新日本フィル室内楽シリーズ#92 @すみだトリフォニー



週明け月曜日の昨日、都内での仕事を夕方までに終える。時計をみるとまだ夕方5時だ。こんなときサラリーマン同胞の常としてはガード下で一杯となるのだろうが、幸か不幸かぼくはまったく下戸の不調法。周囲に女子がいれば、季節柄、千疋屋で極上フルーツにでも誘いたいところだが、そんな企画も有り得ない。仕方なく、自分の手の内にある選択肢から、新日本フィルメンバーによる室内楽のコンサートに足を運ぶことにした。実は少し前、チェロ&フルート両刀使いの知人から「近々室内楽の演奏会があって行くつもりだ。たまたま与太さんがブログ記事に書いた曲が2曲とも取り上げられるぞ。」との情報を受け取っていたのだ。知人にメールすると、6時に錦糸町駅で待ち合わせようか、という段取りになった。


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JR錦糸町駅横のテナントビルで腹ごしらえ。エレベータからはスカイツリーが間近に迫る。知人と<健康ねた>プラス<弦楽器調弦における平均律と純正調のずれ>という程々に道楽オタクなオッサン会話を楽しみつつ、鯖塩焼き定食を完食して準備完了。歩いて程ない会場のすみだトリフォニーへ向かった。240名ほど収容の小ホールは7割の入り。団員によるプレトークがあって、定刻7時30分に客電が落ち団員登場となった。曲目は以下の通り。

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テレマン/4つのヴァイオリンのための協奏曲から
   ト長調TWV40:201 ハ長調TWV40:203 ニ長調TWV40:202
ブラームス/弦楽五重奏曲第2番ト長調op.111
 一休憩-
メンデルスゾーン/弦楽八重奏曲変ホ長調op.20
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崔文洙、佐々木絵理子、古日山倫世、松崎千鶴[ヴァイオリン]
高橋正人、脇屋冴子[ヴィオラ]
森澤泰、スティーヴン・フィナティ[チェロ]
2015年5月25日すみだトリフォニー小ホール
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この演奏会に行こうと思ったのは他でもない、ブラームス弦五メンデルゾーン弦八が一晩で楽しめるからだ。弦楽四重奏はレギュラーの団体もあって、しばしば聴く機会があるだろうが、そこから編成を拡大した室内楽、しかもこの2曲の組み合わせとなると貴重な機会だろう。

最初のテレマンはオケや鍵盤楽器の伴奏なしのヴァイオリン4本だけによる協奏曲。今回演奏された3曲はいずれも<緩・急・緩・急>の4楽章からなる。高音パートだけの編成だが、冒頭から不協和音のぶつかり合いで始まったり、4本のヴァイオリンが互いに競ったり合わせたりと、変化に富んでいて飽きさせない。第1ヴァイオリンの崔文洙(チェ・ムンス)さん以外の三名は妙齢女性奏者でドレスも目に鮮やか。音響も視覚も華やかなプロローグとなった。
ついでブラームスの弦五第2番は少し前にブログ記事にも書いて、このところ何度か聴いている曲。ブラームス晩年の作品ながら、同時期の間奏曲や歌曲などにみられる枯淡の境地とは少し趣きを異にする。第1楽章冒頭から力強さあふれる展開。詠嘆調の第2楽章。ラプソディックな第3楽章と続き、終楽章では明るさも増す。Vn2・Va2・Vc1という編成からしても音響はやや高域寄りになって、同じブラームスの弦楽六重奏曲とは随分と異なる。またこの曲は室内楽にあって異例ともいえるほどVaが大活躍する。そしてVcも負けずに忙しく弓を運ぶ。聴いている側も音だけではなく視覚的にも手に汗握る展開だ。

休憩をはさんでメンデルスゾーン。ブラームスから一転、若やいだ明るいロマンティシズムに包まれる。演奏時間の半分を占める第1楽章は、何度聴いてもこれが16歳の青年の作とは信じがたい。提示部が繰り返えされて展開部へ。あえて言えばこの展開部が少々弱いと言えなくもないが、寡聞ながらこの頃初期ロマン派の作品は展開部がそれほど重くないケースも少なくないように感じる。それはともかく、八重奏という編成を駆使した構成はもちろん聴き応え十分だ。いかにもメンデルスゾーンらしい第3楽章のスケルツォに続く第4楽章がまた素晴らしい。テクニカルにも奏者の技量が最大限に発揮されるようなフレーズが展開する。緊張感を維持しつつコーダに入ってスリリングに全曲を終えた。

新日本フィルの弦楽セクションから、コンマス以下ベテランと新人交えたメンバーの弾きぶりは、見ているだけで練習の様子が分かるほど。フレーズを繰り返しつつ盛り上がってトゥッティを決める下りなどは、全員の身体の動きまで同期する。コンマス:崔さんの一頭抜きんでたアグレッシブな音、新人達の丁寧な弾きぶり、加えて印象的だったのは第2ヴァイオリン佐々木さん。メンデルスゾーンでは時に第1ヴァイオリンに寄ってハーモニーを合わせ、時にヴィオラと一緒に力強いフレーズを弾き、その度にアイコンタクトと身体のモーションで、つなぎ役としての第2ヴァイオリンの重要性がよく分かる弾きぶりだった。

地味な室内楽プログラムにも関わらず来場した200名ほどの聴衆からの拍手に応え、アンコールが演奏された。曲はショスタコーヴイツチ<弦楽八重奏のための2つの小品>から<スケルツォ>。ロマン派の薫り高いアンサンブルから一転して、テクニカルかつ緊張MAXの快演で大団円となった。
終演後、ロビーでワンコインパーティー。指揮者の上岡敏之氏の姿を見かけた。ぼくは先を急いで帰途に。この新日本フィル団員による室内楽シリーズ、7月には<短調のモーツアルト>と題された演奏会が予定されている(モーツァルト/弦楽四重奏曲第13番、ピアノ四重奏曲第1番、弦楽五重奏曲第4番)。魅力的なプログラム。少し先だが、こちらも時間を作って出向きたい。


メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲。通称メンパチ。



ブラームスの弦五第2。



アンコールで演奏されたショスタコーヴィッチ<弦楽八重奏のための2つの小品>から<スケルツォ>。
初期の前衛的作品。エネルギー爆発!ハチャメチャかつ痛快・爽快!


前奏曲を含む全2曲はこちら


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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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