフスキーだが、この演奏は過度な演出を避けながらもスラヴ的感興にも不足のない、そして往時のチェコフィルの音を堪能出来る素晴らしいアルバムだ。


この盤の音源。全4楽章


1975年にN響を振って演奏した同じチャイコフスキー第5番の音源があったので貼っておこう。チェコフィルとの録音から15年を経てテンポはわずかに遅めになっているが、もたれるような感じはまったくなく、推進力に富む。40年前の録音だが、すでにアナログ録音の完成期。やや残響に乏しいNHKホールながら、コントラバスの最低音までしっかりとらえられている。


第4楽章の中間部聴き比べ。9名の指揮者が登場する。


#0:00 ヘルベルト・フォン・カラヤン / ベルリンフィル
#2:55 ズデニェク・マーツァル / チェコフィル
#5:37 リッカルド・シャイー / ウィーンフィル
#8:12 リッカルド・ムーティ / フィラデルフィア管
#10:45 チェリビダッケ / メルボルンフィル
#13:55 アバド / シカゴ響
#16:35 デュトワ / モントリオール響
#19:12 スヴェトラーノフ / ロシア響
#21:33 ムラヴィンスキー / レニングラードフィルハーモニー管弦楽団


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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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