ホセ・ルイス・ゴンザレス(G)



連休明けの火曜日。先週から引っ掛かっている案件に何とか目鼻を付けて八時半過ぎに帰宅。遅い夕飯を済ませて一服。ちょっとした書き物のBGMにギターの音盤をと思い、久しぶりにホセ・ルイス・ゴンザレスの盤を取り出した。以前書いた記事があったので再掲する。

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ギター(ここでは電気仕掛けのないアコースティックギター、中でもいわゆるクラシックギターを前提にしよう)の魅力は何ですかと問われ、ギターを弾く人、聴く人、様々な答えがあるだろうが、回答の筆頭は『ギターの音色』ではないだろうか。もちろん楽器と呼ばれるものすべてに共通する答えだが、とりわけギターはその要素が強い。発音体である弦に直接触れて弦を弾いて音を出すメカニズムは、声の発生の次に『直接的』と言えるだろう。楽器のメカニズムよりは、右手の爪の形やタッチの具合、左手押弦の力の入れ具合といった弾き手のフィジカルな特性がそのまま音の性格を決める。以前も書いた通り、名人ギターリストは、それぞれの独自で魅力ある音色を持っている。きょう取り上げるホセ・ルイス・ゴンザレスもその中の一人だ。

クラシックギターの今日を築いた巨匠の一人であるセゴヴィアがある人に問われ「美しい音の出し方だったら、ホセ・ルイス・ゴンザレスに聞け」と答えたという逸話が残っている。それほどまでに、ホセの音は美しい。いや、今日的な観点で言えば、もっと整った雑味の少ない音を出すギタリストはたくさんいるだろうが、このホセのように、いかにもギター、間違いなくギター、どこから聴いてもギターと、いうような強いアイデンティティを感じさせる音は少ない。手元にある80年代の録音に聴くホセは、スペインの名器;ホセ・ラミレス作のギターから艶やかで薫り立つような音を引き出している。ときに楽器の限界を超えるような強烈なタッチもあるし、一方で慈しむようなピアニシモもある。ダイナミクスが大きく、音色のバリエーションも多彩だ。
セゴヴィアもそうだが、一昔前のスペイン人ギタリストの共通した特徴として、テンポが揺れたり、拍節感がずれたり、過度なビブラートがあったりもする。昔は「なぜ拍子通りに弾けないのか、弾かないのか」とまったく不思議だった。しかし、それこそがラテンの血が流れるスパニッシュギターの系譜なのだと最近になって合点している。彼らにとっての「歌」は、1・2・3.4と拍子を刻んでメロディーをのせることではないのだ。

写真の盤は、彼が1980年、13年ぶりに来日した際、東京・東久留米の「聖グレゴリオの家」で収録された盤で、当時50歳を前にした、まさに西国の伊達男といった風情の油の乗り切った彼の美音が楽しめる。グラナドスのスペイン舞曲第5番、第10番、ゴヤの美女、そしてリョベート編のカタロニア民謡、いずれも意外にも速めのテンポですっきりとした印象で弾き進めるのだが、決めのフレーズで出す1音1音にグッと情感がこもる。残念ながらホセは1998年66歳で亡くなった。もう彼のようなギターの真髄である美しい音色を聴かせるギタリストは見当たらない。

アルベニスの<タンゴ>


アルベニスの<カディス>。ニ長調版を使っている。


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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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