ケンペ&SKD ウィンナ・ワルツ・コンサート
先回記事にしたウィーンフィル:ニューイヤーコンサート。かつては毎年楽しみにしていたものだが、近年はほとんど観なくなってしまった。もっともワルツ自体は大好きで、時期を問わず気分が向くと聴く。そんなときに取り出す音盤の一つがこの盤だ。


ルドルフ・ケンペ(1910-1976)がドレスデン国立歌劇場管弦楽団(シュターツ・カペレ・ドレスデン:SKD)を振ったウィンナワルツ集。1972年暮れから翌年の年明けにかけての録音。ブックレット表紙にも小さく記されている通り、同団創立425年!を記念して作られた。いくつもの名録音を生んだドレスデン聖ルカ教会での録音。手持ちの盤はコロンビアの廉価盤シリーズ「クレスト1000」の一枚。収録曲は以下の通り。
1. J・シュトラウス2世「こうもり」序曲
2. J・シュトラウス2世:ワルツ「ウィーンの森の物語」
3. ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ「天体の音楽」
4. スッペ:「ウィーンの朝・昼・晩」序曲
5. レハール:ワルツ「金と銀」
6. J・シュトラウス2世:ポルカ「浮気心」
さすがに四百年余の伝統を誇る名門SKD。実に上手い。この盤の原題<Galakonzert>に相応しい幕開けの曲「こうもり」序曲冒頭、弦楽群の速いパッセージや付点音符のアンサンブルがピタリと揃い気持ちがいい。以降お馴染みのウィンナワルツが並ぶが、いずれも整ったアンサンブルとやや速めのテンポで颯爽とした演奏。ロベルト・シュトルツ盤が濃厚甘口とすれば、こちらは淡麗辛口といった風情だ。しかし薄味ではなく、「ウィーンの森の物語」の中間部、短調に転じて出るオーボエソロとそれに続くチェロのメロディーなど、楚々としながらもテンポをぐっと落として十分に歌わせる。全体が速めのテンポなので、この落差がより効果的で、聴く側の気分もパッとギアチェンジされる。
レハール「金と銀」が格調高く品格ある演奏で聴けるのもうれしい。リズミックな序奏のあと、弦のユニゾンでゆったりと出るメロディーはいつ聴いても美しく、どこか懐かしい。「金と銀」やこの盤にはないがワルトトイフェル「スケーターズワルツ」やイヴァノヴィッチ「ドナウ川のさざなみ」などは、おそらく小学生の頃、音楽の時間にでも聴いただろうし、当時昭和40年代にはラジオやテレビでホームミュージックとしてよく流れていた。その頃の音が脳内のどこかにインプットされているに違いない。シュトラウスの華やかなウィンナワルツに比べ、少し陰りのある曲想がまた味わい深い。
現役時代のケンペはどちらかというと万事中庸をいく指揮者と言われていたが、没後に出てきたライヴ録音などから「燃えるケンペ」の側面も知られるようになった。この盤を聴くと、曲が曲なので「燃える」というものではないが、ライヴ感にあふれ、聴かせどころを心得た巧者だとよくわかる。
この盤の音源で「金と銀」
この盤の音源。全6曲
ケンペの「金と銀」にはウィーンフィルとの録音もある。
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