ショルティの<ラインの黄金>
梅雨入りした週末の土曜日。野暮用で終日あたふたと消耗。夜半前になってようやくひと息ついた。このところ夜の音盤タイムはもっぱらヘッドフォンにお世話になっているが、今夜は久々にスピーカーを思い切り鳴らそうかと思い、こんな盤を取り出した。


ゲオルク・ショルティとウィーンフィルによるワグナーの楽劇<ニーベルンクの指輪>から序夜を成す<ラインの黄金>のLPセット。社会人になってまもなくの頃、当時の関東在住レコードファンにはお馴染みだった<ハンター>で買い求めた。豪華な付録冊子には昭和41年(1966年)発売の記述がある。おそらく国内初出盤だと思うが定かではない。この盤に続き、順次全曲を集めるつもりでいたはずだが、その後人並みに仕事に没頭、いつしか「そのうちに…」となってしまった。
この盤について今更説明をする必要もないだろう。ステレオ時代になって、英デッカが名プロデューサー:ジョン・カルショウのもと、総力を挙げて製作した大作にして傑作で、ワグナー録音の金字塔とも言われた名盤だ。当初はクナッパーツブッシュとウィーンフィルのコンビで全曲録音が計画されたが、<ワルキューレ第一幕>を録音したあとクナが亡くなり、当時50代にさしかかっていた気鋭のショルティに引き継がれ、1958から1965年にかけて録音された。
ぼくなどはワグナーについて語る何物も持ち合わせていないが、そんな盆暗リスナーにも、この盤の素晴らしさは十分わかる。まず当時としては録音が素晴らしくいい。手持ちの盤は少々コンディションが悪く、スクラッチノイズが多いのだが、音の広がり、鮮明度など、三十余年前に手に入れてショボいセットで聴いたときも、今こうして現代の機械で聴いてみても、他の優秀録音に勝るとも劣らない。今夜はLP3枚6面からなる<ラインの黄金>のうち冒頭の1面、前奏から<ラインの河底>あたりと、第6面、終盤のクライマックス<ワルハラ城への入城>あたりを聴いたのだが、帯域そのものは今のレベルからすると少々狭く感じるものの、地の底から不気味に迫るようなコントラバスのピアニシモ、ウィーンフィルの打楽器奏者が実物の鉄床18台を打つニーベルハイムの場面や、雷鳴を轟かす大型の金属板による一撃、ワグナーチューバの彷徨等々、ワグナーサウンドの醍醐味が存分に味わえる。
付録冊子の写真から。
指輪リスニングに必須のライトモチーフ集。 雷鳴SEのための巨大金属板。


ドンナーが振り下ろすハンマー音の一撃。 鉄床18台と金塊の代わりに使われた鉛の塊。


現代的視点でみると解釈・録音ポリシー共に違ったアプローチがもちろんあるだろうが、今から半世紀前に、豪華キャストを集め、周到な練習とリハーサルに時間を費やし、純アナログ技術を駆使し、今でも通用する高いレベルの演奏と録音を残したことに、理屈抜きに感服する。折からこの6月に発売された最新リマスタリングのCDセットが飲み代一回分で手に入るという。指輪の全曲盤は二種類手元にあるので、これ以上はとも思うのだが、完成度の高さから、このショルティ盤には今更ながら惹かれる。
このコンビによる録音風景。<ジークフリートの葬送行進曲>。エネルギッシュなショルティ。
同じく録音風景。裏方技術陣の様子も興味深い。SACDもハイレゾも、こうして作られた当時のマスターが頼りだ。
★★追伸★★
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