カール=ハインツ・シュッツ(FL)来演


久しぶりに群馬交響楽団(群響=グンキョウ)の演奏会へ。今シーズン第1回目、第508回定期演奏会。指揮に尾高忠明、フルート独奏にウィーンフィル首席奏者カール=ハインツ・シュッツが来演。以下のプログラムが演奏された。なお当夜の演奏会は当地「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録記念として開催された。フルート協奏曲を書いた尾高尚忠は、富岡製糸場初代場長、尾高惇忠の孫(系譜には渋沢栄一も)、そして当夜の指揮者:尾高忠明は曾孫にあたる。

 ブリテン/歌劇《ピーター・グライムズ》より「4つの海の間奏曲」作品33a
 尾高尚忠/フルート協奏曲 作品30b
 ラフマニノフ/交響曲 第1番ニ短調 作品13


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当日券を買う予定もあって定刻より少し早く会場の群馬音楽センターへ。初夏の夕べ、濃さを増した緑の中に建つ群馬音楽センターの佇まいが美しい。このホールはアントニン・レーモンドによる設計。第一次大戦後、帝国ホテル設計施工の助手としてフランツ・ロイド・ライトと共に来日。以降、多くの傑作建築を残した。群馬音楽センターはそのレーモンドの代表作であり、モダニズム建築の傑作といわれる。築50年を経て、設備や音響の面をみれば、その後作られたホールに劣ることは否めないが、一方で、歴史を重ねてきたものだけが持つ存在感を近年より強く感じる。

やや玄人好みと思われるプログラムにも関わらず、1900名収容のホールは8、9割の入り。いつも通り、音楽評論家:渡辺和彦氏のプレトークののち、定刻18時45分に客電が落ちてチューニングが始まった。きょうのプログラムのうち、手元に音盤があるのはラフマニノフの1番と尾高尚忠のフルート協奏曲だけ。しかもラフマニノフは以前箱買いしたLPの中に混じっていたもので、針を通した記憶がないという情けなさ。もちろんブリテン<4つの海の間奏曲>も初めて接する。

退屈するかなと危惧していたが、そこは定期にのるだけのことはある曲。ブリテンもラフマニノフもその良さを実感した。ブリテンのピーター・グライムス自体に不案内ではあるが、この4つの間奏曲は、第1曲『夜明け』、第2曲『日曜の朝』、第3曲『月光』、第4曲『嵐』から成り、その標題を意識に入れてから聴くと、音楽の様相がよく分かる。ヴァイオリン群の印象的な高音域でのフレーズで始まり、それを受けるような金管群のコラール風のフレーズとが対比されながら進む第1曲『夜明け』。以降も近代的和声感と時折り出てくる英国調の歌謡的フレーズとを織り交ぜつつ、色彩的な管弦楽の響きを楽しんだ。

当夜の指揮者:尾高忠明氏の父に当たる尾高尚忠(1911-1951)のフルート協奏曲は、数からフルート協奏曲あるいは邦人作品全般の中でも名曲の誉れが高い。古典派以降に限ると意外に少ないフルート協奏曲の中にあって貴重かつ価値ある協奏曲で、海外のフルーティストの間でも人気が高いそうだ。手元にある80年代初頭に出たLP盤に吉田雅夫のソロによる録音が入っていて以前よく聴いた。今夜久々に聴いて、その美しいメロディーとコンパクトながらよく出来た構成を名手カール=ハインツ・シュッツの演奏で楽しんだ。フルートの音色感を語るほどの知見はないが、カール=ハインツ・シュッツの音は実に柔らかく落ち着いた響きで、フルートでぼくらがイメージする華麗できらびやかな音とは一線を画すもの。アンコールに奏されたイベール<無伴奏フルートのための小品>でも弱音のコントロールが印象的で、柔らかな音色を生かした穏やかな吹きぶりが素晴らしかった。

休憩をはさんでラフマニノフの第1交響曲。この曲は初演(1897)で大失敗して、その後陽の目を見ない日が続き、ラフマニノフの死後になって、ようやく演奏されるようになったという。近年では人気の第2番より高評価を下す人もいるそうだ。ぼくも手元にレコードがありながら、まともに聴くのは今回が初めてだった。ロマンティックな曲想あふれる第2番に比べると、硬派といってもいい曲想。それでもしばしば現われる弦楽群の厚いメロディーや全体を通して流れるロマンティシズムはやはりラフマニノフだ。山台最後列に並ぶ多彩な打楽器も加わった大編成管弦楽の魅力を存分に発揮する大団円に大きな拍手がわいた。


<4つの海の間奏曲>
ブリテンの生誕100年にあたった2013年プロムスでの演奏。サカリ・オラモ指揮BBC交響楽団。



尾高尚忠/フルート協奏曲。手持ちのLPと同じ音源。吉田雅夫のフルート。岩城宏之指揮NHK交響楽団。昭和36年録音。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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