カール・ライスター(CL)来演 群馬交響楽団演奏会



きょう日曜の午後は群馬交響楽団(群響:グンキョウ)の演奏会へ。当県北部の草津温泉で行われる草津国際音楽アカデミー&フェスティバルのプレコンサートの位置付けで、毎年お盆のこの時期に開かれるサマーコンサート。今回は、同アカデミーの講師陣の中から、クラリネットのカール・ライスターと指揮者のアントニ・ヴィットが来演した。


Karl_Leister.jpg  Leister_Toyoda.jpg


プログラムは以下の通り。
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ストラヴィンスキー/組曲「火の鳥」(1919年版)
モーツァルト/クラリネット協奏曲 イ長調 KV622
 ―休憩―
ベートーヴェン/交響曲 第6番 ヘ長調「田園」 作品68
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クラリネット:カール・ライスター
指揮:アントニ・ヴィット 管弦楽:群馬交響楽団
2015年8月16日 群馬音楽センター
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カール・ライスター(1937-)は言うまでもなくカラヤン時代のBPOクラリネットトップとして活躍した、まさにミスター・クラリネット。指揮者のアントニ・ヴィット(1944-)はポーランドの重鎮にして、日本のオケへの客演やナクソスレーベルでの多くの録音で有名だ。

実はカール・ライスターと群馬交響楽団には30年余のつながりがある。
80年代初頭、群馬交響楽団の音楽監督になった豊田耕児が、カール・ライスターを招聘してモーツァルトの録音を行った。豊田耕児は当時、ベルリン交響楽団のコンサートマスターとして活躍中であったが、群響からの猛烈ラヴコールに応えて音楽監督に就任。以来、アンサンブルや音色、オーケストラの基本を徹底的に叩き直し、短期間のうちに同団のレベルを商業録音が可能な状態にまで引き上げた。そうして行った一連の録音の中に、カール・ライスターをソリストに迎えたモーツァルトとメルカダンテの協奏曲があったのだ。当時のカール・ライスターと言えば、カラヤン&ベルリンフィルと共にその絶頂期で、そんな世界的なソリストが、極東の片田舎のオケに来演し、しかもレコーディングまでするというのは驚きだった。当時ぼくは社会人になりたての頃で、そのレコードも買い、コンサートにも行った。あれから30年余。78歳になったカール・ライスターを再び群響のステージで聴けるだけでも、きょうの演奏会の価値は十二分だ。

お盆休みのサマーコンサートということで15時開演のマチネ。草津のイベント関係も多かったのか、1900名収容の群馬音楽センターは9割ほどが埋まり、お盆の最中、真夏のコンサートにしていは上々の入りだろう。 <火の鳥>は少し前に新日本フィルの演奏会で聴いたばかり。きょうの群響の演奏も負けずに立派なもの。12型(12-10-8-8-6)の編成ながら、弦・管・打のバランスはよく練られていて問題なし。アントニ・ヴィットの解釈は、この曲を古典的なスタイルにとらえ、大げさなテンポ変化を持ち込まず、大見得を切るような場面もなく、整然としてスタイリッシュなもの。ぼく自身の好みからすれば、もう少し濃厚な色付けが欲しかった感もある。

続いてカール・ライスター登場。胴回り120センチはあろうかという堂々たる巨体(^^;。30余年前と同様、指揮者横の椅子に座っての演奏だ。オケは10型(10-8-6-5-3)。モーツァルト晩年の、明るさの中にも憂愁が宿るオケの導入部に続き、カール・ライスターのソロが入る。78歳の年齢によるものかどうか、定かではないが、ぼくの予想をまったく覆すような、静的とも言えるほど穏やかな演奏で驚いた。現役バリバリの頃は、その完全無比なテクニックから、ややもすれば技巧優先の演奏と評されたと聞くが、きょうの彼をみると、穏やかに丁寧に、一音一音大事にしながら吹いているという印象を受けた。ステージ登場した際、そして演奏後、観客や団員に深々と丁寧に頭を下げる様子に、演奏同様、謙虚で温和な現在の彼が見て取れた。

休憩をはさんで<田園>。
オケは12型に戻り、かつ第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置に変更(左からV1-Va-Vc-V2。CbはVcの後方)。<火の鳥>では古典的なアプローチを採ったヴィットだが、ベートーヴェンでは打って変わって、この曲のロマン派的側面を強調するようにな解釈。第1楽章からやや速めのテンポと時にうねるようなディナーミクで、この曲で時に感じる、焦点の定まらない凡庸なイメージをまったく感じさせない。特に第3楽章から嵐の第4楽章を経て終楽章に向かう下りは、雄弁なティンパニの活躍もあって劇的な場面展開。加えてきょうはコンサート冒頭から木管群、特にオーボエが絶好調で、この曲の標題音楽的側面を一層際立たせてくれた。

17時終演。カール・ライスターとの35年ぶりの再会に、自分もすっかり歳を取ったことを実感しつつ家路についた。さて、そんなことを思いつつ、ライスター&群響の当時の盤に針を降ろそうか…


カラヤン&BPOがオケ首席奏者(カール・ライスター、ローター・コッホ、ギュンター・ピースク他)をソリストに録音したモーツァルト管楽協奏曲集の中のもの。 1971年録音。



クラリネット・マウスピースのメーカー:バンドーレン社のプロモーション。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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