現代ギター誌を読む_#2_1967年5月号
半世紀以上の歴史をもつクラシックギター専門誌「現代ギター」を紐解くシリーズ。先回の創刊号に続き、きょうは第2号を取り上げる。


先回も記した通り、ふとしたことから古い現代ギター誌を譲り受けることになり、ひとまず1967年の創刊から10年程のバックナンバーが手元にやってきた。ぼくがクラシックギターを弾き始め、現代ギター誌を知ったのは70年代になってからのこと。それ以降、現在に至るまで飛び飛びに記憶もあるのだが、それ以前、60年代後半の数年間の様子は今回初めて触れることが出来た。
さて、ジュリアン・ブリームが表紙を飾る第2号の1967年5月号。「教材・合奏」という特集が組まれている。特に合奏に力点が置かれていて、真鍋理一郎氏司会のもと、石丸寛、近衛秀健、新堀寛己、玖島隆明、酒井富士夫による「ギター合奏の功罪と可能性」という座談会の様子が6ページに渡って記されている。創刊からほどない時期に合奏の特集が組まれていることに驚いた。おそらく当時はギター合奏の勃興期として様々なトライアルが行われていたのではないかと想像する。ギターとは直接縁のないクラシック音楽界の石丸寛と近衛秀健の二人はおそらくギター合奏自体をほとんど聴いていなかったのだろう、他のギター関係者の面々との話が少々噛み合わない。やはり合奏という視点で気を吐いていたのは当時まだ三十代前半だった新堀氏だ。酒井氏、玖島氏らが数名のアンサンブルに価値を見出すような発言をする中、新堀氏は多人数、音域を拡張したギター等へ指向が明確だ。新堀氏が以降今日に至るまで展開してきた「新堀式」に眉をひそめる輩も多いのだが、半世紀以上前から確信と共に継続してきた姿勢には感心してしまう。



第2号は総ページ数64頁。楽器そのものに関する記事もいくつかあって、この号から本誌発行人であるギター製作家:河野賢氏による「ギター製作講座」がスタートしている。河野氏は本誌創刊のこの年1967年、ベルギーで開催されたエリザベス・コンコース国際ギター製作コンクールで金賞を受賞、国内外で知られる存在となった。「現代の名工」という記事では中出阪蔵氏が取り上げられ、12歳でヴァイオリン製作の宮本金八に弟子入りした頃の様子が記されている。また、当時盛んに出回っていた量産ギターの広告も目立つ。高価な手工品や外国製の広告はまだ少ない時期だった。創刊号でハウザー1世1937年作が取り上げられていた「銘器紹介」では、中林淳真氏所有のトーレスが紹介されている。中林氏がメキシコを訪れた際に現地の音楽院教授から譲り受けたものとのこと。但し、製作年、製作番号等の情報はない。


60年代にイケア・セキ彗星で名を馳せたアマチュア天文家にしてギター指導者の関つとむ氏の連載、渡仏したのちにアンリ・ドリーニとデュオを組んで活躍した伊藤亜子氏(たまたま現在書店に並んでいる2023年6月号に彼女へのインタビュー記事がある)の海外研鑽風景のレポート、大西慶邦、高木孝、兼古隆雄など当時の気鋭ギタリストの演奏会評等々、限られた紙面ながら創刊当時のこころざしが端々にみられ、興味深い。
伊藤亜子とアンリ・ドリーニによる演奏
Ako Dorigny(伊藤亜子)の今
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