ベートーヴェン <三重協奏曲>



十月最初の週末土曜日。朝から爽やかなに晴れ渡り、気持ちのいい一日。昼間少々野暮用こなして一日終える。ようやくすごしやすい季節になって夜のエアコンも不要。送風音のない静かな室内での音盤視聴はまことに快適。オーディオの音量をさほど上げずとも十分音楽を楽しめる。 さて、そんな穏やかかつ爽やかな気分に合う曲はと考え、こんな盤を取り出した。


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ベートーヴェンのピアノ・ヴァイオリン・チェロのための三重協奏曲ハ長調作品56。
ジャック・ルヴィエ(p)、ジャン・ジャック=カントロフ(Vn)、藤原真理(Vc)、エマニュエル・クリヴィヌ指揮オランダ室内管弦楽団による演奏。1985年録音。手持ちの盤は、お馴染み日本コロンビアの廉価盤リシーズ<クレスト1000>の一枚。

この曲は多くの同輩同様、70年代のオイストラフ・リヒテル・ロストロポービッチのカラヤン盤で出会った。おそらくあの盤によって、この曲自体の認知度も大きく上がったのではないだろうか。ぼくが手に入れたときのセル指揮クリーヴランド管とのブラームス<ドッペル>がカップリングされた2枚組みは、曲そのもの、そして協奏曲の素晴らしさ、オーケストラとソロの関係性、そういったものを初めて気付かせてくれた盤でもあって思いで深い愛聴盤の一つだ。そんなことでお気に入りの一曲となったため、カラヤンの新旧盤、フリッチャイ盤、コレギウムアウレウム盤、そしてきょう取り出した盤と、数種が手元にある。

この曲はベートーヴェンの作品の中にあってはいささか評価が低い。凡作とまで言われることすらある。確かに同時期に書かれたピアノソナタ<熱情>、交響曲<英雄>など比べると、ベートーヴェンらしさの根源とでもいうべき劇的な展開や意表をつく和声などには乏しい。しかし、どこをどう取っても古典派らしい構成感と和声感に満ちた充実した作品だ。つまり、ロマン派にまだ足を踏み入れない頃の古典的作品としてみれば、至極真っ当で充実した作品と言える。加えて貴重なのは、単独のチェロ協奏曲を残していないベートーヴェンにとって唯一チェロと管弦楽曲の<協奏>が聴ける曲でもあるということだ。
曲冒頭、チェロとコントラバスによる静かな主題提示で印象的に始まる。ハ長調の伸びやかな調性にのって、各ソロ楽器がいきいきとフレーズを交わし、実に気持ちのいい展開が続く。第2楽章は弦楽群の序奏に促されチェロのソロで始まる。こんなフレーズを聴くと、チェロ協奏曲を残していてくれたらと思わずにはいられない。第3楽章はアラ・ポラッカとなって、沸き立つような躍動感にあふれる。途中短調に転じて交わされるモチーフのやり取りはこの楽章の聴きどころだ。

録音された1985年からすでに30年。協演者らにとっては若き日の記録ということになるだろうか。藤原真理が1978年のチェイコフスキーコンクールで第2位になってデビューを飾り充実の時期。カントロフはやや線が細い印象だが、むしろ<力の協演>にならず好感。先のカラヤン盤とは異なる室内楽的アプローチで、エマニュエル・クリヴィヌ指揮オランダ室のバックも含めて、この曲の魅力を十全に伝えてくれる名演だ。


バレンボイム・パールマン・ヨーヨーマ&ベルリンフィルによる豪華な演奏@1995年(前半の36分過ぎまで)。 1stVnトップに安永氏。第2楽章は18分過ぎから。第3楽章は23分50秒から。28分40秒過ぎからのやり取りはいつ聴いても心おどる。37分過ぎからは<合唱幻想曲>が始まる。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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