気付けば三月も下旬。年度末の業務も片付け、余裕の休暇取得。お上りさん東京散歩の続き。今回はいよいよ本丸?!東京大学本郷地区キャンパスへ。その歴史ある建築群を一度見ておきたいとかねがね思っていたが、これまで畏敬の念もあって機会がなかった。見学だけなら試験は不要とのことで(^^、偏差値気にせず安心してのりこむことにした
最寄り駅の地下鉄丸ノ内線・本郷三丁目を出て本郷通りを北進する。

赤門

正門

正門から銀杏並木を進む。春休みのためか学生の姿はまばら

法文2号館。雰囲気のあるアーチ回廊


東大の象徴「安田講堂」前に出る

安田講堂地下の学食でメシ

三四郎池

医学部2号館本館

総合図書館


構内は設計者:内田祥三(1885-1972)の手になる通称「内田ゴシック」のオンパレード。スクラッチタイルとシンメトリーかつ末広がりの重厚な建物が続く。いずれも100年近くの歴史を背負う。 ゆるゆると巡ること小一時間。構内一巡したところで一服。正門前の喫茶店「ルオー」に入る。雑誌の特集ではよく取り上げられる店だ。

いつもなら東大生に賑わっているのだろうが、キャンパス構内同様、ここも春休みゆえか客はまばら。おかげで丁寧に供された珈琲と菓子(リンゴのタルトをチョイス)で穏やかな時間を楽しんだ。さて、もう少し歩こうかと、農学部のある弥生キャンパスへ進む。
農学部への門(農正門)

農学部2号館

農学部3号館

頑張れ東大野球部!

初めて足を踏み入れた東大キャンパス。うわべだけのミーハー散歩であったが、歴史を刻んだ建造物と構内の樹々が織りなす造形に脱帽。そしてそれらに相応しい選ばれし真摯な学徒が日夜、勉学・研究に打ち込む姿を想像し、思わず「日本を頼むぞ」と心の中でつぶやいた。見知らぬ彼らに勝手な期待を願いつつ本郷三丁目へ戻り、駅チカの名曲喫茶「麦」にて大休止。東大オケの第二部室と異名をとるらしい。喫煙OK・激安メニュー。昭和にタイムスリップしたかのようなひとときを過ごして散歩を終え、帰途についた。
珈琲とジャムサンドで550円也

東大生によるミニツアー
総合図書館
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お上りさん東京散歩、きょうはお休み。久々に本業回帰で音盤タイム。先日、阿佐ヶ谷ヴィオロンでかかっていた、この曲を取り出した。

カレル・アンチェル(1908-1973)指揮チェコフィルハーモニーによるスメタナの連作交響詩「わが祖国」の全曲盤。しばらく前にアンチェルの録音が廉価盤でまとまってリリースされた際の一枚。1963年録音。
多くの曲でキレのいい、スッキリと引き締まった造形を聴かせてくれたアンチェルとチェコフィルだが、この盤ではやや趣きが異なり、少しロマンティックに寄った解釈をみせる。やはり曲が曲だけに、彼ら自身の血に直接訴えるのだろうか、あるいは聴く側のぼくの方に心理的バイアスが加わるのか、多分その両方だろう。有名な第2曲ヴラタヴァ「モルダウ」など聴いていると、テンポはゆっくり目だし、前半もやや抑え気味の表情付けで実にしみじみと歌いぬく。また第3曲のシャールカでは終盤の劇的な展開に目を見張る。第5曲「ターボル」冒頭の序奏では、強烈なティンパ二の強打と、終始浸透力のあるファンファーレを聴かせる金管群が印象的だ。チェコの殉教者;ヤン・フスの不屈の魂を表現しているのだろう。
こうして連作交響詩<わが祖国>全曲をあらためて聴いてみると、その名の通り、様々なモチーフを連ねた実に立派な交響作品で、大規模な広義のソナタとしての交響曲とは当然異なる趣きだが、モルダウの美しい旋律だけに耳を奪われず、ぜひ他の曲も通して楽しみたいと、今更ながらに感じた次第だ。
この盤の音源。第4曲「ボヘミアの森と草原から」
貴重な映像。1968年プラハの春音楽祭。音楽祭の開催がスメタナの命日に合せた五月初め。この年の夏以降ソ連侵攻によりチェコ動乱が始まることになり、そしてアンチェルは翌年亡命し祖国を離れる。何度かこのステージを踏んだアンチェル&チェコフィルの最後の演奏だったに違いない。残念ながら音はモノラルで冴えない。
モルダウの後半。晩年を送ったカナダでの演奏がこちらに。1969年、小澤征爾のあとを受けるかたちでトロント交響楽団のシェフになったが、4年後の1973年には世を去った。
!マークが出るが、YouTubeで見るとクリックすればOK。
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お上りさんの散歩ネタが続く。先日は喫茶店、それも名曲喫茶を称される店のハシゴ。阿佐ヶ谷、渋谷、新宿と徘徊した。
まずJR中央線阿佐ヶ谷駅へ。目指すは名曲喫茶ヴィオロン

渋い佇まいのスターロードを進む。この道、その名の通り輝くのは陽が落ちてからだろう。

住宅地を進み、到着

撮影ダメよとも書いてなかったので、失礼して静音モードでパチリ。古色蒼然たる店内。

昭和仕様のコーヒー。

店先のディスプレイには古典球とSP針のケース。

1979年開業というから、この手の名曲喫茶としては比較的新しい店だ。随分前から雑誌の記事で度々見かけ、店先の壁に飾られたチェロの表板が印象的で一度訪ねたいと思っていた。店主がウィーンのムジークフェラインを模して作ったという店内は、40年の時を経て程よいヴィンテージ感。洞窟の奥から響いてくるような独特な音は現代的なハイファイ指向とは別物で、一般家庭で再現するのは難しいだろう。スメタナの「わが祖国」の終盤を聴き、曲がモーツァルトのd-mollの交響曲に変わったところで店をあとにした。
続いて渋谷へ。目指すのは名曲喫茶ライオン。20年ぶりの再訪だ。
109を右手に見ながら道玄坂を登る。

百軒店に入る。以前の印象では、昼間の人影はまばらで、肩を寄せ合う男女がスッと消えるような施設が並ぶエリアだったが、昨今は変化があるのだろうか。飲食店やちょっとしたバーが増えたような気もする。

そんなことを考えつつしばし歩くと、突然ライオンの看板が現れる。

店内は撮影禁止。もちろん私語も禁止。ひたすら壁面にしつらえられた自慢の大型スピーカーに対峙して音楽を聴く。外国人観光客も何組かいた。ガイドブックに載っているのだろう。戦前生まれで都内の名曲喫茶の中では老舗中の老舗。帝都随一、立体音響、立体名曲…。以前初めて訪れたときも感じたが、巨大といっていいオリジナルのスピーカーシステムは、これで聴くワグナーや如何にと、想像をたくましくさせるに十分だが、期待は程々にしておいた方がよいだろう。もちろんこちらも、家庭で再現できる種類の音ではなく、相応の価値があるだろうが…

興にのって、当初予定していなかった三軒目。渋谷から新宿へ。目指すは「らんぶる」

地下鉄新宿三丁目で下車。マルイ裏手の新宿中央通りを進むと到着。


名曲喫茶と名のるものの前記2店と異なり、広く快適な空間、清潔に整えられた調度など、「名曲」を除いた一般の喫茶店として立派な店だ。もちろん程よい昭和レトロ感も漂う。Z世代が一人スマホを眺めて座る今時のカフェと違い、訪れた日も若いカップル、女性グループ、外回り勤め人等々、見慣れた光景に安堵した。


名曲喫茶がもてはやされたのは昭和30~50年代、正に昭和時代。レコードが貴重品で、オーディオ装置も一般家庭で揃えることが難しかった時代の産物。特にクラシック音楽専門の名曲喫茶は今や絶滅危惧種の扱いだ。ヴィオロンとライオンは昔のままの路線で健在。荻窪ミニヨンも新装された直後に行ったことがあるが、今も繁盛しているようす。新宿コマ劇場近くにあって、閉店直前に入ったことがあるスカラ座は現在、軽井沢で看板をあげている由。近年は何回目のカフェ・珈琲ブームのようだ。オーディオ自慢の新しい店も出てきている様子。かつての老舗で味わうレトロ感も貴重だが、機会があれば新しい店も覗いてみたいものだ。
渋谷「ライオン」
阿佐ヶ谷「ヴィオロン」
新宿「らんぶる」
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都内での仕事の間隙をぬって、お上りさんの東京散歩。先日、かねてより一度目にしたいと思っていた文京区の東京カテドラル聖マリア大聖堂(関口教会)をようやく訪れることができた。事前に地図を眺めつつコースを検討。今回は地下鉄茗荷谷駅からスタートし、小日向から音羽へ出て関口へという順路に決めた。

丸ノ内線・茗荷谷駅で下車

駅チカの定食屋で腹ごしらえ。魚がウリの店らしいが、ネットに「トンカツがヤバい!」とあったので、それにのる。美味でした。

貞静学園の瀟洒な校舎。近くには跡見学園女子大学、お茶の水女子大、筑波大附属高校(旧東京教育大跡地)等、まさに文京地区

程なく現れる拓殖大学本館。1932年・昭和7年完成。埋込みの時計、シンメトリーな建屋等。校舎建築の王道。

文京区のこの辺り、小石川~茗荷谷~小日向~音羽は台地と谷が交錯し坂道も多い。漱石や鷗外の小説にも出てくるという鼠坂を下る

音羽通りに出る。遠方に見える高層ビルは講談社新社屋。その手前に名建築で名高い講談社旧本館が隠れている。

音羽通り沿いの鳩山会館。鳩山一族のかつての住まい。通称「音羽御殿」





音羽通りを渡って関口へ向かう。鳥尾坂を登ると獨協中高グランド越しに…見えてきました

東京カテドラル聖マリア大聖堂(関口教会) 丹下健三設計 1964年竣工




目白通りの陸橋から望む。背後には椿山荘

東京カテドラル聖マリア大聖堂。その名を初めて聞いたのはもう40年以上前のこと。1980年に朝比奈隆と大阪フィルによるブルックナーの演奏が行われ、レコードも発売されたときのことだ。レコードは手に入れなかったが、「東京カテドラル聖マリア大聖堂」という名前の語感に強い印象を受けた。その後、この聖堂で行われたカール・リヒターのオルガンリサイタルのCDを手に入れ、大聖堂に響く荘麗なオルガンの響きに圧倒されたものだ。 今回ようやく目にすることが出来た大聖堂。折からの陽射しに輝くその様相に、息をのむ美しさというのは、こういうことを言うのだろうと実感した。
空撮による東京カテドラル聖マリア大聖堂
1967年のこの辺りの様子
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年度末の業務も予定通り完了の見込みとなった先日、都内での仕事を昼前で切り上げ、折からこの秋の閉館を前に「さよなら公演」中の国立劇場へ足を運び、歌舞伎を楽しんできた。三宅坂の国立劇場は最寄りの地下鉄駅から少し歩く必要がある。この日は天気もよかったので東京駅から皇居沿いに、2キロ半程を歩いて行くことにした。

まずは腹ごしらえ。マグロの養殖で名を馳せた近畿大学。その出店が東京駅改札内にある。大学産直の本マグロ・鯵・鯛の三色丼。美味でした。

東京駅から行幸通りを進む。

お堀端から望む丸ノ内のビル群。

内堀通りを南進。遠くに霞んで見える高層ビルは、数年前に通称マッカーサー通りに完成した虎ノ門ヒルズ森タワー。

桜田門にさしかかる。

桜田門を出ると正面にお馴染み警視庁。少し行くと議事堂が見えてくる。

振り返ると遠くに桜田門と丸ノ内ビル群

白亜の最高裁。国立劇場はそのすぐ隣りだ。

到着。

3階から吹き抜けを望む。

この日の演目は、源氏の旗揚げを描いた「鬼一法眼三略巻」から「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)・二幕」そして義経(牛若丸)と弁慶の出会いを描いた「五條橋・一幕」。客の入りは少々寂しい程だったが反面、前日のネット経由でも良い席が簡単に取れた。
かつて歌舞伎に幾度となく通った二十代の頃、国立劇場にも何度か足を運んだ。文楽も観たし、裏手にある演芸場へもいった。ついこの間のような気がするが、それもこれも80年代初頭のこと。かれこれ40年前になる。1966年の完成から半世紀余となって閉館、建替えと聞き、まだまだ美しい佇まいを見せる大劇場にそんな必要はつゆほどもないように見えるが、70年代から90年代さらにミレニアムから20年と考えると、年月の長さを実感する。どうりでこちらも歳をとるはずだ。
数年前、50周年を迎えた際の映像
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春到来を感じさせる日が続き、ようやく楽器を取り出すのも億劫ではなくなってきた。仕事が一段落ついてこともあって、きょうは休みを取って、終日ダラダラと過ごす。午前中はギターを取り出し、この曲をさらった。

シモン・モリトール(1766-1848)のソナタ・イ短調作品7。実は少し前のこと、所属している隣り町のマンドリン楽団の練習のとき、指導者の新井貞夫先生から「与太さん、この曲は弾いたことある?」と楽譜を渡された。モリトールの名と、代表作としてのこのソナタがあることは手持ちの古い本で知ってはいたが、楽譜を手にするのは初めてだった。「技術的にはさほど難曲というわけではないが、古典的フォーマットを知るには格好の教材」とのことで、その場で初見でポロポロと弾いてみると確かに、中上級者なら初見で7割程度は通せそうだし、出てくる音もカルリやカルカッシ、ジュリアーニらで馴染んだイディオムが多い。言い換えれば、新鮮味や面白みには少々欠けるとも言える。
この作品を弾く価値は、程々の技術的難易度ながら、4楽章形式の古典派ソナタの典型に触れられるということだろう。第1楽章は序奏付きのソナタ形式。第1主題、第2主題、展開部、再現部と、それこそ絵に描いたように明解に書かれている。第2楽章は穏やかなアンダンテ、第3楽章はトリオ付きのメヌエット、第4楽章は6/8拍子のロンドと、まったく教科書的な構成。一般の弦楽器やピアノならば、学習初級者向けの古典派ソナタも多くあるだろうが、ギター曲となると限られ、このモリトールは貴重な作品だ。
クラシックギター学習者は、古典派の教則本や小品を少しやったあとソナタに進まず、ロマン派や近現代の作品に飛ぶことが多い。何をどう弾こうが勝手だし、何も教条的になる必要はないが、他のクラシカルな楽器愛好者や音楽愛好者と交流する際、共通言語としての古典形式の会得はやはり必須と思う。そのためのサンプルとして、このモリトール作品は技術的難易度も音楽的な感興も万事程々で少々物足りなくもあるが、古典様式のお手本として良い教材だと思う。
楽譜付き音源。全4楽章
モリトールはギターを含む室内楽もいくつか残している。
以下は作品6の三重奏から第3楽章ポロネーズ
IMSLPでモリトールの作品が10曲ほど見られる。
https://imslp.org/wiki/Category:Molitor,_Franz_Simon
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三月に入って一気に春になった感あり。あと十日もすれば桜の便り。ついこの間までの酷寒が嘘のようだ。年度末納期の仕事も目途がつき、さて今夜はリラックスして、こんな盤を取り出した。

数年前に94歳で亡くなったトゥーツ・シールマンス(1922-2016)のハーモニカ。1998年のリリースでヨーロッパテイストの曲を取り上げた「Chez Toots」というアルバム。「パリの空の下」「ムーラン・ルージュの歌」といったお馴染みの曲もあり、日本人好みのノスタルジック路線の盤だ。有体に言うなら<カフェに流れるおしゃれな音楽>というところ。セールス的にも好成績のアルバムらしい。ダイアナ・クラール、ダイアン・リーヴス、ジョニー・マチスといった大物がゲスト参加していて、一枚通して飽きさせずに聴かせる。たまには箸休めによろしでしょう。
2012年10月。シールマンス90歳。
90歳になってもこのくらい音楽を楽しめたら、さぞ楽しかろう。
この盤の音源。「Sous le ciel de Paris」
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