ケンペの「英雄」



風薫る五月というけれど、どうも今年はそんな日がほとんどなかったように感じるは気のせいだろうか。月があらたまってから、じわじわと湿度感を増すきょうこの頃。夜半近くなって少しひんやりとした空気を感じながら、さて今夜の「盤ご飯」。久しぶりにこの盤を取り出した。


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ルドルフ・ケンペ(1910-1976)とミュンヘンフィルハーモニーによるベートーヴェンの交響曲全集。70年代初頭の録音。この頃ケンペは指揮者としてのピークにあって、このベートーヴェン他、ブラームスの交響曲、ブルックナーのいくつかの交響曲、リヒャルト・シュトラウスの管弦楽曲など、次々と録音を重ねていった時期にあたる。手持ちの盤は2000年に当時の廉価盤ボックスセットのラッシュをBrilliant_Classicsと競ったDisky_Classicsから出たもの。原盤はEMI。 この盤を手に入れた当時はいま思うと恥ずかしいくらい音盤を買い漁っていた。ベートーヴェンも同時期にかつての名盤が続々とボックスセットでリリースされたこともあって、我ながら完全に制御不能な状況がしばらく続いた。このセットもそんな時期に手に入れたものだ。今夜は久々にボックスケースを開け、第3番変ホ長調「英雄」をプレイヤーにセットした。

第1楽章冒頭、Es_durの主和音が驚くほど柔らかなタッチで響く。ハンマーを思い切り叩きつけるようなアインザッツの対極だ。テンポは当時の平均的な設定といったところだが、拍節のアクセントやフレーズの緩急の具合など万事が穏やかかつ中庸なためか、一聴してテンポが遅く感じられる。そしてミュンヘンフィルの落ち着いた音色。おそらく当時も今も、この手の演奏は「派手さのない」「滋味あふれる」「堅実な」…といった形容詞で飾られる。あの手この手を尽くし、聴き手を飽きさせまいとする演奏と比べたら、ツマンネェ~と一蹴されかねない演奏かもしれない。しかし、さすがに聴き手のこちらも馬齢を重ねたからか、この手の演奏のたくまざる奥深さ、味わい深さに十分反応できるようになった。流麗で起伏に富み、爆発も嘆きも全開といった演奏にいささか食傷気味なった頃、こういう演奏を聴くと、飾らない昔ながらの中華そばに出会ったような感じを受ける。楽譜に忠実に過剰な演出をさけ、調和を旨とし…そんなケンペのイメージがそのまま音になったような演奏。久々に聴いたが、心温まる「英雄」だった。


この盤の音源。第1楽章


晩年1975年、ストックホルムフィルとのライヴ。ミュンヘンフィル盤と比べ、少しテンポが遅いように感じるが、演奏全体の印象はよく似ている。



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