シルヴェストリの<チャイコフスキー第4>
関東地方はきのうから通過中だった気圧の谷が抜け、きょうは昼過ぎから北風吹き付ける一日となった。色付いた街路樹の葉が風に舞い、あわてて冬支度をしているかのようだ。
さてさて、音楽にも季節性を感じることがしばしばあるが、この時期、冬到来を告げる音楽というと、ぼくの場合はチャイコフスキー、それも第4交響曲がまず思い浮かぶ。北風吹き抜けるきょうは、まさに冬到来の<チャイコ日和>。音盤棚を見渡し、こんな盤を取り出した。


チャイコフスキーの交響曲第4番へ短調。ユニークな爆演型指揮者として有名なルーマニア生まれの指揮者コンスタンチン・シルヴェストリ(1913-1969)がフィルハーモニア管弦楽団を振った演奏。1957年録音。手持の盤は2000年前後に出た2枚組の輸入盤で、第4~6番の3曲が収められている。この盤についてもだいぶ前に一度記事にしているので再掲。
この曲を知る人なら、プレイボタンを押し、冬到来を告げるファンファーレである冒頭のホルンが鳴り響いた次の瞬間、腰を抜かすほど驚くだろう。2拍目の裏にある3連符と3拍にある2つの八分音符のアーティキュレーションがまったく独自なのだ。(貼り付けたYouTubeの音源をこのピアノ譜を参照しながら確かめてほしい)
もちろん4分の3拍子の譜割りには従っているのだが、3連符が3拍目にくい込み、3拍目の2つの8分音符が寸詰まり状態になっているといえばいいいだろうか。こんな音価の演奏は他では聴いたことがない。1964年に来日してN響を振ったときも、この独自の音価で演奏したようだから、よほど信念があってのことだろう。
しかし、その冒頭のファンファーレのエキセントリックさを除けば、この演奏は大そうロマンティックかつ熱気を帯びていて素晴らしい。第2主題に入る前からぐっとテンポを落として、切々と歌い上げる。第2楽章も弱音部を効果的に生かしていて冬のイメージであるチャイコフスキーのロシアの空気を感じさせる。終楽章もよくコンロトールされていて、爆演型のハチャメチャというわけではもちろんない。第1楽章冒頭の妙な譜割りのテーマが回顧され、そこからコーダに入って最後のコードが鳴り終わるまでの熱の入った加速には思わず身体が乗り出してしまう。
1957年の録音で、ピアニシモ部分では空調ノイズのような暗騒音が少し高いレベルで聞こえるものの、オケの響きは充実してマスの響きもよくとらえられていて悪くない。シルヴェストリは生前、「演奏は生き物で、同じ曲でもそのときどきによって表現が変る」と語っていたそうだ。残されたチャイコフスキーやドヴォルザークなどの録音はそんな彼の面目躍如たる、ワンアンドオンリーの演奏だ。
この盤の音源。問題の冒頭ファンファーレ。…びっくりしたなぁもぉ~!
しかしそれ以外は実にロマンティクかつ充実した響きの名演。
チョンミュンフンとスカラ座のオケによる演奏。かなりオンマイクでとらえられた録音。ヘッドフォンで聴いていると各パート(特に弦楽群)の音が明瞭に生々しく迫ってくる。
★★追伸★★
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