ヴァンゲンンハイム(G)のバッハ無伴奏チェロ組曲



西日本、北陸中心に大寒波到来。当地は先週のような降雪には至らなかったが、強い冬型気圧配置で日照あるも気温上がらず、寒い日曜日になった。午前中から野暮用外出。帰宅後、冷え切った身体を風呂で温め一服。ひと息ついて、金曜日のコンサート影響でこの盤を取り出した。


wangenheim.jpg  Bach_Cello_Suite.jpg


以前も一度取り上げたアンドレアス・フォン・ヴァンゲンハイムというドイツのギタリストが弾くバッハの無伴奏チェロ組曲全曲盤。メジャーレーベルBMGの廉価盤シリーズ;アルテ・ノヴァから1999年にリリースされている。アルテ・ノヴァの盤は十年ほど前にはあちこちの店で見かけた。中でもデイヴィッド・ジンマンとチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団のベートーヴェン交響曲全集(新ベーレンライター版の楽譜を使い、モダンオケによるピリオド奏法に準拠した演奏で話題になった)や、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(通称Mr.S氏)とザールブリュッケン放送交響楽団によるブルックナー交響曲全集などが話題になった。ギターでもいくつか注目すべき盤を出していて、手元にはきょう取り上げるヴァンゲンハイムの他、オーガスチン・ヴィーデマンによる80年代、90年代のギター音楽だけを集めた盤が2枚、エドゥアルド・フェルナンデスのバッハ;リュート組曲全4曲、ヨハネス・トニオ・クロイッシェによるヴィラ・ロボス練習曲とヒナステラのソナタOp.47がある。

さてヴァンゲンハイムのチェロ組曲。これが中々素晴らしい。手元にあるギターによる同曲の演奏の中でもっとも聴き応えのあるもので、原曲のチェロによる名盤に十分伍して聴ける。この曲を取り上げるにあたっては、当然ギター版の編曲譜としてどの版を使うかがポイントになる。この盤でヴァンゲンハイムは自身の編曲による版を使っているのだが、まずこの編曲が実に適切に出来上がっている。手元には40年以上前に世界に先駆けて出た小船幸次郎の版、同じく日本人の佐々木忠による最近出た版、そしてMelbay社のイェーツ版と原曲のチェロ版がある。原曲のチェロ版からの編曲に当たってはギターでの調の選択とポリフォニックな処理としての低音声部の付加が鍵になる。ヴァンゲンハイムの楽譜は手元にないが、音で聴く限り低音の付加は曲によってはかなり足しているものもあり、あるいは最小限の付加に留めているものがあって興味深い。ただ演奏上は付加した低音はあまり目立たないように右手のタッチをコントロールしていて、曲としてはチェロによる単旋律に近い印象を受ける。そしてその単旋律にあたる楽句のアーティキュレーションが実によく考えられ、また理と情にかなっていて不自然さがまったくないのだ。プレリュードは深く静かに瞑想し(特に第2番のプレリュードは素晴らしい)、メヌエットやジーグなどの舞曲ではリズミックに躍動する。とかく「ギター的」になりがちな演奏が多い中、彼の演奏はギターの特性を生かしながらも、ギター版ゆえの制約、あきらめ、言い訳、限界、そういったものを感じさせない。正統的で古典的な様式感をベースに、バッハの音楽そのものに浸ることができる。日頃からこの曲に接しているチェロ弾きの輩にはいささか奇異な響きに感じられるかもしれないが、虚心にこの演奏を聴けば、また印象が変わるのではないだろうか。

名前に「フォン」と付くことから分かるように彼は由緒ある家柄の出身で1962年生まれ。バーゼルの音楽院を首席で卒業したとのことで、年齢的にも円熟を迎える頃だろうか。この盤以外の録音を聴いていないが、バッハでこれだけ普遍的な様式感に立った演奏をしているのだから、ソルやジュリアーニなどの古典派からメルツやレニャーニあたりの初期ロマン派の曲など、クラシック音楽の潮流の中にあるギター作品をぜひ聴いてみたい。


この盤の音源。第3番から始まり順次再生される(第3番、1番、4番、2番、6番、5番の順)。


アイルランドのギタリスト:ジョン・フィーリーによる第1番全曲。



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名盤だと思います

こんにちは。
このCDは私も持っていますが、じつに素敵な演奏ですね。
軽やかで、さわやかです。

Re: 名盤だと思います

この盤をお持ちなのですね!
ギターによるチェロ組曲の演奏も、全曲をなるとそう多くの録音はなく、本邦では山下和仁のものが有名ですね。ギターで弾くとなると必ず音の追加があるのですが、その塩梅が成否を握る要素の一つかなと思います。ヴァンゲンハイムの演奏を聴くとギターオリジナル曲といってもいいくらい自然で、違和感なく楽しめます。
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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