ベートーヴェン弦楽四重奏曲第11番ヘ短調「セリオーソ」
先日聴いた「ラズモフスキー」で思い出し、きょうはこの盤を取り出した。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第11番ヘ短調「セリオーソ」作品95。手元にはアルバン・ベルクカルテットの盤(初回録音)、ゲヴァントハウス四重奏団の比較的新しい録音などがあるが、今夜は50年代モノラル時代の名盤、バリリSQの全集盤を取り出した。手持ちの盤は60年代のおそらく国内初出盤。ミント状態のボックス入りセットに980円のプライスタグが付いているのをリサイクルショップで見つけ、小躍りして買い求めた記憶がある。
「セリオーソ」というベートーヴェン自身が付けた題名通りの曲想。中期から後期に至る狭間に作られ、ラズモフスキーセットのような問答無用の充実感とはひと味違う凝縮感。全4楽章通しても20分程で決して大きな曲ではないし、いかにもベートーヴェンという展開に圧倒される感もない。
第1楽章は切羽詰まったような主題で堰を切ったように始まるが長くは続かず、ふと緊張の糸を緩めたように力を抜くフレーズが現れる。以降も所々煮え切らない様子が続く。 第2楽章は安息に満ちた主題で始まる。しかし不安そうな気配が続き、意味深長な減七和音で擬終止したのち 第3楽章がアタッカが始まる。 第4楽章も哀歌を聴かせながらも、最後は突然あっけらかんとしてFdurに転じてしまう。ベートーヴェン自身の模索とも諧謔とも言われる理由がよく分かる曲だ。
バリリSQの演奏は、たっぷりとしたヴィブラート、時に波打つような大きな抑揚表現など、現代的視点でいうとひと世代前のスタイル。アンサンブルの精度も昨今のレベルからみると見劣りする。しかし、モノラル盤の太く温度感のある音質も手伝って、この曲の凝縮感に程よい肉付きを与えたような演奏で中々好ましい。
バリリSQによるこの盤の音源。
マーラーはベートーヴェンやシューベルトなどの曲をいくつか編曲・改編している。「セリオーソ」にもマーラー編の弦楽合奏版がある。当然だが、弦四編成とはまったく印象が異なる。マーラーの意図通りだろうが、ロマン派色が濃厚になり、そぎ落とされた凝縮感でなく、悲劇性と同時に豊かな抒情性が表出する。素材の良さは紛れもなしというところだろう。大阪音大のオケによる第1楽章。(第2楽章以下もあり)
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