チック・コリア「Return to Forever」
三月最初の週末日曜日。昼をはさんで道楽部屋の掃除。自治会事務仕事を片付けながら、久しぶりにこの盤を取り出した。

1972年に録音され70年代のジャズ・フュージョン最大のヒット作となったチック・コリアのアルバム。あまりに有名な盤だし、ぼくら世代にはとりわけ懐かしくかつ見慣れたジャケットデザインだ。70年代半ばはちょうどぼくの学生時代、四畳半フォークに飽き足らない少しスノッブな音楽好きは、大体がジャズを聴いていた。当時のそうした連中の下宿に必ずあったレコードがこの「Return to Forever」だ。他によく見かけたアルバムといえば、ウェザー・レポートやキース・ジャレットの「ケルン・コンサート」あたりだったろうか。同時期にベストセラーになったリチャード・バック著「かもめのジョナサン」と記憶が重なる輩も多いだろう。
このアルバムのリリース元であるECMレーベルは「沈黙の次に美しい音」をコンセプトにしているという。コンテンポラリージャズの他にクラシック、特に現代音楽に積極的なドイツのレーベルだ。80年にアルヴォ・ペルトを広めたのもこのレーベルだった。
まったく予備知識なく、この盤をオーソドクスなジャズアルバムと思って聴くと少なからず驚くだろう。クラシックにそこそこ親しんだ人なら、明らかに現代音楽それもミニマルミュージックのアルバムと思うに違いない。コテコテのビバップはもう飽きた、その後の60年代フリージャズはやかましいだけだ…そう感じていた70年代初頭のリスナーに対するチック・コリアの回答がこの盤だということになるのだろう。収録曲は以下の通り。
1.リターン・トゥ・フォーエヴァー
2.クリスタル・サイレンス
3.ホワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ・トゥデイ
4.サムタイム・アゴー~ラ・フィエスタ
アルバムタイトルにもなり、のちにバンド名にもなった第1曲<リターン・トゥ・フォーエヴァー>はそれこそミニマル風の静かな出だしで始まる。およそ5分間、単調な和声とリズムを繰り返しつつ次第に高揚。一旦頂点に達したのち再び冒頭の静けさに戻る。これをもう一度繰り返して12分間の曲が終わる。ジャズファンよりは近現代のクラシックファンの方がストレートにこの音楽を楽しめるに違いない。
チック・コリアが弾くフェンダー・ローズピアノの音も今聴くとレトロで独自の雰囲気があるし、スタンリー・クラークのベースもスリリングだ。ぼく自身は第3曲の<ワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ・トゥデイ>だけがいやにポピュラリティが強く違和感を覚えるが、アルバムトータルとして傑出した盤であることにはまったく異論はない。このジャケットを眺めながら「沈黙の次に美しい音」に相応しいタイトルチューンを聴いていると、あす目覚めたらカモメになって、悩みながらも空を飛んでいてもいいかなと思ってしまう。
手持ちの盤からアップした。「Return to Forever」
同 「What Game Shall We Play Today」
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