コリン・デイヴィスの「ザ・グレート」
黄金週間真っ最中の昼下がり。昨今の電力料金を気にしながら消費電力大のA級アンプA-70の灯を入れ、この盤を取り出した。

コリン・デイヴィス(1927-2013)とシュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるシューベルト交響曲全集。1994年から1996年にかけてのセッション録音。録音会場は例によってドレスデン・ルカ教会。数年前にCBSソニーの輸入限定盤として発売されたもの。4枚組で2000円程。昨今、メジャーレーベルのボックスセットは大体こんな価格設定だ。
この盤を手に入れたのと同時期にブロムシュテット&SKD、スウィトナー&SKB(シュターツカペレ・ベルリン)のシューベルトを続けて手に入れ、前後してこの盤のリリースを知った。シューベルトの演奏もベームやカラヤンのかつての重厚長大路線から多様化し、ピリオドスタイルの演奏もすっかりお馴染みなったが、さて、その間の世代とでもいうべき、ブロムシュテットやスウィトナーそしてこのコリン・デイヴィスらによる中庸をいく演奏はどんなもんのかいな、しかもオケはSKDやSKBといった伝統色の強い団体であれば…と、まあ、そんな興味から一連の録音を確認し出したという次第。
きょうは第9番ハ長調「ザ・グレート」を取り出して聴いているのだが、演奏の性格をひと言で言い表すとすれば、<室内楽的な演奏>とでも言ったらいいだろうか。第1楽章からSKDの各パートが互いに聴き合うかのように美しい響きを奏でる。決して大声を出さずに楚々として、と言ってもいいほどだ。後半の第3楽章スケルツォ、第4楽章アレグロ・ヴィヴァーチェに至って音楽は次第に熱気を帯び始めるが、音響バランスは常に安定し、ヘッドフォンでそこそこの音量で聴いていても、耳元でのうるささを感じない。 90年代後半のセッション録音ということもあって音質も上々。SKDのしなやかな弦楽群、やや遠めに定位する木管群、この曲で重要なトロンボーンの重厚かつ柔らかな響きも万全。低音は一聴すると量は控え目だが、帯域はコントラバスの低い基音までしっかりとらえられて、時折りピアニシモで奏でられるピチカートが深く悠然と聴こえてくる。
この曲に関しては、フルトヴェングラーやチェリビダッケの細部まで徹底的にこだわりぬいた演奏やベームの武骨なまでに悠然とした演奏、ロイ・グッドマン&ハノーヴァーバンドの新感覚の演奏などが手元にあって、いずれも貴重な名演であるが、このコリン・デイヴィス&SKD盤は同団の伝統的な美しい音とデイヴィスの中庸を心得た解釈を最良の録音で聴けるという意味において、やはり唯一無二の存在だ。
この盤の音源。交響曲第9番 第1楽章
このボックスセットの全8曲(第1~6、8、9番)
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