最近弾いたギター 2015年初冬
楽器に関しては、ここ数年随分と出入りが激しかったが、昨年ようやく落ち着き、この一年間はほとんど他の楽器に触れることもなかった。手元にある数本のギターはいずれも素晴らしい音で鳴ってくれているし、これから先の人生を考えると、楽器の数を減らすことはあっても増やすことはないだろうと、ほぼ確信している。そんなわけで、最近は楽器店をハシゴすることもなくなったのだが、先日、弦の調達に某入谷方面へ出た折に、折角の機会だからと、久々に何本か試奏させてもらった。

◆ドミンゴ・エステソ 1931年 松・シープレス。
昨年も何度か弾いた楽器。重量感あふれる低音と反応のよい高音が素晴らしい。この日は下記の1929年製松・ローズのエステソと弾き比べることになったのだが、鳴りの良さでは少々水をあけられた感じではあったが、反面音の調和感、落ち着きはこの楽器に軍配が上がる。音に気品があるといってもいいだろう。
◆ドミンゴ・エステソ 1929年 松・ローズ。
横裏がローズにも関わらずとても軽い。上記のシープレスのモデルと同等。おそらく1200グラム程度だろう。弦長655mmだが張りは柔らかく弾き易い。低音ウルフトーンは上記の1931年のものとほぼ同じでF~F#で太くドスンと腹に響く低音だ。一方、高音は軽く弾いても突き抜けるようによく鳴る。1~3弦の5フレットから上のレスポンスの良さと音量感は実に素晴らしく、少なくても弾き手の手元での音量感は、この日弾いた中では一頭抜きん出ていた。
◆エンリケ・ガルシア 1921年 松・ハカランダ。
エンリケ・ガルシアはラミレス1世の系列を引く名工。この楽器は弦長645のトーレスモデル。指板幅も狭く、ナット部で48mm。もちろんボディサイズもコンパクトだ。音も楽器のプロポーションを反映してか、ややこじんまりとしてパーソナルな響き。あまりガンガン弾く楽器ではなく、楽器の雰囲気を味わいながら、楚々と奏でたい。
◆イグナシオ・フレタ 1967年 松・ローズ。
フレタ・イーホスのラベルだが、まだ1世が健在だった頃の合作モデル。やはりフレタは男性的。20世紀初頭の楽器を弾いたあとだけに、ずっしりと重たく、音も張り詰めた緊張感を感じる。しっかりとしたタッチでないと通用しない楽器だ。音は手元ではあまり鳴っている感じはしないのだが、店主に弾きてもらって、聴く側にまわると、十分音が通ってくるのが分かる。
◆エルナンデス・イ・アグアド 1971年 松・ハカランダ。
アグアドは最終的に手元に置きたい楽器の一つだ。1971年製なので、もうアグアド自身は実質引退状態、マルセリーノ・ロペスが担当していた頃だ。ぼくにとってのアグアドの魅力は、ボディーサイズや音の傾向は60年代以降の近代的な方向を志向しながらも、どこか今世紀初頭の古いスペインの楽器の雰囲気を感じるところだ。大きさの割りに軽量で、軽いタッチでもポーンとはじけるように鳴る。
◆マヌエル・カセレス 1980年松・ローズ。
これは立ち寄った店ではなく、少し前に知人宅で弾いたもので。1980年というから、ラミレス工房を出てアルカンヘルの工房に入って間もない頃の作品だ。実はカセレスと聞いて、ラミレス風の作りでやや腰高の重くて硬い楽器…と少々たかをくくっていたのだが、予想は見事に外れた。ボディーシェイプはアルカンヘルのものと同型。重量は1500グラムを超えている。驚いたのは低音のウルフがF#付近の低いところにあってドンと響く。腰高どころではない。ある人と話していた折、この頃のカセレスは、ラミレス風の作品とアルカンヘル風のものと二つあるようだとのこと。きっとアルカンヘルの工房に入った途端、「そんなラミレスみたいなギター作ってんじゃねえ!」とでも言われたのではないか邪推している。
さてこうして数台弾いてみて、心惹かれるのはやはり古い楽器。2本のエステソはいずれも素晴らしい。特に1929年作松・ローズの楽器は、やや荒削りながらも素晴らしい鳴りっぷりだった。それではお持ち帰りを…と言いたいところだったが、プリウス1台相当のプライスタグ。まあ、今回も耳の保養ということにしておこう。
◆◆本ブログのカテゴリー<楽器談義>はこちら◆◆
1923年作のドミンゴ・エステソを弾く北口功。 バリオス<最後のトレモロ>
同じく、バリオス<祈り>
同じく アルベニス<カトルーニャ奇想曲>
★★追伸★★
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