ブラームス~シェーンベルク編 <ピアノ四重奏第1番ト短調>



きのうきょうとややこしい案件に手を焼きつつ、時間ばかり消耗。いささかスッキリしないのだが、まずはホッとひと息の週末金曜日。(先週も書いたが…)このところの金曜深夜のお楽しみ、テレビ東京<孤独のグルメ>まで少々時間があるので、気分転換に音盤タイム。秋に夜長に相応しくこんな盤を取り出した。

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アルノルト・シェーンベルクによるブラームスのピアノ四重奏曲ト短調の管弦楽編曲版。若杉弘(1935-2009)指揮ケルン放送交響楽団による演奏。1978年のライヴ録音。数年前にALTUSレーベルからリリースされたもの。同じくブラームスの悲劇的序曲がカップリングされている。(だいぶ前に一度記事にした。備忘をかねて再掲しておく)

若杉弘は70年代から90年代にかけてドイツに根を下ろして完全に現地のスタイルを身に付け、溶け込んで活躍した。音楽や言葉はもちろん、ドイツやヨーロッパの歴史、文化など様々なものに精通し現地の人をも驚かせたという。『指揮者とは音楽的教養だ』と言ったのは誰だったか。彼こそは日本人にしてその資格を持ち合わせた指揮者だった。この盤には1980年前後、彼がケルンを本拠地としてコンサート指揮者として、また歌劇場のシェフとして活躍を本格化させた時期の録音が収められている。

まったく隙のない、整然とし、かつ深くドイツの伝統に根ざした演奏だ。まずケルン放送交響楽団の音が素晴らしい。弦楽群を中心にすべての音がよく溶け合い、どこかのパートが突出することはない。同時にそれらのブレンドされた音響が決して肥大化してぼってりとはならず、溶け合いながら同時に分離もよい。タクトポイントに対して低弦群がやや遅れて入ってくるアインザッツがいかにもドイツ風で鳥肌が立ちそうになる。オケのメンバーが互いによく聴き合っているのだろうし、そもそもドイツの音楽、それもブラームスをどう演奏するかを身体で知っているに違いない。そしてもちろんそれらを統率して彼らの力を引き出している若杉弘のコントロールによるところも大きい。

この曲に限らずブラームスの交響曲や管弦楽曲は後期ロマン派ながら構成としては古典的かつ室内楽的に作られていると思うのだが、ついドイツ的重厚長大さを前面に出して、重く肥大化させてしまう演奏も多い。それはそれで一つの魅力ではあるのだが、この若杉弘とケルン放響きの演奏を聴くと、これが本来のブラームスだと納得する。シェーンベルク編のピアノカルテットはよく出来たアレンジで、打楽器の追加や管楽器の扱いなど、随所にブラームス風ではないところもあるが、総じてよく出来た編曲として違和感なく楽しめる。原曲のピアノ四重奏版ももちろん渋く素晴らしいが、こうして管弦楽版を聴くと、見落としがちなモチーフや経過句にもスポットライトが当たったようにクローズアップされてくる。スコアを見るとごくシンプルに書かれてはいるが音の響きが厚く、いかにもブラームスだ。また四分音符を刻むパートと一緒に、付点音形や三連符が同時進行するブラームスの特徴的な音形。渋い第1楽章、歌にあふれる第3楽章も印象的。全編これブラームスを聴く楽しみに満ちている。

残念ながら若杉弘の実演には接していないが、90年代初頭に始まったばかりのBSで何度か観た。ケルンのオケを引き連れて来日した際のリヒャルト・シュトラウス<ドン・ファン>、ブラームス交響曲第4番のビデオがどこかにあったはずだ。終始、天を仰ぐように顔を上げ、長めの指揮棒をきれいに振っていた姿を思い出す。

全楽章。国立台湾交響楽団による演奏。
冒頭から鬱々としたブラームスらしい主題の提示が続き2分12秒からの印象的な第2主題へつながる。その後も息も付かせないほど充実した音楽が続く。


豪華なカルテットによる原曲。
エマヌエル・アックス、アイザック・スターン、ヨー・ヨー・マ、ハイメ・ラレード。心通う仲間同士のほのぼの感もあって、まさに室内楽の風情。


1988年。ソニー大賀氏を交えた対談。
こういう話を自在に出来る企業人・文化人、よき教養主義も遠くなりにけりか。


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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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