ハウザー3世の弦交換



最近<夜なべ仕事>という言葉をとんと耳にしなくなった。オフィスでの仕事あるいは持ち帰りの宿題というよりは、身辺のちょっとした手仕事をそうあわてずにやる。何となく昭和の光景かな。…で、ギター弾きのぼくにとっては弦の交換がまさにそんな感じの作業だ。もっとも夜を徹するほど時間がかかるわけでもないが…。
先日、少し冷え込む晩、ストーヴの上でのコトコトを音をたてるやかんを横目に見ながら、愛器ハウザー3世の弦を交換した。


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弦交換と併せて楽器のクリーニングも。
フレットと指板はもっとも汚れやすい部位だ。フレット磨き用のツールは500円で購入。ゴージャスマダム御用達の銀製品磨きクロス(楽器用も有り)で拭く。クロスはすぐに真っ黒になるが、汚れ落としの効果には影響がないとのこと。黒檀の指板はレモンオイルで汚れを落とす。部屋に柑橘系の匂いが香る。

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ナットにはごくわずかにテーパーがついていて、高音側から差し込むとナット溝にピタリと収まってはずれない。指版と表板の間には薄板が仕込まれている。また駒には2本の隠し釘。ブリッジは少し前から高音弦の音程補正が施されるようになった。駒の高さは高音弦側から低音弦側に向かって高くなるように傾斜がついていて、ブリッジによる高低差をあまりつけずに必要な弦高を確保している。

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ワックスにはカルナバワックスを使う。ハウザーの塗装は比較的丈夫なラッカー仕上げなので、楽器用のシリコーンワックスでも問題ないが、セラック塗装の他の楽器のこともあるので、もっぱらこのカルナバワックスを使っている。表板、横板、裏板にワックスをたらして指で延ばす。数分おいて白く乾いたところでマイクロファイバークロスで吹き上げる。表板は正真正銘のドイツ松。横・裏板は中南米ローズウッド(おそらくマダガスカルローズ)。

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弦は今回サヴァレスの<カンティーガ&クリスタル>のハードテンション。小道具一式を準備。低音弦の駒側は一回よじり。高音側は2回あるいは3回ターンさせている。余分の出た弦の尻尾は駒側、糸巻き側ともに短くカット。その際、表板を傷つけないよう、厚紙を敷くとよい。低音弦は巻きがゆるくなっている方が糸巻き側。間違えている輩も多い。駒側の弦の尻尾もノイズが出ないようにきっちり処理。

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以上で完了。ひと通り調弦を済ませて音出し。妙なところがなければ半音ほど高めに合せ、ひと晩おいてから本格的に弾き始める。弦の交換作業は実に楽しい。心踊るといっていいほどだ。普段は黙って音を奏でているギターと、ちょっとした会話をしている気分になる。


◆スペイン美魔女マダム<ラミレス嬢>を磨くの巻は⇒こちら (本記事とほとんど同じ内容だけれど)
ハウザー3世の紹介は⇒こちら


ハウザー工房の紹介。 世界中のギター関係者の関心は、娘カトリンが4世として伝統の工房を引き継げるかどうかという点にある。 現在も伝統的手法で年間十数本をコンスタントに製作(このビデオでは17本と紹介されている)。





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No title

私はエルナンデス・イ・アグアド のラベルのギターを所有しております。ただし作成者は中出 敏彦氏です。同氏に問い合わせましたら、エルナンデス・イ・アグアドに修行の終了時に同氏らの材料を持ち帰った材料で作成したものであり、現在まで7本しか作成していないとのことでした。もしご興味がありましたら是非試奏にいらしてください。当方の自宅は川崎市です。

Re: No title

ケインさん、こんばんは。
就職してしばらくし、いい楽器が欲しいと思って手にしたのが、敏彦さん称するところのアグアドモデルで当時のトップモデルでした。
http://guitarandmylife.blog86.fc2.com/blog-entry-23.html
25年に渡って使っていましたが、近年ギターを再開した際に音の好みが変わったこともあって知人に譲りました。横裏の真性ハカランダと、正確無比な工作精度は素晴らしいものでした。
中出敏彦さんとは30年以上前、所沢に工房があったときからのお付き合い。その後現在の中野の工房(父の阪蔵さんが使っていた自宅兼工房)にも何度かお邪魔しました。アグアドラベルのその話も敏彦さんから直接伺いました。ただ、そのときは具体的な台数までは聞きませんでしたが…。ケインさんは川崎なのですね。昨年から今年にかけて、チェロ相方との練習のため、ミューザ川崎の練習室には何度か足を運びました。いずれお会いする機会もあるのではないかと思っています。
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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