黒人指揮者:ディーン・ディクソンとヤニグロ(Vc)



そう言われてみれば…と、気付く向きも多いかもしれないが、クラシック音楽畑の黒人演奏家は少ない。誰かとたずねられて名前を挙げられるの数人だ。女性歌手のジェシー・ノーマン、キャスリン・バトル、ピアニストのアンドレ・ワッツ。すぐに思いつくのはこのくらいだ。指揮者にいたっては、ディーン・ディクソンしか知らない。最近でこそ米国のオーケストラであれば黒人の団員も珍しくなくなったが、他の分野に比して明らかに少ないだろう。


Dean_Dixon_(1941).jpg  dean_dixon_Janigro_1.jpg


写真の盤は、今なら中古レコード店の軒先にある百円コーナーで雨ざらしになっているような、70年代にたくさん出回った廉価盤シリーズの一つだ。ぼくの好きなチェリストの一人であるアントニオ・ヤニグロがソロを取り、ハイドンとドヴォルザークの協奏曲を弾いている。このうちドヴォルザークの伴奏を付けているのが、黒人指揮者ディーン・ディクソン指揮のウィーン国立歌劇場管弦楽団(すなわちウィーンフィルハーモニー)だ。ディーン・ディクソンは1915年に生まれ1976年に世を去った。1968年には来日してNHK交響楽団を振り、田中希代子との録音も残している。高校生の時分、ときどきFMで流れる曲の解説で彼の名前を聞いた記憶はあるが、レコードはこれ1枚が手元にあるだけだ。


dean_dixon_Janigro_2.jpg


ドヴォルザークの協奏曲では相変わらずヤニグロが素晴らしい。オケは録音が少々貧弱ということもあって、いささか精彩を欠く。本当のステレオ録音か少々あやしく、耳の悪いぼくなどは擬似ステレオだと言われれば、そうかなと…と思っていたら、やはりオリジナルはモノラル録音のようだ。それでも音楽の運びそのものは真っ当で、この曲のノスタルジックなところ、高揚感、聴かせどころは心得ていて過不足ない。半世紀以上前の音楽界で黒人指揮者の彼がどのような扱いを受け、取り上げられ方をしたか想像に難くない。残された少ない彼の演奏を聴いていると、見たことのないその指揮姿が何故か目に浮かんでくる。


この盤の音源。ディーン・ディクソン指揮ウィーン国立歌劇場管とヤニグロのチェロ。ドヴォルザークのVc協奏曲・第1楽章。オリジナルのモノラル構成。動画のコメント欄に録音データは1953年とあるが、1955年あるいは1958年とされている資料もある。詳しい方がいらっしゃれば、教えていただきたい。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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