A級プリメインアンプ頂上対決!



先日のCDプレイヤーの記事にも書いたが、オーディオ機器の音質は、エネルギー変換に関るトランスデューサ部であるスピーカーとカートリッジに大きく支配される。その中間で電気信号の処理と増幅をつかさどるアンプの影響力は相対的には小さい。他方、スピーカーやカートリッジを構成する部品点数に比べ、アンプのそれは桁違いに多く、また実際の操作で人間とのインターフェースとなるのもアンプの操作部だ。いきおい、その存在は音質への影響度ほどには無視できなくなり、細かな回路構成、操作性やその感触などの感性ポイントが気になってくる。つまり、アンプ選びは実質的な性能追及より<お楽しみ>的要素が強いように感じる。実は以前から気になっていたアンプがあって、機会があればじっくり検分したいと思っていた。思いはいつかは通じるもの。先日そのアンプを使う機会を得て、当方所有の現用機ラックスマン社L-570と比較試聴することができた。備忘を兼ねて、その結果を記しておこう。

借用したのは同じラックスマンのL-590A2。ベースモデルのL-590Aが同社設立80周年記念モデルとして2005年に発売され、ほんのわずかなマイナーチェンジを受けて2007年に590A2となった。その後現行機590AXが筐体他のモデルチェンジを受けて2010年に出ている。10年間の変遷があるのもの、終段A級増幅による同社プリメインアンプのトップモデルとしてのポジションは変わらない。

L-590A2
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横幅467mm重量27キロの堂々たる存在感とシーリングパネルによる洗練されたデザイン。シルバーパネルに映えるアンバー色バックライトに照らし出された二つのメーターを見ていると、音量ボリュームを0dBまで上げ、<春の祭典>あたりでメーターの針を目盛のレッドゾーンまで叩き込みたくなる(よい子は真似をしてはいけません)。いやいや、そんな粗野な聴き方は野暮だ。清涼感あふれるバロックのチェンバーオケを控えめの音量で聴こう。と、まあ、そういう情緒的なイメージ(妄想か)が湧いてくるモデルだ。出力はA級30W。もちろん強力な電源部のおかげで、数値以上の出力でも破綻することはない。スピーカーの2系統切換にヘッドフォン出力、プリとメインの分離、録音機器の2系統制御にトーンコントロールやラウドネスコントロール、フォノ入力はMM/MC対応等々。一体型プリメインアンプが伝統的に備えている機能をすべて搭載。これはラックスマン社のプリメイン機ラインナップのすべてに共通している。

L-570
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迎え撃つ現有機L-570はバブル最盛期の1989年、それ以前から続く同社A級アンプの最終形と銘打って発売された。横幅は標準的な438mm。重量は30キロに及ぶ。入力切換のプッシュスイッチ群と音量調整等の従来型丸型ノブとが共存し、シャンパンゴールドのパネル色と相まって、今となってはレトロモダンな雰囲気を醸し出す。出力はA級50W。電源部は590A2劣らず強力で、出力インピーダンスに対してリニアに追従し、4オーム負荷で100W、2オーム負荷で200Wを叩き出す。音質にいささかでも悪影響を与える要素は徹底的に排除され、スピーカー出力切換やヘッドフォン出力、トーンコントロールやプリメインの分離等はない。一方で、まだLP愛好家も多かった時代背景もあって、フォノ入力に関しては徹底した高音質化が図られている。MM/MC独立したイコライザー回路を用意し、しかもその回路中のトランジスタもすべてA級動作という念の入れようだ。

さて能書きはこのくらいにして結論を急ごう。付加機能やデザインは使う人の要不要と感性で価値が変わるだろうから、ここは音のみに絞って結論を記す。

まずラインレベルのCDでの音質だ。これは当初の予想通り大差はない。いずれのアンプも何の不足もないと言っていい。しかしわずかな違いは感じた。音への影響度が少ないアンプにおいては、このわずかな違いは実は大きな違いであって、人によっては決定的な要素となるかもしれない。ラインレベル入力レベルでのSNは同等か古い570がやや優れる。570のノイズは、音量調整ノブを通常よりやや高めの位置にセットし、音圧感度91dBのタンノイに耳を付けてみると、サァーという違和感のないホワイトノイズをごくわずかに確認できるレベル。一方の590A2はノイズの音色にやや濁ったような違和感を覚える要素があって、結果的に570よりも耳につく感じがした。しかし、いずれもCDを聴くにあたり障害になるレベルではない。音質は全域でよく調和し滑らかな印象の570に対して、590A2はメリハリ感が強調される。フォルテもピアノも元気がいい。極端な表現をすると、590A2の音は最近の若年層向けJPOP録音のように音が圧縮されたかのように平板に響く。570の音の滑らかさは、かつての真空管式プリメインアンプSQ38FDに通じる。SQ38FDは以前、マーク2モデルをしばらく使ったことがあり、よく覚えている。最初に音出しをしたときは、そのメロウな音色に驚いた記憶がある。残念ながらシーメンス式スイッチの接触不良に泣かされたのと、出力管50CA10のメンテ用予備確保に懸念を感じて手放した。結論として、CD等のラインレベル入力を聴く限りは、感性ポイントで選んで間違いはないと感じる。

つぎにフォノ入力を確認した。
CDではほぼ互角の勝負となった両機だが、フォノ入力では決定的な違いがあった。CDの枚数以上にレコードを抱える者としては、フォノ入力モードでの良し悪しは重要な評価ポイント。特にフォノ入力に関してぼくがもっとも神経をとがらせるのはSN比だ。先のCDでの比較同様、音量調整ノブを通常よりやや高めの位置にセットし、音圧感度91dBのタンノイに耳を付けて確認する。フォノ入力にはMC型としては低インピーダンスに属するオルトフォンSPU-Gをつないだ。ライン入力同様の違和感のないやや高音寄りのホワイトノイズがわずかに確認できる570に対し、590A2はスピーカーから2メートル半ほど離れたリスニングポジションでもはっきりとノイズが聴こえてくる。その音色は低域にもかなりの成分を含んでいるようで、低音側のトーンコントロールを回すとはっきりその増減がわかる。最初に何か不具合があるのかと思ったが、左右両チャンネルとも同レベル同音質のノイズが出てくるので、おそらく正常仕様範囲だろう。もちろんフォノ入力をMM側に切り替えるとノイズが低減し、リスニングポジションでの聴こえ方も許容範囲をなるが、一方の570はさらに静寂となり、その差は縮まらない。一般にはレコードを回して針を落とせば、レコード盤のトレースノイズに紛れ、アンプから出ているセットノイズがほぼマスクされる。しかし今回の590A2はMCポジションでやや大きめの音量にすると、完全にはマスクされきらない感があった。またノイズ以外の音質要素に関しては、ライン入力のCD試聴の印象がそのまま当てはまる。570のよく調和しかつ清涼感のある音色は文句なしだった。

カートリッジからの微小入力を一気に数十dB増幅するフォノイコライザアンプは昔から設計者泣かせであり、また腕の振るいどころでもあった。25年前の570はその点、まったくぬかりがない。先に記した通り、570ではMM/MC独立した回路構成。各段A級で構成し、かつ入念にゲイン配分を設定しているのに対し、590A2はフォノ入力をFETで受けたあとはオペアンプで一気に(無造作に)増幅。MM/MCの切替えは帰還抵抗を切替えて増幅度を変えて(安直に)対処している。それなりの音響用パーツを使っているとは思うが、570の念の入れ様に比べると旗色が悪い。ある関係者とこの辺りのことを話した際には、やはり時代背景の影響は大きく、以前ほどフォノ入力の処理に力点が置かれていないのだろうということになった。

いまだ色あせない名器L-570
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以上の通り、CDに関しては互角(但しぼくの好みは570)、フォノ入力に関しては570圧勝というのが今回の結論となった。ラックスマンの名誉のために付しておくが、同社のライバルメーカーであるA社製プリメインアンプでも、以前そのフォノ入力の処理で手を焼いたことがある。つまりフォノ入力の増幅は中々難しい技術ポイントだということだろう。また気にしないユーザーも多いようだが、音量調整ノブ(ボリューム)の操作感は、リモコン駆動が導入されボリューム後部に駆動モータが付属するようになって以来その感触は<あそび>が多く、グニャッとした妙に柔らかな感触になり、古いアンプのようなリジットにピシッと決まる感触がなくなった。その点でも570はそもそも構造がまったく異なり、回転式連続可変抵抗ではなく、多段抵抗切換式になっていて、その操作感は全くぼく好みだ。590A2に関しては、洗練されたデザインや万全の機能、A級アンプで心配な発熱も570に比べるとずっと少なく(出力50W対30Wの違いが大きい。単純計算で4割減)、長期使用にも不安がないなど、惹かれる点も多い。また590A系のユーザーからはそんなノイズが出るような状況はないという反論があるかもしれない。以上はあくまで今回の拙宅でのひとつのサンプルに過ぎないし、現ユーザーとして570への心情的なバイアスもかかっていることを付記しておく。同時に、現行のラックスマン社プリメインのみならず、アンプの導入検討している諸氏には、手持ちソースを勘案し、特にフォノ入力を重視する際はくれぐれも試聴・確認すること、また残留ノイズの確認は余程静寂な試聴室でもない限り難しいので、ヘッドフォンによる確認が可能ならば試みることをお薦めしたい。あるいは、そんなリスクにびくびくしたくなければ、デザインが気に入り、中古品もいとわないという前提で、整備済み美品中古のL-570が見つかれば、それが幸せへの近道だと断言したい。

主役はスピーカーの方かな…



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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