メンデルスゾーン<エリア>
三月最後の日曜日。朝から穏やかに晴れていたが、午後から雲が出始めた。晩には雨になりそうな気配だ。当地の桜は開花はしたものの、咲き具合は場所によってまちまち。近所のショッピングセンター横に連なる桜並木はまだ二、三分といったところだ。
さて、きょうは昼をはさんで野暮用外出。帰宅後ひと息ついてから、オーディオのスイッチを入れ、こんな盤を取り出した。


メンデルゾーンのオラトリオ<エリア>作品70。ミシェル・コルボ 指揮リスボン・グルベンキアン管弦楽団と合唱団による演奏。1983年録音。手持ちの盤は1985年初出時のLP3枚組セット。確か都内の中古レコード店で買い求めた。1450円の値札がまだ付いている。LPからCDへの移行初期のパッケージということだろうが、CD用の解説書がそのままLPボックスに収まっている。この曲に最初に触れたのはサヴァリッシュ&N響の演奏をテレビで観たときだったと記憶している。その後随分と年月が経ってからようやくこのコルボ盤を手に入れた。2時間を要する大曲。実は少し前から時間をみつけてチョボチョボ聴いていたのだが、きょう日曜午後、全編通してゆっくり聴くことができた。
手元にある音盤数千枚の中にあって声楽・合唱・宗教曲の盤は著しく少ない。我ながらいかに偏った聴き方をしているか、今更ながらに溜め息が出るほどだ。当然、宗教曲についてのインプットも皆無に等しい。もちろんマタイもロ短調もモツレクも若い頃から聴いてはきたが、もっぱら器楽的に聴くに留まっている。歌われている歌詞も物語性もほんの聞きかじり程度でお茶を濁している次第で、熱心な愛好家からすれば話にならない体たらくだ。それでも宗教声楽曲のもつ独自の響きには惹かれるものがあって、ときどき聴く。
メンデルスゾーンの多くの偉業の中にバッハ再興がある。バッハからは充実した構成と緻密な対位法を、そしてヘンデルからは大規模なドラマ性を学んだと言われる。彼がいなかったら19世紀から今日に至るバッハ演奏の系譜は随分と違ったものになっていただろう。この<エリア>はそうしたメンデルスゾーンのバッハそしてバロック音楽様式への深い理解と、ぼくらがメンデルスゾーンという名からイメージする初期ロマン派らしさとが最良の形で結実した傑作だ。冒頭のエリア(バス)が歌う序奏に続く序曲から充実した響きに包まれる。速いテンポのフーガが展開し、その頂点で合唱が加わる瞬間は鳥肌が立ちそうになる。以降も美しいアリアと素晴らしい合唱が一切の弛緩なく続く。
指揮者のミシェル・コルボは様々な合唱作品で名演を残した。この盤で歌っているリスボン・グルベンキア合唱団の指揮者も長らく務め、同管弦楽団と一緒にいくつかの録音を残している。独唱陣はソプラノ:ラシェル・ヤカール、メゾソプラノ:ブリジット・バルレイス、テノール(ステファノ他):マルクス・シェーファー、バリトン(パウロ):トーマス・ハンプソンという布陣。演奏は大仰な表現の一切ない、室内楽的ともいえるもの。もっと大規模なオケを鳴らし切る演奏も感動的だが、この盤の楚々とした表情もとてもいい。<エリア>というと、メンデルスゾーンとゆかりの深いライプツィッヒゲヴァントハウス管がサヴァリッシュ、マズア、ブロムシュテットらと、それぞれの時代の録音を残している。機会があれば聴いてみたい。
ダニエル・ガッティ指揮フランス国立管とフランス放送合唱団による全曲。2014年6月とのこと。
序曲(1分03秒~)に続く第1曲<主よ助けたまえ…>(4分36秒~)から圧倒的な高揚感。 長い曲だが最初と最後の5分間だけでもどうぞ。
★★追伸★★
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