モーツァルト 大ミサ曲ハ短調 K.427


11月になった。ここ数日、一段と秋の深まりを感じる。灯火親しむの頃。こんな与太ブログなど書いていないで、漱石でも紐とき、しみじみと越し方行く末を思うべき人生の秋でもあるのだが、どっこい根が俗な性分で、相変わらずの日々が続く。ろくろく身を入れて音楽も聴いていないのに、アヴァロンの本領を発揮するには、やはりセパレートアンプが要るだろうか、CDプレイヤーも最近のDACを積んだ高解像度機にしたら世界が変わるだろうか、いやいやアナログだ、CEC:ST930はいい機械だが、オルトフォンSPUの魅力を味わうにはSMCのアームをセットしたLP12を使ってみたい…と、相変わらず物欲ムンムンの状態が続く。
そんな俗で邪悪な心を静めるために、月初めの今夜は宗教曲でも聴こう。とはいっても、マタイやロ短調ミサを全曲聴く時間余裕もないのでLP1枚で済む曲にしよう(…そんな選択基準からして邪悪だが)。取り出したのはこの盤だ。だいぶ前にも一度記事に書いたことがあったので再掲しておく。


Mozart_Mass_cmoll.jpg


モーツァルトのミサ曲ハ短調K.427。フリッチャイ&ベルリン放送交響楽団による盤。1960年録音。手持ちの盤は70年代終盤に出ていたグラモフォンの廉価盤シリーズの一枚。発売されて間もない頃に手に入れた。
ハンガリー生まれのフェレンツ・フリッチャイは好きな指揮者の一人だ。活躍のピークで白血病に冒され、度重なる手術に耐えたものの1963年に48歳の若さで亡くなった。彼が残したベートーヴェン・モーツァルト・チャイコフスキー・バルトークなどいずれも名演揃い。本ブログでも度々取り上げている。晩年に録音したこのミサ曲ハ短調ももちろん期待に違わぬ演奏で、半世紀前のものとは思えない素晴らしい録音とも相まって、この曲のベストチョイスの一つとして評価が定まっている。

フリッチャイの曲の運びは当時の伝統的な解釈通り、しっかりとした弦楽の響きを大事にしながらフレーズをゆったりと歌わせ終始美しい。ベルリン放響も当時の独系オケに共通した、暗めの音色と重量感のある音響構成で、この時代の解釈にふさわしい響きといえる。第2曲グローリアでは、モーツァルトの技巧が冴え渡り、対位法を駆使したフーガから、彼のオペラを思わせる快速調のアリアまで、多彩な曲想が目白押しだ。
このミサ曲はハ短調という調性ながら同じモーツァルトのレクイエムのような悲劇性は少なく、心穏やかに聴くことが出来る。物欲やいろんな欲に浮き足立った晩は、こんなミサ曲を聴くのもいいだろう。…と言いながら、LP盤ジャケットのライナーノートを読み終えたあと、続けてオーディオのカタログを広げているぼくは相変わらず俗や邪悪から逃れられそうにない。嗚呼。


この盤の音源。



ガーディナー指揮ストックホルムフィル&モンテベルディ合唱団による演奏。4分30秒過ぎ、ソプラノが最低音から一気に駆け上がるフレーズは、いつ聴いても背筋がぞくぞくする瞬間だ。



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No title

こんばんは お久しぶりです。
私もこれはフリッチャイ盤の中古セットで良好盤を再入手しました。
(3枚目です^^)
こういう懐深い美しさのミサ曲ハ短調はフリッチャイならではですね、
マリア・シュターダーのソプラノも味わい深いです。
物欲を押えるのは無理ですね。

Re: No title

michaelさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
よい盤が見つかったのですね。それはよかった。
この盤は本当に何拍子も揃ったいい演奏です。まだピリオドスタイルのスの字もない時代。それでも大編成ながら重くならず、瑞々しい響き、録音も秀逸で素晴らしいのひと言ですね。
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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