フンメル ピアノ協奏曲集



月があらたまって令和五年弥生三月。しばらく前からリビングのおいてある桃の枝木も満開だ。たった一日違いでも、三月というだけで気分が明るくなる。さて、きょうも年度末納期の業務と格闘し、8時過ぎに帰宅した。先日来の協奏曲続き。今夜はこの盤を取り出した。


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ヨハン・ネポムク・フンメル(1778-1837)のピアノ協奏曲を収めたナクソスの盤。
チャン・ヘーウォンという韓国人女性がソロを弾き、タマーシュ・パール指揮ブダペスト室内管弦楽団がバックを務める。ナクソスがまだ今ほどに市民権を得ていなかった初期の頃、1987年の録音。フンメルの5曲ある番号の付されたピアノ協奏曲のうち第2番と第3番のいずれも短調の作品が収められている。

フンメルはベートーヴェンとほぼ同時期の作曲家。ウィーン古典派の最後期、ロマン派へ移行する時期に活躍した。ハイドンのあとを受けてエステルハージ家の宮廷楽長に任に就き、ベートーヴェンはもちろん、メンデルズゾーンやショパンとも交流があり、当時ヨーロッパでの実力・人気ともベートーヴェンと二分したというから、巨匠の一人といっていいだろう。その大物ぶりに比して現代での知名度、人気はいま一つといわざるを得ない。そういう先入観を横において、あらためてこの盤の2曲の協奏曲を聴くと、いずれも30分を要する堂々とした構成、短調らしい劇的な展開等、これが中々素晴らしい。

第2番イ短調の第1楽章は序奏なしで冒頭からキャッチーな短調の主題で始まる。古典的構成と穏やかなロマン派初期の肌合いが心地いい。ベートーヴェンほどの展開力はないが、第1楽章だけで16分を要する規模は当時としては大きい方だし、数々の魅力的なフレーズや経過句は十分美しい。ピアノ独奏部分の扱いにも中々テクニカルだ。第3番も冒頭から魅力的な短調フレーズが連続する。かなり斬新な和声もみられ、メンデルスゾーンの作風を思わせる初期ロマン派テイストの佳曲。第2楽章ラルゲットには美しいホルンのアンサンブルによる長い導入部があって印象的だ。


この盤の音源。第2番イ短調第1楽章


同 第3楽章 冒頭の雰囲気は完全にロマン派。ちょっとショパンを思わせる。



この盤の音源。第3番ロ短調の第2・第3楽章。第2楽章冒頭の美しいホルンアンサンブルが印象的。



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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