ジャンドロンのバッハ無伴奏チェロ組曲



もう30年以上前の話だが、勤め人になって二回目のボーナスでチェロを買い、当地群馬交響楽団のチェロ奏者について習い始めたことがある。学生時代からギターでバッハのチェロ組曲などを弾くことがあって、社会人になったら本物のチェロで弾こうと思っていたのだ。その先生から、スジがいいだの耳いいだのとおだてられながら三ヶ月ほど通ったが、仕事もあわただしくなってきて通いきれずに終わった。以来それきりで、楽器も後年手放した。続けていれば、今頃はどこかのアマオケの末席でごまかしごまかし弾いていたかもしれない。再チャレンジ…という気もなくはないのだが、どうしたものだろうと思案しているうちに人生終盤になってしまった。まあ、あきらめましょうかね…。と、そんなことを思い出しつつ、先日来のバッハシフトで、こんな盤を取り出した。


gendron_bach.jpg


モーリス・ジャンドロンによるバッハ無伴奏。1964年に録音され仏ACCディスク大賞を受賞したという盤だ。この盤は先の先生から薦められた経緯がある。フルニエ、トルトゥリエ、ナヴァラ、ジャンドロンとフランスには名チェリストが多い。ジャンドロンは指揮者としても活躍し、晩年当地群馬交響楽団にも来演。ブラームス交響曲第4番の録音も残している。

ジャンドロンのバッハは一言でいえば楷書の味わいだ。中庸のテンポながら丁寧で、音楽全体のバランスがよく、過不足ない。バッハ無伴奏チェロはもっとダイナミックで起伏に富んだ表現を狙えばいくらでも出来る曲だろう。またジャンドロンも手元にある小品集では、より自在にテンポを動かし、表現の幅も広げた演奏をしているのだが、バッハの無伴奏に関しては抑制を効かせた折り目正しい曲の運びだ。そんなところがチェロの先生が薦めた理由かもしれない。第1番のサラッとした速めの曲の運び、第2番は深刻にならずに淡々と憂いに満ちた短調の旋律を歌っていく。第6番では華麗なパッセージを苦しげなところもなく一筆書きのように描く。

ヨーヨー・マやロストロポーヴィッチといった名手の演奏も手元にあるが、あまりに流麗、ときに大仰でいささか演出過多に感じて引いてしまう。もっと深遠なバッハ像がほしくなるときもあるが、万事に楷書で中庸をいくジャンドロンのこの演奏も、作為的なところがないことが奏功し、淡々と我が道をいく風情でありながら、曲によっては闊達な表情もある。録音もディスク大賞をとるだけあって素晴らしい。チェロと多少距離をおき、残響豊かに繊細で美しい音作りで、ジャンドロンの特徴をよく引き立てる音作りだ。手持ちの盤は1979年頃廉価盤LP。CDは長らく廃盤だったが、現在はDECCAレーベルになった盤が手軽に入手可能。この曲のファーストチョイスとしてイチオシだ。


フィリップスレーベルのCD盤音源。全曲がリストされている。第1番からスタート。この音源を聴く限り、手持ちのLPより良好な音質だ。CDで買い直そうかな…


ジャンドロンの弾くBWV639



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ブログの記事と無関係な書き込み失礼します。
与太さんを真似て、このたびサバレズのクリスタル/カンティーガのセットを買ってみました。この数年はサバレズのアリアンス/コラムを使ってきたので違いを楽しみたいと思います。
ただし、私はもはやアリアンスの硬質で弦鳴りの強い音でないと満足できない体になってしまったので、すぐアリアンスに戻してしまうかもしれませんが。(笑)

Re:

コラム低音弦はしなやかで好きです。カンティーガはコラムより少し強く硬いイメージかなと思います。ニュークリスタルの高音は特別個性的ではないので、アリアンスから切り替えると、少々かったるいかもしれません。3弦だけアリアンスに変えるのもGOODかも。その仕様のセットが、サバレス/クリエイション・カンティーガ510MRです。
また感想を聞かせて下さい。
与太@移動の電車車中

チェロと弓なら…

使わないものが余っています

貸し出ししますよ♪

Re: チェロと弓なら…

ギターを再開しようと思った十年ほど前に、チェロをやろうかと思案しましたが、結局ギターだけを選択。そのとき始めていたら今頃は…という思いはありますね。ということは、また十年後には、あのとき始めていればと思うのかなあ…。などどウダウダ言いつつ、人生は暮れていくのでしょう。そもそもギターもまともに弾いていないしなあ…
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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