週明けいつもの月曜日。そろそろ年度末を意識しつつも程々に仕事をし、いつもの時刻に帰宅した。ひと息ついて…先回のミュンシュ&パリ管による重量級のブラームスで思い出し、今夜はこの盤を取り出した。

カラヤンとベルリンフィルによるブラームスの第1番。おそらくぼくら世代のクラシックファンの多くが、好むと好まざるとに関わらずこの盤に接したことだろう。カラヤンはブラームスの交響曲を好み、得意にしていたようで、彼の盤歴の初期から度々録音を重ねている。1963年録音のこの盤は60年代初頭に行われた一連のステレオ録音の一つで、カラヤン&ベルリンフィルの黄金期ともいうべき時期のものだ。この時期のベルリンフィルには、まだフルトヴェングラー時代のメンバーが多く残っていた。カラヤンは颯爽として新時代の解釈で曲を進めるが、その音色には戦前からの往時の雰囲気が色濃く残っている。
このレコードを買ったのは高校3年のときだ。それまでジャスト千円の廉価盤しか買ったことがなかったぼくが初めて買ったレギュラープライスの盤だった。帰宅してターンテーブルにセットして針を落とし、第1楽章の序奏が始まって驚いた。これまで聴いたことのない低音がスピーカーから流れてきたのだ。コントラバスとチェロによる連続C音のどっしりとした低音を初めて耳にし、自分の貧弱なステレオ装置からもこんな音が出るのかと驚いたのだ。まだ古き時代の音を残したカラヤン&ベルリンフィル、幾多の名録音を生み出したベルリン・イエスキリスト教会、カラヤンの耳を持つ男と言われた録音技師;ギュンター・ヘルマンス、この黄金トリオともいうべき組み合わせによるこの時期の一連の録音はいずれも素晴らしい。
第1楽章の序奏はこれ以上ないくらいに安定した重厚な音に満ちている。主部に入ってからも深いアインザッツとほの暗い音色がブラームスに相応しい。第2楽章の寄せては返すような濃厚な曲の運び、第3楽章でもリズムが不用意に軽くならず、その上を名手ローター・コッホと思われるオーボエが渋い音色で歌う。終楽章の充実感も申し分ない。金管群の強奏も派手さはなく、深く強く響く。カラヤンの細部の解釈や念の入れようには、いささか「ヌルい」感じもあるのだが、重量感あふれる音色と録音は絶賛したい。カラヤンの振ったブラームス第1の手持ちの盤として、この盤に先立つフィルハーモニア管との録音(1952年)、70年代の再録盤(1977年)やウィーンフィルとのデッカ録音(1959年)も手元にあるが、この60年代の録音には格別のものがある。
1963年録音のこの盤の音源。全4楽章
秋山和慶指揮洗足学園音楽大学管弦楽団による演奏。
★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■

にほんブログ村
- 関連記事
-
昨日、関東地方は久々の降雪。数センチの雪で大騒ぎする体は、雪国の人からは呆れられるところだが、実際あちこちで交通渋滞、鉄道遅延と、いつもながらの光景だった。そんな中、都内での仕事を終えて夕方の新幹線で帰宅。車中で聴いていた続きで、この盤を取り出した。


シャルルミュンシュ(1891-1968)とパリ管弦楽団によるブラームス交響曲第1番ハ短調。1968年1月の録音。当時の仏文化相アンドレ・マルローの提唱でパリ音楽院管弦楽団から発展的解散を経て創設され、ミュンシュを音楽監督に迎えたパリ管弦楽団創設直後の録音の一つ。この演奏については多くが語られているので、今更付記すべきこともない。久々にこうして聴いてみると、やはり一期一会の名演だ。ライナーノーツで故宇野功芳御大が例の宇野節でこの演奏について熱く語っている通り、この演奏にはフルトヴェングラーのステレオ録音かくやと思わせるところがある。
第1楽章冒頭の序奏からして並々ならぬ重量感と堂々たる威容に圧倒される。フルトヴェングラー&BPOのDG盤1952年録音の序奏を彷彿とさせる。序奏の終盤、木管のフレーズを受けてチェロが寂寥感に満ちた下降音形を奏でるところがあるが、ここでそれまでの力感あふれる運びから一転して抑え気味にこのフレーズをチェロに弾かせ、力ばかりでないこの曲の成り立ちを象徴的に表現する。主部も遅めに始まるが、じわじわとテンポを上げていく。全体に響きのトーンは重心低くドイツ的。コントラバスがゴーゴーと唸るような音を立て、金管やティンパニーが要所要所の決め所で強烈なくさびを打ち込む。第2、33楽章ではパリ管木管群の響きが冴え渡る。そして終楽章で音楽はますます即興的になり、より熱を帯びてくる。周到な練習を経て、合わせることに注力する演奏の対極といってもよい。第1楽章以上に低弦群が強調され、ティンパニーの強打にも一層力が入る。そして一気になだれこむコーダ。手持ちのこの曲の盤は二十指に及ぶと思うが、その中でももっとも熱い大団円だ。チェリビダッケやヴァントのような緻密で周到に仕組まれた演奏もいいが、ときにこのミュンシュ盤のラプソディックで熱っぽい演奏も聴きたくなる。これほど劇的な演奏を繰り広げたミュンシュだったが、この録音から十ヶ月後、パリ管との演奏旅行中、1968年11月に77歳で急逝した。
この盤の音源。全4楽章
第2~4楽章。1966年ORTF(フランス国立放送管)との来日公演。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■

にほんブログ村
- 関連記事
-
先日注文したFalcon_Acoustics社のQ77が到着した。

注文後、Falcon_Acoustics社の現社長Jerry Bloomfieldとメールを何通かやり取りしているうちに成田着。国内分費用もオンラインで済ませ、翌日には自宅ピンポンとなった。開陳、組立他、後日ゆっくりと。
そして今夜はこちらを…
https://www.nhk.jp/p/buratamori/ts/D8K46WY9MZ/episode/te/KQW16JL9J2/

■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■

にほんブログ村
- 関連記事
-
寒さもピークアウト。退勤時刻の夕方5時前後も随分明るくなった。少々心和む木曜の夜。リラックスモードにどうかと、こんな盤を取り出した。

カシオペア初のアコースティックアルバム「Hearty Notes」。1994年リリース。この「Hearty Notes」そして「Anserws」「Asian_Deamer」と、カシオペアはこの年一年で三枚のアルバムを作った。80年代半ばをピークに徐々に下火になりつつあったフュージョンそしてカシオペアだったが、90年代初頭はまだ大ホールでのライヴも打ち、アルバムリリースも積極的だった。このアルバム収録時のメンバーは、野呂一生(g)、向谷実(p)、鳴瀬喜博(b)、熊谷徳明(ds)。野呂一生も向谷実もまだ三十代だった。ぼくが一周遅れでカシオペアを聴き出したのもこの頃だ。
収録された10曲すべてがアコースティック楽器(Eb除く)で演奏されている。野呂一生のギターはスチール弦のアコギ、あるいはナイロン弦のエレアコが使われている。いつもはエフェクタ全開のナルチョも、しっとりとしたベースラインで別人かと思う程だ。8曲のオリジナルに加え、すでに彼らの代表作として知られていた「Dazzring」「Magic Ray」がアコースティックヴァージョンで加えられている。夕暮れ時を思わせるジャケットデザインを眺めながら、アルバムタイトルそのままの心安らぐ42分を約束してくれる名盤だ。
この盤の音源。全10曲
この盤と同じメンバーによる「Dazzirng」アコースティック版@1993年
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■

にほんブログ村
- 関連記事
-
先週記事にしたブルックナー第5交響曲。その後も通勤車中でブルックナーをあれこれ聴いていたが、きょうはあらためてその中の一枚を取り出した。


アントン・ブルックナー(1824-1896)の交響曲第7番ホ長調。90年代後半に出て評判となった通称ミスターS氏ことスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(1923-2017 )とザールブリュッヘン放響(現在の正式名称はザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団…覚えられない!)による一連の録音の一つ。最終的には全集を完成させたが、手元には4番、5番、7番、8番がある。この第7番は1991年のライヴ録音。
こうしてじっくり聴くとやはり名曲そして素晴らしい演奏だ。マタチッチ、ヨッフム、ベイヌム、コンヴィチュニー、ワルター、カラヤン、ブロムシュテット他、手元にある第7番の名盤の中にあって十分に伍していける演奏だ。 ライヴ録音という制約はほとんど感じさせず、響きは美しく透明だ。各声部の動きもよくわかる。単純に演奏したらこんな風にはならないだろう。スコアをよく読み各パートのバランスを完璧に心得て、それをオケに徹底させている証拠だ。これをもって職人技というべきか。それでいて総体としての音楽はゆったり深く流れる。随所で聴かれる金管群のコラールなども遠近感がよく出たアンサンブル。ブルックナーがしばしば室内楽的といわれる側面を感じる演奏だ。
幼少期には神童と言われたスクロヴァチェフスキは60年代から活躍していたが、決してメジャーな存在ではなく、特に日本では90年代後半以降に知られる存在となり、N響や読響の指揮台にしばしば立つようになった。90歳を過ぎても飄々として指揮台に上がっていたが、6年前の2017年2月に93歳で亡くなった。
この盤の音源で全楽章。
お急ぎの方は、第1楽章の冒頭開始から5分50秒までと、第3楽章スケルツォ46分53秒から56分22秒だけでもどうぞ。
2011年にBPOを振って絶賛されたときの演奏。当時87歳。ブルックナー第3番第4楽章スケルツォ。ほんのさわりだけ。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■

にほんブログ村
- 関連記事
-
きのうは立春。少し前からの寒波も峠を越した。日脚も伸びて、春の兆しも感じる。さて、週末日曜日。そんな春の訪れを音でも感じようと、この盤を取り出した。

リッカルド・ムーティの指揮するニューフィルハーモニア管弦楽団によるメンデルスゾーン(1809-1847)の交響曲第3番イ短調「スコットランド」。1975年録音。手元の盤は当時の国内初出盤。十数年程前に近所のリサイクルショップのジャンク箱から救済してきたもの。
リッカルド・ムーティ(1941-)の名を知ったのは、1975年にベームとウィーンフィルの来日に同行したときが初めてだった。多くの日本のクラシックファンにとっても、ベーム&ウィーンフィルをいう伝統の象徴のようなコンビに、よく知らないイタリア人の若造が付いて来て、やたらと張り切って指揮していた印象が残ったはずだ。一方でこの録音の少し前にはクレンペラーのあとを継いでニューフィルハーモニア管の首席指揮者(のちに音楽監督)になり、その後ムーティは予想以上に大成しメジャーオケを振って多くの録音を残した。この盤はそういう人気が出始めた頃の録音だ。この録音を聴くと、ムーティが万年青年然としたその風貌に似合わず、若い頃から曲によっては随分と落ち着いた演奏をしたいたことが分かる。
それだけ聴いてもこの曲の良さを堪能できる第1楽章の序奏は、この曲のベンチマークというべきペーター・マーク盤以上にじっくり構えたテンポで始まり、少々驚く。EMI録音の特性で、低音はしっかり入っているが強調感はなく、各声部はクリアかつしなやかで美しく響く。そして、この曲には珍しく提示部を繰り返している。トスカニーニ以来、イタリア人指揮者というと必ず、その徹底したカンタービレが代名詞のように言われる。実際このムーティ34歳のときの録音も、ヴァイオリンやチェロなど弦楽群がメロディーをとるときの歌いっぷりは中々だ。特に第3楽章のアダージョはことのほか美しく、真にアダージョらしく、かつ粘らず、おそらく手持ちの盤の中では白眉ではないだろうか。久々にこの盤を聴いてムーティのその後の人気ぶりを再認識した。 それにしてもムーティも今年82歳…こちらも歳を取るはずだ。
この録音の音源。第1楽章。
同 第3楽章アダージョ。第1楽章がスコットランドの荒涼とした大地を思わせるものだとしたら、この緩徐楽章にはかすかな春の訪れを感じる。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■

にほんブログ村
- 関連記事
-
つい先日、英国Falcon_Acousticsへスピーカーを発注した。

十年程前、それまで使っていた2S-305から小型スピーカーへの乗り換えを試行。しかしその後紆余曲折を経て再び中型そして2S-305再導入という、オーディオあるあるのスットコドッコイを演じてしまった。道楽人間なんて勝手なもので、大きいのを手に入れば小さいのが欲しくなる。その逆もまた真なりで、結局当てのない道楽ワンダリング。実は少し前から小型スピーカーモードに突入していた。大は小を…兼ねないのだ。
小型(ブックシェルフ)スピーカーの選択は実に悩ましい。あまりに数が多いし、試聴すれば決まるかというと、そもそもスピーカーの店頭試聴は参考にすらならないことがほとんど。自宅環境との差が大きすぎるからだ。ネット情報、雑誌情報、ためつすがめつ…。堂々巡りもどこかで終止符を打たねばと決心。選んだのはロジャース社オリジナルに端を発するLS3/5aだ。
このあまりに有名なLS3/5aについてここで語る気も資格もない(ネットに山ほど情報有り)。現在、新品入手できるLS3/5a系のスピーカーは何種類かある。オリジナルに忠実に作りBBC認定を受けているもの(Stirling_Broadcast、Falcon_Acoustics、Graham_Audio等)、形態や思想を受け継ぎながらもモディファイしたもの(Spendor、Harbeth等)まで。もちろん中古市場でもタマが多いし、本家ロジャーズブランドのアニヴァーサリーモデルの在庫がまだあるようだ。
悩んだあげく選んだのは英国Falcon_Acoustics社のもの。Falcon_Acoustics社は欧州におけるスピーカーユニット、部品の供給メーカーとしてメジャーな存在。何よりオリジナルLS3/5aのユニットを供給していた当時のKEFでユニット開発に携わったマルコム・ジョーンズが起こした会社だ。同社のLS3/5aも評価が高い。但し今回ぼくが選んだのはLS3/5aそのものではなくLS3/5aをベースにしたQ7というモデル。 LS3/5aのキャビネットを奥行き方向のみ少し拡張し、さらに自宅でユーザーが組立てるようキット化したもの。Q7はQ=0.7から取られた。それが何を意味するかは、スピーカー工作を少しかじった輩ならピンとくるだろう。小型にも関わらず想像以上の低音感が得られるLS3/5aだが、さらにそのエンクロージャ容量を増やして低域を拡張している。解説によれば低域拡張による悪影響が出ないよう十分考慮されている様子。もちろんユニットやネットワークはLS3/5a同様のものが使われている。組み立てはネジ止めとワイヤ端子挿入で小一時間もあれば完成だという。Falcon_Acoustics社のLS3/5aは国内ではヨシノトレーディングが扱っているが、Q7は取り扱いがない。英国Falcon_Acoustics社へ問い合わせると日本への発送は可能ということで、送料込みの見積もりを送ってくれた。
ロジャーズ社オリジナルのLS3/5aにこだわってヴィンテージ物を探すもよし、現代のレプリカを探すもよし、ややモディファイしたモデルを選ぶもよし、お手頃価格の中国メーカー製キットでもよし。こうした選択肢が現在も途切れることなく存在することに驚く。さすがは歴史的名器だ。すでにPayPalで支払いも済ませた。到着が楽しみだ。
すでに同好の士による動画もある
同 組立篇
LS3/5a小史
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■

にほんブログ村
- 関連記事
-