ジョン・ウィリアムス(g)のCBS初期録音



少し前に書いたジョン・ウィリアムスのウェストミンスター録音の関して非公開コメントをいただいた。「手持ちのLP盤とブログ記事に貼られたCD音源(YouTube音源)とはピッチが違う」と記されていたのだが、その後同じ方から「…あらためて手持ち複数台のオーディオ機器で確認したところ、ピッチの違いは確認できなかった」とのコメントがあった。その方は以前からLP盤に親しんでいたが、数年前にCDがリリースされた際、それを手に入れ聴いたとき、ピッチの違いとそれに付随する違和感を感じたとのことだった。LPとCD、あるいは初出盤とリマスター盤など、同じ演奏ながらかなり違った印象をもつことはままあるようだ。私にも同様の経験がある。その違った印象が音のピッチの違いと感じる程の違和感になる、そういう事例かもしれない(もちろん実際にピッチが違う場合もあるだろう)。再生装置のコンディション、聴く側の耳のコンディション、様々な要素が関連して再生音楽が成り立つ。いろいろな不思議は無理からぬことだ。そういうことがあるのだと、あらためて承知しておこうと思う。(〇〇さん、コメントありがとうございます。参考になりました。) さて、そんなこともあって、きょうはジョンの録音が本格化したCBS時代の初期の盤を取り出した。


202404_JohnWilliams_CBS.jpg


70年代初頭、高校時代に買ったジョン・ウィリアムス(1941-)の盤。ジャケットはオリジナル初出時のものとは異なると思うが、内容は彼のCBSへの最初の録音(1964年)そのものだ。収録曲は以下の通り。

Side_A
J.S.バッハ/組曲第4番ホ長調 BWV1006
Side_B
アルベニス/セヴィーリヤ
タレガ/アルハンブラ宮殿の思い出
トゥリーナ/ファンダンギーリョ、ソレアレス、ラファガ
カタルーニャ民謡/アメリアの遺言
ポンセ/スケルツィーノ・メヒカーノ
ザグレラス/蜂雀

この盤はともかくよく聴いた。それこそ盤が擦り切れるほどといっていい。当時聴いていた装置もろくなものではなかったし、扱いもぞんざいだったのだろう、さすがに盤も傷みがあってあちこちでノイズが混じる。

この時期の(その後もか?)ジョンの演奏は面白みに欠けるというのが通説のようだが、当時ぼくにとってセゴビアはスペイン訛りの酔っ払いのようだったし、ブリームは色気とコブシ出し過ぎと思い、物差しで計ったようなジョンの演奏は新鮮かつ絶対的に感じられた。久々の針を下ろしてみたが、印象は昔と変わらなかった。ジョンの繰り出す音はやや硬質ながらもクリアかつ美しい音で録られていて、その正確無比な曲の運びと相まって、生真面目で誠実な印象を受ける。

A面のバッハの組曲は冒頭の<プレリュード>から粒の揃った音で淀みなく音が流れる。ゆっくりしたテンポの<ルール>では、今聴くともう少し深い呼吸がほしいところだ。当時そのあたりが面白みに欠けるという評判につながったのかもしれない。しかし今聴いてもそう思うが、根拠なく恣意的にテンポを揺らした妙な演奏が多かった当時のギター演奏にあって、こうした正確さは貴重だったし、組曲を通して聴いてみて、どの舞曲もよく考えられたアーティキュレーションで原曲のヴァイオリン版に慣れた耳にもまったく違和感なく楽しめる。 B面にはお馴染みの小品が入っている。当時ジョンの演奏でスケルツィーノ・メヒカーノや雀蜂を知った輩も多かったろう。ぼくもそのくちだ。アルベニスのセヴィーリャを聴き、何てカッコいいんだと思って楽譜を手に入れて弾こうとしたらまったく歯が立たなかった記憶がある。

60年後半ら70年代にかけて、ジョンは次々にギター名曲の録音を重ね、そのいずれもが従来のギター演奏とは一線を画す折り目正しい演奏だった。一時期ジョンの活動は方向転換もするが、その後再びクラシカルな世界に戻り、70歳を過ぎた十年程前に引退を宣言した。

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この盤の音源。BWV1006a プレリュート


同 ジーグ


同 アルベニス「セヴィーリャ」


バッハ BWV1006aプレリュード 1993年のライヴ映像。例によって!マークが出るが、YouTubeで見るとクリックすればOK



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