ベルガンサ&イエペス <スペインの歌>
次第に春の気配を感じるきょうこの頃だが、今朝の関東地方は所によって小雪が舞うほど。それでも日中は空気が緩み、真冬の険しさは遠くなった。さて二月も下旬。きょうもせっせと業務に精励。夜更けの音盤タイムには、何となく古風な響きが聴きたくなり、こんな盤を取り出した。


スペインを代表するメゾ・ソプラノのテレサ・ベルガンサ(1936-)がギターのイエペス(1927-1997)の伴奏で、スペインの中世からルネサンス期の歌曲を歌っている1974年録音の盤。本来であればビウエラ(写真右)の伴奏が相応しいのだろうが、当時人気を博していた看板アーティストのベルガンサの相方として、10弦ギターで日本でも人気の高かったイエペスが選ばれたのだろう。少し細かくなるが収録曲は以下の通り。
01 アルフォンソ10世賢王:バラの中のバラ(Rosa das rosas)
02 ミゲル・デ・フエンリャーナ:アンテケーラの陥落(Pérdida de Antequera)
03 作者不詳:ディンディリンディン(Dindirindín)
04 アロンソ・ムダーラ:ダビデ王は悲しんでいた(Triste estaua el rey David)
05 作者不詳:悪い報せだ、カリーリョ(Nuevas te traygo, carillo)
06 作者不詳:人びとは大きな喜びに(Los hombres con gran plazer)
07 フランチェスコ・デ・ラ・トーレ:語れ、悲しい心よ(Dime, triste corazón)
08 エンリケス・デ・バルデラバノ:恋よ、どこからやってくる(De dónde venis, amore?)
09 ルイス・デ・ミラン:一生かけてそなたを愛した(Toda mi vida os amé)
10 フアン・デ・トリアーナ:言って下さい、御母よ(Dínos, madre del donsel)
11 アロンソ・ムダーラ: 誰か、私を呼ぶような(Si me llaman a mí)
12 フアン・デル・エンシーナ:巡礼(Romerico)
13 フアン・バスケス(ミゲル・デ・フエンリャーナ編曲):きみは私を殺めた(Vos me matastes)
14 ルイス・デ・ミラン:母さま、あの騎士が(Aquel caballero, madre)
15 アロンソ・ムダーラ:澄んで涼しい流れ(Claros y frescos rios)
16 アロンソ・ムダーラ:イサベルや、帯を失くしたね(Ysabel, perdiste la tu faxa)
17 ルイス・デ・ナルバエス:何をつかって洗いましょう(Con qué la lavaré?)
18 フアン・バスケス(ディエゴ・ピサドール編曲):バラの木の泉に(En la fuente del rosel)
19 アルフォンソ10世賢王:サンタ・マリア(Santa María)
中世・ルネサンスのスペインは、教会音楽、宮廷・世俗音楽、いずれもがヨーロッパの中でも独自の音楽文化を築いたという。ぼくらギター弾きには、ミランやナルバエス、ムダーラといった、ほんの僅かなビウエラの作曲家の名前が思いつく。この盤では無名の歌曲に加え、そうしたビウエラ作曲家達の世俗歌曲が多く収められている。ちょっと歌詞をみると、「ウグイスよ、ウグイスよ、わたしのこの便りを運んでおくれ、男友達に告げておくれ、わたしはもう亭主持ちだと」「マリ・ミンゴの娘がさきの日曜、結婚したぞ、あの村の若者と、お前にとっちゃひどいことさ、悪い知らせだぜ、お前はこんなにいい若者なのに」…といった具合に、たわいのない色恋沙汰の歌詞も多い。当時のスペインの民衆も宮廷人もこんな歌を、ビウエラをかき鳴らしながら歌っていたのだろうか。
ジャケット写真からも美しさがうかがえるベルガンサは録音当時ちょうど40歳。イエペスは47歳。共に人気アーティストだった。イエペスのギター独奏の演奏にはあまり感心したことはないのだが、この盤のイエペスは中々いい。お国物への共感もあってか、曲の時代性や背景を理解し、抑制の効いた表現で楚々と歌い、弾いている。
このアルバム以降、このコンビはスペイン歌曲のアルバムをいくつか出した。以下は近代スペインのファリャ<七つのスペイン民謡>。
イエペスのソロでルイス・ミラン<六つのパバーヌ>(原曲はビウエラ) ぼくら世代の中級アマチュアは必ず手がけた曲の一つ。
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